■超音速旅客機コンコルド
超音速旅客機コンコルドをご存じだろうか。マッハ2でニューヨーク・ロンドン間を3時間半で飛行するスピードは驚異的でした。しかし、コンコルドは商業的に完全に失敗しました。失敗した理由はたくさんあります。開発費が高騰し、また、燃費が悪い上に燃料費が高騰し、運賃が非常に高額になり、利用者が少なかったこと。その上座席数が100席しかないため、ペイラインが凄く高くなってしまった。また、超音速が売りでしたが、地上に大きな衝撃波を出すため、陸上での超音速飛行が禁止されてしまい、就航路線が限られてしまった。など、目論見通りにいかず、2003年には運航が終了したのです。
鳴り物入りで開発したコンコルドはたった20機しか製造されませんでした。実はこのビジネスには私たちに大きな学びを提供したのです。当然開発には膨大な費用が必要でした。上記のような問題は開発が終わってから突然出てきたわけではありません。徐々にいろいろな見通しが変化してきたのです。ビジネスとしては成り立たないことは少なくとも途中で分かっていたのですね。
ここに人間の浅はかさがあるのです。既に投入した費用や時間を回収できない費用(サンクコストという)とみなし、それを無駄にしたくないという心理に陥り、損失が拡大することが分かっていながら投資を止められなくなってしまったのです。
このような心理現象のことを「コンコルド効果」と言います。
■コンコルド効果の例
さて、このようなことを皆さんは経験していませんか? 例えば、ビジネスプランを作り投資の機関決定を受け開発を始めたものの、当初想定していた機能では全く足りないと分かり、開発コストは膨れ上がった。並行してマーケットにアプローチしたところ、想定していた価格では売れそうもないことが分かった。しかし、誰も開発を中止する決定を下さず、開発を継続し、遅れた挙句完成したが、当初のビジネスプランとは全く異なる現実を前にし、完成した時点でこのビジネスの赤字は決まっていた。本当はかなり前には分かっていたはずです。
こんなこともあるでしょう。ある企業が売りに出ることが分かった。買収のメリットを様々検討し、事業シナジーなどなどを検討し買収金額を試算しコンペに応募した。ところが、競争相手は多く応札価格は吊り上がっていった。当初想定したペイラインの2倍になってもまだ吊り上がり続けている。ここまでやってきたんだからと、上がり続ける価格に追随していった。結局落札したものの、半年後には回収できないことが明確になり、膨大な減損を計上せざるを得なかった。これも応札途中で回収は無理だと分かっていたはずですね。
仕事以外でも、ギャンブルで負けがこみ、回収しようと更に高額な資金を投入し、傷はどんどん深くなる一方で、人生が破綻した・・・
その他にも、つまらない小説だと気付いても我慢して最後まで嫌々読み続けた。なんていうのも「コンコルド効果」です。
誰にも経験のある話ですね。ビジネスの範囲だけでも枚挙に暇がない程たくさんの事例があるはずです。
■どうすればいい?
世の中では「GRIT」(「やり抜く力」Guts:度胸、Resilience:復元力、Initiative:自発性、Tenacity:執着心)が賞賛されますね。これでは正にコンコルドまっしぐらとも言えますね。現代は、市場の変化や地政学的変化が著しく、ずっと突っ走ることの方がよっぽど危なっかしい。即ち、「Think Again」(アダム・グラント)考え直すことが賞賛されるのべきなのです。状況が変われば判断も変わる、という当たり前が賞賛されるのです。
しかし、皆さんも感じたことがあるでしょう。「止めること」の難しさを。しかし、プロのビジネスピープル、リーダーであれば、「止めること」を決めるのも責任です。英知を集め、情報を客観的に評価し、自分の判断で決めるのです。最後は直観を信じるしかありません。止めるべき判断を先送りして、傷を広げた挙句異動していったリーダーは無責任極まりないですね。後任がその事業を整理するなんていうのは悲しいストーリーです。実は私もその一人で、前任者が作った回収不能のビジネスを何度が畳みました。終戦処理ですね。「お前がやる必要はない、〇〇(前任者)にやらせろ!」と上司に言われたこともあります。そのディシジョンはあなたもしたんでしょ。よく言うよ。と思いました。私がやるしかないのですからしょうがありません。楽しくはないですけどね。それも仕事です。いろいろ学びがありました。
大切なのは、客観的な撤退条件を決めておくことですね。M&Aの場合だったら、いくらが上限なのかを決めておくのです。吊り上がると、あといくら出せば買えるかもなんて思ってしまうものですが、あっさり引き下がるのです。損切の考え方もそうですね。傷が浅いうちにすっぱり止めてしまうのです。ずるずる続けるのはアマチュアです。プロなら今回はここまで!とすっぱり引いてしまうべきなのです。チャンスはまたあるさと思うことも大切なのです。

そんな自分を俯瞰的に見ることが大切だと思う。メタ認知できれば行動は変えられる。