1on1がパワハラ? うそでしょ・・・

ロジック・ブレイン社の企業における1on1の実態調査によると、「1on1ミーティングの際、上司と本音で話すことができていますか?」に対して「はい」が57.8%。「1on1ミーティングの際、パワハラを感じたことがありますか?」に対して「とてもある」が12.8%、「たまにある」が31.6%で合計44.4%がパワハラを感じているとのことだった。

本音で話せていないと感じる人が4割以上。パワハラを感じたことのある人が4割以上。この結果を見て管理職の皆さんはどう感じるのだろうか? A「自分は絶対にそんなことはない」ですか? B「もしかすると自分もそうなのかもしれない」ですか?

勝手なことを言いますと、Aに客観性はないですよね。部下の感情は全然違うかもしれません。人間は結局自分に都合の良い判断をします。そもそも部下からフィードバック(FB)をもらったことなどないでしょう。仮にあったとしても、もしあなたが普段から一種の圧力を醸し出している人だったら、部下は正直なFBを話しませんよね。そう理解すべきです。

更に、オブラートに包みながらも、本音はなかなか話せませんとかの感想が述べられたとしても、部下のことを「僕はオープンなのにあいつはなぜ遠慮するんだ、そこがダメなんだよな」なんてボヤいたり部下の姿勢を批判したりします。それを正常性バイアスといいます。自分にとって都合の悪い情報は聞き入れないことです。何度も書いていますよね。また、エンゲージメントサーベイの結果が良かったら、上司に「僕がフランクに1on1やっている成果が出てますね~」なんて鼻高々になるし、結果が良くないことを、上司に注意喚起されたら、その管理職は「どれだけオープンに接しようが、今の若いもんは本音を語らないんですよ」なんて自分のことはさて置いたコメントを平気で吐いたりする。これは正に「自己奉仕バイアス」です。成功すれば自分のお陰、失敗したら他人のせいにしてしまうバイアスです。最低ですね!

でも、どちらも「あるある」ですよ。間違いなく、多くの人(あなたも私も)がそのバイアスに陥っていることは間違いないのです。

どうすればいいのでしょうか。もちろん、Bの理解をするべきです。これは言い換えれば「自分と向き合うこと」ですね。鏡に写る自分を見るように、三者の目で自分を見ることです。難しくても、事実を直視しようと努力し、真実を理解しようと努力し、反省し、行動を変えることです。もしかしたら・・・とよぎったら試しに行動を変えてみたらいいのです。その繰り返しがあなたを優れたリーダーに押し上げることでしょう。

 

冒頭の話に戻りますね。パワハラに感じるひとが4割以上。感じるかどうかは受け手の問題ですから、何を言っても感じない人もいれば、ほんのちょっとしたギャグでそう感じる人もいるでしょう。いずれも、上司の、相手の表情とか振舞などから感情を読み取る力で感じなければなりませんね。特に、上司の単刀直入な質問は部下の不安と混沌を生んでしまうものです。「あの件どうなったんだ?」「反応はどうだった?」「次はどうするんだ?」などというぶっきら棒な質問にはへこみます。「何のことを言ってるの?」「誰のことを言ってるの?」「何を期待しているの?」「新人の僕に分かるわけないじゃない」「何を心配しているの?」「部長はどこまで理解して聞いているの?」純粋な部下は緊張し部長の気持ちや本音を理解しようと、頭の中はグルグルですよね。ちょっとでも反応しようものなら、「そんなことを聞いているんじゃないよ」だって。だったら何を聞いてるの?

部長に悪気があるかどうかは全くどうでもよく、部長が悪いのは間違いありません。これはパワハラに感じられてもしょうがありませんよね。こんな風景が日々展開されている可能性がありますね。だからFBが必要なのです。本人ではなく、周りにの人でもいいですよ。以前に在宅オンラインが当たり前になったときに話題になった川柳です。家族にオンライン会議の様子を聞かれたのでしょうね。記憶では「会社では 偉そうなのね お父さん」(笑) 立派なFBです。

上司は的確な質問をすることがとても重要です。クローズドな質問(YesかNoの返事で終わってしまう質問)は最小限に止め、オープンエンドな質問(答えが決まっていない質問)を、背景や意図を分かりやすく伝えたうえで行うことが必要不可欠です。徹底して優しい表情と言い方でね。そして、立て続けの質問や上司が持論や指示を長々行うことなどは絶対に避けなければなりません。やるべきは、的確な質問と、傾聴、相手に対して深い好奇心を抱くこと、承認・称賛です。そして最小限のアドバイス(*)と、協力です。「僕が助けられることはあるかな?」という感じです。

(*)なぜ最小限のアドバイスが大切なのでしょうか? 手取り足取り詳細にアドバイス(というより指導)してしまうと、部下は考えなくなるからです。結局指示待ち人間を作ってしまうことになります。

ミーティングの満足度は、自分が話した量に比例すると聞きました。腹落ちしますよね。1on1も同じですよ。聴いてあげることが大切なんです。即ち、話しやすい質問をすることです。もちろん核心・本質に到達できるような問いを。即ち部下が自分と向き合うようにです。上司は命令する人ではありません。触媒なのです。化学反応を助けてあげる役目なんです。

上司との魅惑のランチの席ですら、心を開いているとは限りませんぞ。
上司は丁寧な準備をして1on1に臨むべきです。