トーマス・ジェファーソンをご存じだろうか。アメリカ建国の父と称される「アメリカ独立宣言」起草者であり、第三代アメリカ大統領である。
彼は人間の平等を訴え、奴隷解放の立場を一貫して取っていた。一方で200人とも600人とも言われる奴隷を所有していた。彼の平等には黒人奴隷は入っていなかったということになる。
さらに、所有する黒人奴隷サリー・ヘミングスとの間に7人の子供がいた。これはDNA鑑定によって証明されたといわれる。そのサリーは死ぬまで解放されることはなかったのである。
そして、NY市庁舎の議会室にはトーマス・ジェファーソンの像があったが、2021年市庁舎から撤去された。歴史に名を残した人の末路と言ってもいい。
建前と本音。裏と表。成し遂げた快挙の大きさの前にこの程度のことは小さいことだと目をつぶりますか。これは本質を突いた問いだ。
実は、政治家であろうが、ビジネスマンであろうが、大きな成果を上げた裏ではおよそ人格を疑うようなエピソードを持つ人はたくさんいる。現役の時または引退直後にロールモデルとして発刊された自伝的ベストセラーはたくさん存在し、その一部はその後暴かれた真実によって評判は地に落ちた。英雄伝説の陰に、金に汚かったというようなお粗末な話や、人格者という評判の裏で実はパワハラだったとか、見事な事業成長を遂げた実力経営者のレッテルの裏に、違法な会計処理や節税処理があったというような話など、枚挙に暇がないのだ。
トランプ氏などはその典型だろうね。しかし、それでも選挙は勝つんだから、分からないものだ。人格とか倫理が人を選ぶ基準になっていないわけだからね。孔子は天国でこんな世界を憂いていることだろう。
僕は、どんなに地位の高い人であっても、そのような建前と事実のギャップが大きかったり、裏と表がある人を決して尊敬はしない。僕の身近にもそんな人はいた。彼の足を引っ張ったり悪評をたてたことは一度もないが、決して信頼したことはないし、盲目的に指示に従ったこともなかった。僕は僕の信じる正しい道を歩きたかったからだ。幸い潰されなかったのは運が良かっただけなのかもしれない。