壁に対処するリーダーの力量とは

僕たちが特定の組織に帰属し続けるということは、その組織が僕たちに何らかの魅力を与え続けているからだと言える。その魅力は4つの非経済的魅力として整理されている。それをHR4Pと言う。

①理念や方針(Philosophy):組織が達成しようとしている目的に対する魅力。組織が大切にしている理念やパーパス、ビジョン、価値観など。

②仕事や活動(Profession):組織が行っている活動、仕事・事業内容自体に対する魅力。仕事を通じて得られる達成感、発見、発展、成長など。

③仲間や仕事の関係者(People):組織に属する人たちの魅力。価値観や考え方に共感できる。刺激的で影響し合えて、尊敬できる、を許せる仲間がいる。

④特権(Privilege):組織に属することで得られる特別な権益の魅力。ステータスや名誉。個人のライフスタイルをサポートする仕組みなど。

それぞれとても重要だと感じるが、恐らく時代の変化で変わっていくし、年齢層によっても異なるだろう。皆さんも自組織のメンバーが感じている魅力を洞察することをお勧めする。

 

さて、あなたが組織のリーダーだった場合、想像してほしいことがある。それはグレイナーの組織成長モデル(1979年ラリー・E・グレイナー)という考え方だ。企業で働く場合、自分の成長・昇格などによってマネージすべき組織の規模は大きくなっていく。または、スタートアップに入社した場合や自ら起業した場合は、企業自体が発展することによって、社員の数は大きくなっていく。企業の中で成長ドメインを担当していても同様だ。その成長プロセスの中で出てくるのが、50人の壁、100人の壁、300人の壁、1000人の壁と言われる変化だ。

組織が小さければ、リーダーのカリスマ性や優れた技術力や発想などのクリエイティビティが成長の源泉の中心になる。人数が増えるに従い、一人で引っ張ることに限界が来る。リーダーはプレイングマネージャーになり、部下に寄り添い二人三脚的にリードしていくことになる。さらに大きくなれば(例えば100人)、経営資源最適配布し効率よく運営することが求められる。即ちリーダーシップとマネジメント力の両立が重要になる。ハンズオンでできることに限界が出始め、権限委譲を進めるとともに、それらの両立が更に求められるようになる。更に組織が大きくなると(例えば300人)、権限委譲の進行と共に組織の独立性が求められる。一方、100人以上になってくると重要性が増すのが経営システムの整備だ。意思決定プロセス、承認プロセス、それらを回すための会議体、権限と責任の明確化等々が組織規模にアラインするよう整備していかなければならない。経営チームを明確にし、そのもとに自律した組織がスピーディーに活動するとともに、経営システムによってその活動を最適化するガバナンスができるようにしなければならない。300人以上になってくると、リーダーには明らかに経営視点が求められる。多様な経験を積んでおく必要があるし、その経験に立脚したビジョナリーなコミュニケーションが必要不可欠になる。

人数は業態などによって大きく異なるだろう。イメージとして捉えてほしい。理解すべきは、このような変化、組織のトランジション(遷移)を自分事として捉えることの重要性だ。そのトランジションの中でHR4Pが高いレベルで維持されているかどうかを計測し続けなければならないのだ。組織は変わり続けなければならないし、リーダーも同様だ。それができなければ組織は成長していけないか、成長プロセスの中で破綻していく。モチベーションやエンゲージメントは下がり、顧客との関係も悪くなり、組織の対応力は下がり、イノベーションは起きなくなる。危機は必ず訪れるのだ。その危機を予見しそれを乗り越える処方箋を理解し、事前にビルトインしていける人が経営者なのではないだろうか。

決して難しいことではない。学習し、試し、修正し、声を聴き、行動するのだ。世の中にはトランジションに苦労したケースはたくさんある。ほぼリーダーの力量にディペンドすると言ってもいいだろう。それがプロの経営者かどうかの分けれ目だ。

再度言うが、決して難しいことではない。逃げずにオーナーシップをもって向き合ってほしい。

ビビッドであれ

都会の運動会。5類になって昔の景色が戻ってきた。寂しい思いを感じてきた。
社会は常に変化を続ける。僕らの属する組織もそう。
それにアラインするためにリーダーは存在すると言ってもいい。