ダイハツの検査不正で締めくくることになってしまった2023~日本企業は考え直す時~

今年ももうお終いという時に、また大企業の不祥事が起きてしまった。ダイハツの検査不正だ。皆さんもメディアの報に触れられたと思う。工場は全面停止し、いつ再開できるかの目途も立っていない。

日経新聞によれば、検査不正は64車種3エンジンに及ぶということだ。例えばエアバックの試験では、本来センサーが衝突を感知しコンピューターでエアバックを作動させるのだが、試験時点ではコンピューターができていなく、タイマーをかけそれにより作動させて試験としていたということだ。それでは事故を想定した試験になるはずもなく、全く意味のない試験で済ませていたことになる。それ以外にも、虚偽の数値を提出していたり、法定で定まっている速度で試験をせずに認証申請をしていたなどなど、あまりにお粗末で露骨な不正ばかりだ。

なぜこのような不正を犯してしまうのだろうか。競合他社との競争が激化し、新車の開発期間を短縮することが至上命題だった点や、過度なコスト削減が行き過ぎ、衝突試験を担う安全性能担当部署の人員が12年間で1/3になっていた点が指摘されている。

皆さんの記憶に新しいのが22年の日野自動車排ガス不正だが、日産、スバル、スズキ、ヤマハなどがここ5年余りの間に続いていたのだ。自動車業界だけではない、先日書いた沢井製薬もそうだったし、実は枚挙にいとまがないほど不祥事は多発しているのだ。

以前にも書いたが、この裏には極度の業績至上主義があり、それが原因となっている可能性が高いと考える。特に、日本企業は上司の命令は絶対であり、組織は支配的ヒエラルキーで、あるべき論が正義とされる男性性むき出しのカルチャーに犯されている。正しいことより、命令に従うことを是とし、命令を守れないと出直しがきかない、違った意見を持っていてもそれを発することはできない、というような価値観が蔓延しているのだ。それは倫理より優先し、そうしなければ組織の中で存在し得ないと思い込んでいる。組織の優先順位と個人の優先順位は必ず同じことが当たり前だ、それが社会規範だと、空気の様に身体に沁み込んでいる。そこに多様性など存在しない言わなくても分かるだろ。そんな環境の中で流されて生きてきたのだ。

社長は、社員が悪いのではなく、経営陣が悪いと言っていたが、それにも違和感がある。長い間に積もり積もって出来上がったカルチャーなのだ。全員が悪い。それを治すためには、あらゆるものを総合的に治していかなければ絶対完治しない。社長を変えても、何かに手を入れても治らない。多様性を進め(「多様な意見は秩序を乱す脅威ではない。組織や社会を活性化する力だ。第三者に意見を求めるのは、チームへの忠誠心が足りないからではなく、忠誠心が高いからこそ」マシュー・サイド)、支配的ヒエラルキーをすべて壊し男性性むき出しの価値観やコミュニケーションを、より女性性あふれるものにシフトし、職場に心理的安全性を取り戻し、ムラ社会ハイコンテクストを前提とする同調圧力を一掃すべく、リーダーを再教育し、完遂することより最善を尽くすことを美学とする価値観に変え、現場革新の価値を尊重し、権限を大幅に委譲し、上層部の圧力あふれるメッセージを撲滅させ、ボトムアップの「Better than best」を良しとするカルチャーに変革することなどが、必要不可欠だと思う。

これには一朝一夕にはいかない努力と期間が必要だ。決してトップの強い圧力を感じるリーダーシップで乗り切ろうなどと考えない方がいいと思う。こういう時こそ、ボトムアップで社員の知恵と情熱を集合して、とことん話し合って一致団結して乗り切ってほしいものだ。

企業の皆さん。これは絶対に他人事ではありませんよ。

頼むぞ日本!!