ロングゲーム 人生を味わっているか

ロングゲーム 今、自分にとっていちばん意味のあることをするために(ドリー・クラーク著)」の話をしよう。たくさんインスパイアされた本の一つだ。引用しながら感じていることを書いていこう。

 

「何かを始めるには、まず起動時間がかかる。たとえ最高レベルのイノベーションであっても、最初のうちはただお金が吸い込まれる穴にしか見えない時期が長く続くものだ。だが、ひとたび足場が固まれば、ただの穴が競争力のある強固なお堀になっていることに気付くだろう。究極的に企業が求めているのは利益であり、それが実現するのは10年単位だ。四半期単位で実現することではない。長期で考えらえる人だけがその地点に到達することができる。」「そしてそれは一流企業だけでなく、私たち個人の仕事にも長期的な思考が必要だ」

「全ての成功の裏には、渇望していたものがどうしても手に入らなかった瞬間がたくさんある。しかしそれと同じくらい大切に味わいたくなる瞬間も経験するだろう。なかなか前に進めずに辛い思いをする瞬間、こんな努力は無意味だと思う瞬間、あとから思えば大きな意味を持つ。」「私たちにとって挑戦とは自分への挑戦だ。誰にも気付かれず無視されていてもそれでも前に進んでいく。世界がいつか自分の存在に気付くはずだろうと信じ続ける。」

人生を味わっているだろうか。挫折したり、疲れたり、打ちのめされたり、人生にはいろいろな障害がある。上手くいくときよりいかない時の方が多い。しかし、それに負けずに挑戦を続ければ必ず未来は開ける。後から思えばその感動をもっと味わっておけばよかったと気付くものだ。人生を味わい尽くすのだ。きっと違う何かが見えてくる。僕は若い時に比べて時間の流れを泳いでいる時に感じた何かを、ちゃんと味わっている気がする。自分に対してインクルーシブになったのかもしれない。自分と向き合えるようになったのかもしれない。それが熟成なのかもしれないし、残された有限の時間を生きる本能、即ちそれはただの老いなのかもしれないが。

 

意味のある人生とは何か?」「幅広く考え、人としてどう成長したいのか理想の自分像を人生にどう織り込むかということも考えなければならない。」「欲しいものはほぼすべて手に入るのだと理解することだ。ただしすぐには手に入らない。きちんと計画を立て忍耐強く着実に前に進んでいけば、いつかは目指していた場所に到達することができる。最初のうちは遅々として進まないかもしれない。だが、努力は福利の様に大きくなる。一つずづ行動を積み重ねていけばいつか驚くような結果を出せる。」「目先の利益の誘惑に負けず、不確実ではあるが、価値のある将来の目標に向かって努力を続ける。これがロングゲームをプレイするということだ」「簡単なこと、すぐに結果が出ることばかりを求めるこの薄っぺらいな世界で、意義深く長続きする成功を手に入れたいのなら、これが最も確実な道だ。」

忍耐強く着実に前に進む。簡単に聞こえて実は難しい。人は皆短気だ。すぐ成果の出ないことを長く続けることは簡単ではない。何かのギフトがないと続かない。楽しいとか、褒められるとか、周りの人が共鳴してくれるとかだ。著者の言う「努力は福利」という指摘に深く共感する。しかし、そのことをほとんどの人は気付いていない。ロングゲームを楽しみながら進もう。人生は積み重ねなんだ。

 

「予定の詰まったカレンダーは、自分で作った牢獄というのが事実だ」「ノーということができれば、カレンダーに余白を作り、本当にやりたいことができる」

「コロンビアビジネススクール研究によると、忙しいことは社会的ステータスに繋がる」「激務をこなし、それをアピールすることは自分の自尊心にとって大切だということだ」「自分が価値のある存在だと思いたいという気持ちが私たちが忙しさを求める強力なインセンティブになっているのだ」「忙しいと深く考えなくて済む。忙しさにはどうやら麻酔のような効果があるのだ」「そういう人たちは自分をコントロールできていない

これを読んで、グサッときている人は多いだろう。僕もそんな状況にあった。人は忙しければ忙しい程プライドをくすぐる。「忙しいぞ、どうだ偉いでしょう」とでも言うように。全く愚かな勘違いだ。私のクライアントもそういう人が多い。Outlookを公開して部下が全部スケジュールを埋める。その通りに仕事を進め、自分一人でやる仕事は夜間と週末だ。そんな上司がロールモデルになるだろうか。もちろん、Noだ。そんな人にはなりたくない。そして、部下は上司に頼り、上司は頼られることを心地よく引き受けていると部下の自立は遠のく。上司は上司でハイレベルな行動をとる時間を取れない。それでは仕事のレベルは永遠に高まっていくまい余白は自分の意志で作らなければならないのだ。余白を何に使うかが戦略的でなければ、上司失格だ。ロールモデルになんかなるわけがない。

 

「根拠もなく自分の能力を過大評価する。目標達成までのプロセスも、成功するために本当に必要なものも調べようとしない。夢のようなことを語るばかりで、その裏にある努力と犠牲のことは都合よく無視する。当然の結果として期待したように上手くいかずにがっかりするのだ。」「成功への道のりは楽ではない。最初からその大変さをきちんと理解していれば、懸命に戦略を立て途中で挫折を経験しても立ち直ることができる」

ビジネスを考える時に、そのプロセスの難易度を甘く想定する人は多い。失敗の経験がないのも原因の一つだろうが、想像力が決定的に足りない。何が起きるか、他社だったらどう出てくるか、誰が破壊者になり得るのか、視野が狭くかつ浅く、そして時間軸を未来に向けられない。学習と訓練、そして、それには忍耐と努力が必要だと理解し、更に覚悟が必要だと理解してほしい。努力をするものだけにリターンがあるのだ。

 

「ベゾスは常に長期の難しい目標を探している。他の人が恐れをなして逃げ出すような目標だ。3年単位の目標ばかりを追っているとたくさんのライバルと闘わなければならない。しかし、7年単位の目標を考えるとライバルは激減する。時間軸を伸ばすだけで、短期では達成できない大きな目標に取り組めるようになる。実際のところ、私たちのほとんどは野心が足りない。そして、その具体的な目標を立てる人はほとんどいない

ビッグピクチャーを描いてごらん、と言われてもなかなか描けないものだ。これも訓練。視座は磨けるのだ。

 

「ロングゲームを生きるためには 1.独立心。自分のビジョンに忠実であることだ。」「周りの目を気にしすぎるなということだ。頼まれたら断れない。結果が出るのには時間がかかる。他人からの評価を気にしていると、その待ち時間に耐えられない。自分の評価基準を設けることが大切だ」

これは一種の審美眼のようなものだろう。確固たる考え方がなければ揺れまくる。揺れた挙句、その状態に耐えられなくなる。それでは結果に辿り着けない。

2. 好奇心。道を見つける好奇心。何に火つけられるのかを理解しておく方がいい」

3. 立ち直る力。上手くいくかどうかはやってみなければわからない。しばしば失敗に終わる。あまりにも多くの人が一度の拒絶や失敗ですっかり意欲を削がれてしまう。偶然や運、個人の興味が結果を左右する。成功するかどうかは打席に立つ回数で決まると言っても過言ではない」

その通り。残念なことに日本はこれが全くダメ。以前にも書いたが、上司はブレーキを踏みまくる。野中郁次郎先生が指摘するよう、分析過剰で、計画過剰で、コンプラ過剰で、いつまでたっても試させてくれない。その3つの過剰が日本をダメにしたという指摘だ。100%同意する。新しいことにチャレンジしなくて成長はない。自分で考え、自分の意志でチャレンジし、そして失敗する。そう、失敗なくして成長はないのだ。ただ、失敗の仕方があるよね、というのが「リーンスタートアップ」などの教えなのだ。学ぼうよね。そして、大けがしないように失敗すればいいのですよ。

 

ロングゲームである人生。味わうにはちょっと立ち止まって、鏡に写る自分と向き合うことが必要なのかもしれない。

友人ご夫婦と会食後の二次会。別腹の余白を作らないと人生は味わいつくせない。
残念ながら僕には無理(笑)