エンパワーメント

「エンパワーメント」とは何なのか。力を与えること、一人一人が自律的に行動できるようにすることと思われがちですが、英語の辞書を見ても分かるが、これは実に企業における重要なリーダーシップを指していることが分かります。それは「権限委譲」なのです。

これは現在の変化の激しい時代だからこそ、競争力の向上に必要不可欠な視点と思われがちです。もちろん、そうではありますが、振り返れば、稲盛さんが進めていたアメーバ経営や小集団活動など、昔からあった取組も権限委譲の一つの形とも言えますね。前にも書いた記憶がありますが、今でいうアジャイル経営」にも通底する価値観と解釈できます。

「権限移譲」の対極にあるのが権限を集中して指揮命令で仕事を進めるスタイルです。この二つのスタイルを「率いるリーダーシップ」「導くリーダーシップ」と言ったりします。

後者は単に権限を委譲して現場に任せることでうまくいく、と言っているわけではありません。その前提としては、委譲された現場が共有すべき価値観が浸透していることです。それがあれば各チームがばらばらな方向に進むこともないし、お互い協調して大きな成果を目指すことができるわけです。リーダーはその価値観の浸透に責任を持たなければならないわけですね。それが、パーパスやビジョンやバリューなわけです。それらをメンバー全員に腹落ちさせるのがリーダーの役割なわけです。もちろんその土台には行動規範のようなノン・ネゴシアブルなベースラインもあります。

その上で、適切な仕事を与え(実力+α)、適切なアドバイスをし、必要な資源を与え、成果を公正公平に評価しなければなりません。その辺は以前に書いた「リーダーの有効性」参考になるでしょう。

こう書くと「導くリーダーシップ」「エンパワーメント」の方が良いに決まっていると思うでしょう。もちろんそうなのですが、それだけではすべてのシーンでうまくいくとは限りません。例えば、現場がパニックになっている時はどうでしょう。それに、メンバーは経験不足ですし、多様なメンバーが集まっています。統一的な訓練も行き渡っていません。そのような場合は完全に現場は「カオス」になります。一歩間違えると収拾がつかなくなります。そのようなケースには、経験豊富なリーダーが現場の指揮を躊躇せずに行わなければならないわけです。リーダーの使命は1秒でも速くカオスから抜け出すことです。即ち「率いるリーダーシップ」を発揮しなければならないわけです。

このように考えると、リーダーによる普段のコミュニケーションがいかに大切かが分かります。1on1などを通して、日常的にコーチングやアドバイスを行い続けることが何より重要なのです。それを通じて、経営理念やマネジメント手法を共有、伝授していくのです。くれぐれも、日常的に「ああしろこうしろ」と指示ばかりするようなことはしないようにしましょう。部下の自立・自律を促すこと、即ち自分の力で解決するようにしむけることです。それがコーチンでありエンパワーメントなのです。

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輪は広がっていくもの