先日友人(元クラアイント)から教えてもらいました。凄く腹落ちする指摘でしたので共有しますね。
それは東京大学 先端科学技術研究センター 松尾朗子特任助教、熊谷晋一郎助教授らの研究グループの論文です。
詳細はレポートを読んでいただくとして、ポイントを私なりに書いてみます。
(日本企業において)リーダーの謙虚さが心理的安全性を介してプレゼンティーズムに影響することは分かったのです。これを理解するためには、まず「プレゼンティーズム」とは何かを理解することが必要ですね。「プレゼンティーズム」とは従業員が心身の健康状態の不調を抱えながら仕事を続けている状態を指します。当然、会社に来てはいるけれどパフォーマンスが落ちている状態なわけです。「疾病出勤」とも言うそうです。ストレスや寝不足、ハードワークによる疲労、体調不良、花粉症などなど多様な原因がありますね。やる気を失っているなどもその対象でしょう。
もちろん、「プレゼンティーズム」は企業に膨大なコストを発生させていると言えますし、従業員のウェルビーイングも低下するわけです。研究者は20年にわたる研究により、リーダーの振る舞いや職場の人間関係など文化的な環境づくりが欠かせないことは分かっていました。しかし、そのメカニズムは分かっていませんでした。
従来は、上司の行動即ちリーダーシップスタイルに注目していました。即ち適切なリーダーシップは「プレゼンティーズム」を低減する効果があることは分かってはいました。
さて、ここで問題はどのようなリーダーシップにその効果があるのかです。リーダーシップに関しては、このブログでも何度も書いてきました。昔ながらの「強いリーダーシップ」即ち「俺についてこい」タイプの「率いるリーダーシップ」、そして彼らが創り上げる「支配的ヒエラルキー組織」が作り出す企業文化は従業員の成長にもウェルビーイングにもマイナスであること、がポイントだったわけです。
このレポートではそのアンチテーゼのような「謙虚なリーダーシップ」に関して述べられています。「自らの能力の限界や過ちを正確に把握する意欲があり、他者の強みや貢献を評価し、学びの姿勢を持つというリーダーシップスタイルです。このようなリーダーシップスタイルを示されると、従業員の仕事へのコミットメント、ポジティブな感情、そしてパフォーマンスが向上するとされています」
今回の研究で、謙虚なリーダーシップがどのような因果関係で「プレゼンティーズム」の低減につながっているのかが統計的に証明されました。それは、「リーダーの謙虚さが、心理的安全性を高め、それによって『プレゼンティーズム』が低減する」のです。
即ち、私なりに解釈しますと、リーダーの謙虚さが創り出す職場の文化が、従業員が躊躇なく自分らしく活躍でき、仕事の生産性やウェルビーイングの向上につながるということだと考えます。
今まで、このブログでも「率いるリーダーシップ」ではなく「導くリーダシップ」、「支配的ヒエラルキー」ではなく「尊敬型ヒエラルキー」、「ムラ社会」の問題、「強すぎる男性性」の問題などなどの指摘をしてきましたが、それらと通底する指摘だと感じます。
実は、このような指摘は、多くの皆さんにとって「見れども見えず」即ち、「頭では分かっているけれど、行動は変えられない」課題なのではないだろうかと思っています。一人ひとりが強い動機に突き動かされて、意図的に行動を変えない限り変わらない、という深く重たく難しい課題だと感じています。
でも、変えられるのです。皆さんの客観性と意志の問題です。
皆さんにメッセージを送りたいと思います。
事実に対して誠実であれ
科学に対して誠実であれ
見つめるべきことから目を逸らすな
都合の悪いことに頬かむりするな
それらは、変革志向には必要不可欠な姿勢だと感じます。
