Wellbeingのヒント

公益財団法人 Wellbeing for Planet Earth石川善樹さんの講演を聴きました。皆さんもお気づきの通り、「Wellbeing」は今や人事マターから経営マターに変わりました。社員のWellbeingがなければ、企業のサステナブルな成長はあり得ません。肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも良く在る(Wellbeing)ことに向き合わなければ、企業は何も成し遂げられないのです。言い換えれば、企業と従業員(個人として、人間として)との関係が変わったのです。例えば、今まで(あるいは今でも)組合と会社の関係は条件闘争でした。給与や福利厚生がその典型ですね。もちろん今でもそれはどうでもいいという課題ではありませんが、主要課題は「やりがい」に変わっていると考えています。やりがいは条件闘争では解決しません。昔から、「衛生要因」と「動機付け要因」と言われていますが、主要課題は後者なわけです。やりがいは労使両方で解決しなければならない課題で、どちらかが嬉しいことはもう一方は嬉しくないテーマではありません。双方協力しなければ解決しない課題なわけです。「やりがい」はWellbeingに直結する重要なポイントでもあるのです。

さて、石川さんが話したことの中で凄く腹落ちしたことを書きますね。それは、「居場所」です。彼は「居場所」の数が多いことがWellbeingにはとても大切だと説いたのです。あまりに居心地の良い居場所を作り、そこのどっぷり浸かっていればすごく幸せを感じるかもしれません。しかし、そうなるとそこから出たくないという感情が本能的に起きますよね。他の場所では居心地が悪いと思うからです。

彼は、「健全な多重人格」であることが大切だと説きます。これはどういうことかというと、自分のことを「〇〇会社の△△です」という自己紹介のみで生きない方が良い、ということを指しています。自分の人格を狭い世界に閉じ込めているわけで、もしその会社の社員でなくなったときに、人格がなくなったような疎外感を感じるということなのだと思います。よく、定年退職したシニアが自分を見失ってしまうなどの言う話を聞きますよね。これです。これではWellbeingではないですよね。例えば、会社だけが居場所だったなんて言う状況にならないようにした方が良いのですね。

先日、一緒にゴルフをラウンドしたコーチ仲間にこの話をしました。居場所が多い方がWellbeingだという話に、皆凄く同意していました。皆さん、いろいろな居場所を楽しんでいます。例えば、そのコーチ仲間と一緒に活動している「伴想人」も僕たちにとって大切な居場所なんです。僕は、会社員という枠組みから個人事業主という枠組みに変わり、クライアントと向き合う居場所や、「伴想人(ばんそうびとと読みます)」という経験を社会に活かす居場所、社外取締役として経験をガバナンスに活かす居場所、定期的にゴルフを楽しむ居場所、今でもずっとつながっている人々の役に立ちたい(聴き役)と考え、僕自ら創り出す不定期な場など、自分の存在価値やコミュニケーションを楽しむ居場所を持っています。そうそう、このブロガー(笑)としての「Heaven's Kitchen」も居場所ですね。実は、時々自己紹介で「ブロガーです」なんて言っちゃってます(でへ)。

また、彼はWellbeingには「誰とやるか」が大切だと、仰っています。実は「伴想人」の活動で、ある企業向けに話をしたときに、「意志さえあれば行動を変えられる」が、実は「誰のために、誰と行動を共にするか」が最も大切だと話しました。動機を強くし、心から駆り立てられる様に感じるためには「誰と」が重要だと思っているからです。人は、一人では心は満たされにくいものだと感じています。仲間やチームの大切さをすごく感じます。僕たちは「人間関係の洗濯槽の中から逃げられない」のです。一人でもがいても孤独を感じるだけです。認め合える「誰か」が必要なんです。その人と居場所を作ることが大切なんだと思います。

皆さんは、家庭や仕事場以外にどれだけ居場所をお持ちですか。仕事場も居場所ではないと、感じていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。また、部下がそのように感じていたら、居場所になるように周りが「自分らしくいられる居場所」なんだと思えるよう、インクルーシブなコミュニケーションをとってくださいね。とても大切なことです。

ここ数日寒くなり、桜も頑張って美しさを保っている。4月の門出を祝うように。