ポンコツな上司

トップを神格化するフォロワーたち。よくある話ですし、組織の大きさや歴史にもあまり関係ないように感じます。

皆さんの上司やトップはどのようなところが素晴らしいのでしょうか。実はよく分かっていませんよね。長年直属の部下として艱難辛苦を乗り越えてきたなら分かるかもしれません。しかし、そんな関係はごく稀です。ほとんどは、よく話したことすらありませんよね。しかし、素晴らしいと思ってしまう。これはきっと「そう思いたい」ということなのでしょう。例えば企業のピンチを救ったとか、改革が成功したとか、まるで伝説の様に報じられたりして、それを鵜呑みにしている人が圧倒的に多いのではないでしょうか。そもそもメディアが書いていることを鵜呑みにすること自体が、間違っていますよね。メディアは書きたい物語を想定してインタビューし、それに合致した内容をピックアップしてシナリオを書くのが常でしょう。真っ赤な嘘じゃないけれど、物語りの邪魔をするエピソードはすべて捨て去るわけです。売れる物語を都合よく書いているわけです。例えば、べた褒めな記事を読んだ奥さんは吐き捨てるように「あんた、よくもまあこんな記事が載って恥ずかしくないものね。あんたの力でできるわけないじゃん。厚化粧にもほどがある」なんて言うかもしれません。神格化されている上司やトップも、実は皆ポンコツなのです。そりゃそうでしょう。ただの人ですから。奥さんが一番よく分かっている。(トップが男性の場合)

 

上司やトップの素晴らしさって何でしょうか。能力やスキルですか? 意思決定力ですか? 自分で考え明確に指示するリーダーシップですか? 清廉な価値観ですか? 人格ですか? 影響力ですか? 収益を伸ばし続け社員にリターンしたことですか? 

もちろん、定説や正解があるわけではありません。活躍しているトップは万能でしょうか。当然違います。たまたま今の環境で活躍できている可能性が高い。一人一人に固有の人生観や仕事観がありますし、動機というかドライバーがあります。それって、組織や人の関係性に強く影響を及ぼします。即ち、同じ価値観を持っている人が集まっていると、やりやすいし伸び伸びと活躍しやすい。価値観と合う企業カルチャーや風習を持つ組織だと活躍できるが、そうでないと実力は発揮されにくいものです。大活躍したある社長がヘッドハンティングで別会社の社長に転じても、活躍できるかどうかは未知数です。特に日本の場合は、新卒で入社しずっと同じ会社で働き、社長や幹部になる人がほとんどです。時間をかけ価値観などのすり合わせをしてきたから今があるのです。そうでない経験をしたことがないわけです。それが、突然転職しても活躍できる保証などありません。

素晴らしさなんて、ただのパーソナリティーの一部でしかありません。何がなければならないなんて全くないのです。一人一人が自分らしさを出すしかないのです。必要なのは適応力、変わる力だけです。

 

上司やトップを丸っと理解するためにはどうしたらいいのでしょうか。その答えは、部下にあるのではないと思います。そうです。上司サイドの課題なのです。これは、「信頼関係」のことを考えてみると分かると思っています。信頼関係のある人の事を思い出してください。なぜ信頼し信頼されているのか。もちろん時間やコミュニケーション量もパラメーターでしょう。

想像してみましょう。あなたは誰にでも何でも話せますか。みっともない話や情けない話、失敗談などネガティブなエピソードや心の持ちようなどは、誰にでも話せませんよね。そうです、信頼できる人にしか話せないのだと感じます。恐らくほとんどの人がそう感じるでしょう。では、話された側の人は、どう感じるのでしょうか。そんな機微な話をされた時には、「私は信頼されている」と感じるはずです。自分だって誰にでも話せる話じゃないわけで、自分が選ばれた人であると感じるはずです。

自分を晒すこと(「自己開示」と言います)は信頼関係構築のきっかけだと思います。そして、それは上司がキックするしかないのです。ポンコツぶりを明け透けにするのです。それによりフォロワー(部下など)は上司を理解します。信頼関係が生まれます。強いチームとは補い合うチームのことです。完璧な人など存在しないのですから、補い合うチームが理想なはずです。

フォロワーが上司を理解すると言っても、「頼りないな~」と理解されるかもしれませんね。更に、日本の組織の多くは強い上司の指示で動いてきたC&Cと前にも書きました)、言い換えると飼いならされてきたわけで、フォロワーたちは、上司はマッチョでいてほしいと思っています。そういう組織において、上司がポンコツ振りを披歴したら、信頼関係は構築できるとは思いにくいですよね。その時は、組織変革には順番があると理解すべきでしょう。まずは、そのような「率いるリーダーシップ」の文化を少しずつ変えること。上司はフォロワーに自分で考え自律して行動するように要求し続けることです。即ち人は万能ではなく、上司の判断は正しいとは限らないし、状況は日々変わり続けるのだから、前線のあなたが自分で判断して行動するしか対処方法はないことを理解させるしかないのです。そのような状況下では年長者の経験が役に立つとは限らないし、正しいとは限らない。補い合ってスピーディーに行動するしかないのです。そこに必要なのは、信頼関係に裏打ちされたコミュニケ―ション量です。それらを皆が理解しなければなりません。そう仕向けるのも、リーダーシップです。

上司はマッチョな方がいいですか? 楽ですもんね。その分あなたは成長しませんよ。