麻雀からビジネスへ~自滅の世界~

桜井章一という雀士がPRESIDENTにこう書いていた。「人はチャンスのときばかりに重点を置き、ピンチを重視できない。チャンスのときだけ頑張ろうとするからダメなんだ。本当はピンチをいかにして楽しむか、それが運の強さに関わってくる。なぜなら、勝負ごとにおける『負け』の99%は『自滅』であるからだ。」

「この『自滅』の考えは、麻雀やスポーツだけではなく、ビジネスや生き方そのものなどすべての場面において同じことが言えるはずだ。」

 

そうか、「自滅」か。皆さんのビジネスはどうでしょう? やっとつかんだ競争優位性。シェアも上がり、重要な顧客はすべてつかんだ。利益率も上がり、価格決定権は最早我々にある。そんな順風満帆な環境を努力によって獲得できている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、それも永遠ではありません。いつか必ず驕りが出る。顧客の価値観を理解しているつもりでも、いつかズレが出る。産業セクターによって違うとは思いますが、例えば、ITサービス業界は長期ビジネスの典型です。ビジネスプロセスに深くかかわるので、一度契約をしてシステムを導入すると、そのベンダーを他社に変えるコスト(スイッチング・コスト)が大きく、かつ成功するかどうかのリスクが生まれるわけです。したがって、入り込んだベンダーは我が世の春を謳歌できるわけです。これはユーザにとっても同様で、内情を理解し、信頼できるから継続的に任せられる。即ちWin-Winの関係なのです。しかし、驕りが出てしまう。ちょっとした配慮不足、顧客のことを知っているはずなのに、顧客の窮状に耳を貸さない、社内の予算などの論理(自社の価値観)を前に出してしまう。そんなことが顧客のロイヤルティ(loyalty:忠誠心)を下げてしまう。

そう、それは正に「自滅」なのだ。信頼関係を維持し、さらに深めていく日常はコツコツとした努力の積み重ね。深いコミュニケーションや現場主義、困りごとの真実は努力なくして理解できない。しかし、それらの積み重ねは派手でなく、往々にして評価されにくい。派手な空中戦で死ぬか生きるかの戦いを挑んでいる方が、注目されやすい。

問題はもう一つあります。「自滅」に気付きにくいことです。それは二つのバイアスがあるからです。一つは「正常性バイアス」これは自分にとって都合の悪い情報は聞き入れない現象を言います。私も良く書きましたよね。見たくないものは見えないと。それと同じです。顧客の重要な不都合な変化を見落すわけです。二つ目が「自己奉仕バイアス」です。これは成功すれば自分のお陰、失敗したら他人のせいとする現象です。そう、「自滅」しても他人のせいにしてしまう。反省などしないわけです。組織としての学習も進みませんね。上司や関係者はその事実を直視し、真実を理解し反省しなければ組織は強くなれません。

スイッチング・コストがクラウドなどのテクノロジーによって下がってきたIT。しかし、顧客との長期にわたる信頼関係が、利益をもたらすのは変わりはない。顧客もそれを望んでいます。「自滅」をしないチームが継続的な成長を創り上げると確信します。

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顧客と同じものを見ているのだろうか?