三菱に学ぶ

明けましておめでとうございますHeaven's Kitchen読者の皆さんのご多幸をお祈りします。今年もよろしくお願いします。

さて、新年1回目の投稿です。去年もいろいろなことがありました。僕たちがビジネスを進める上でとても大きな学びになった事案の一つが「三菱電機の不正」でした。工場の品質不正が発覚して半年以上たっても不正が続いていた事実。それもあちこちの部門で長い間続いていた。「ガバナンスレビュー委員会」が調査報告書(なんと291ページ)は、不正問題に詳しい安岡元教授によると100点満点中30点だという。原因分析の踏み込みが不十分だと指摘する。

東洋経済のネット版に詳しく掲載されているので興味のある方は読むことをお勧めするが、僕なりのポイントを書きたいと思う。

明らかに一番の問題は企業カルチャーだろう。「上長の命令は絶対。まるで軍隊」「どうやったら本社の事業本部長に怒られないか必死で考え、報告書の文面を必死に考える・・・」「幹部には決して本音を語れない」「皆上を見て仕事をしている」「パワハラ以外のマネジメントを知らないと自嘲する幹部」ともかく、現場に対する異常なプレッシャー業績重視(すなわち数字)で品質は二の次。上司には相談もできない、しかし従業員サーベイでは「風通しが良い」という評価。などなど。それほどひどかったのか、と僕も驚く。しかし、考えてみてください。それに似たことはあなたの部署でもあったのでは?

東芝の不正会計も似ている。数字に対する幹部からの異常なプレッシャー業績優先でその他のことはすべて目をつぶる。ともかく怒られないように・・・そればかり考えている。顧客は二の次。品質を管理すべきスタッフの意志はどこにあるのだろうかエンジニアのプライドは・・・ 倫理観は・・・ 働いていた人たちは辛かっただろう。目先の業績を嘘で塗り固めても、結局は大きな社会問題となり、信用は失いブランドは棄損し、顧客を失い、業績は大きく落ち込む。彼らは何を守ってきたのだろうか。もう、過去に戻ることはできない。

 

以前にも書いたが、僕はビジネスの要諦は「自滅しないこと」だと確信する。皆さんのビジネス上の敗退や失敗の原因を俯瞰してみてほしい。他社が○○だったから、顧客が○○だったから・・・原因を自分以外に置くことが多いでしょう。本当にそうですか? ほとんどの原因はあなた自身、あなたの組織など足元にあるのではないですか? 結局判断ミスとか、見逃していたとか、優先順位を下げていたとか、エスカレーション出来なかったとか、背水の陣で交渉する勇気がなかったとか、止める勇気がなかったとか、適切な経営資源を投入できなかったとか、上司を説得できなかったとか・・・皆あなた及びチームが原因です

これは誰にでもあることです。すべての企業が陥る罠です。その原因は何でしょうか。人間には逆らえない性があります。脳の癖です。その一つがバイアスです。

僕たちの足を引っ張るバイアスは二つあります。一つが「正常性バイアス」これは自分にとって都合の悪い情報は聞き入れないことです。「見たくないものは見えない」と僕も何度も書きましたよね。そのことです。だから「ホラーストーリー」を考えないんですね。「想定外でした」なんて言い訳しちゃうんですね。想定することが仕事なのにね。上司も「じゃあしょうがないね」なんて言っちゃう。完全にポンコツです。

二つ目が「自己奉仕バイアイス」です。これは成功すれば自分のお陰、失敗したら他人のせい、というやつです。たくさんいるでしょ、そういう輩。だから、反省しないんですよ。他人のせいにする人が反省するわけがない。管理職がそうなら組織として学習することなんてあり得なくなるわけです。最低ですね。

だから僕は以前から「自虐的になれ」と言っているんです。自分がいかにお粗末かということに向き合うことがどれだけ大切なのかを肝に銘じてほしい。

そして、もう一つ大きな脳の癖が「自己保存の本能」です。これは生きていくために自分を守らなければならないという生物の最も強い本能なのです。避けられません。これがあるから、自分と違う意見の人に反発したり、自分の地位が危ぶまれると都合の悪いことを隠蔽したり、貧乏くじは引きたくないと放っておいたりするのです。

僕たちは誰でも持っている本能に抗わなくてはならないのです。分かっていれば、意思さえあれば行動は変えられるのです。それができなければあなたの組織も三菱になってしまうかもしれません。是非職場でこの話をして足元の事実と向き合ってください。

絶対に忘れてはいけません。これらに抗える力を組織カルチャーにしなければならないことを。

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上司の指示に従って、何も考えず何の疑問を持たず、前だけ見て進むことほど
危ないことはない。