Think bigger

ビジネスに関して、将来の見通しを洞察し、どのように対処すべきか考えたり、戦略の選択肢を想像したりすることは、事業に携わる者にとっては日常でしょう。常に変化があり、それに対処するための経営リソースも常に流動的で、競争環境は競合他社の動静によって変化し続け相対的優位性は常に動き続けます。目先のことならまだしも、将来のことを考える際は、「在りたい姿」を常に想像しますし、そこには一種の「審美性」を求めることも常でしょう。拘るものがなければ「存在理由」(自分らしさ)に納得できないからです。

そんな時に、事業を考える者は常に自分をコントロールしたり鼓舞したりする「言葉」を持っている気がします。自分がどうだったか少し述べてみたいと思います。

 

まず「Think bigger」です。最初は大きな絵を描きたいものです。観たい景色はどのようなものなのか、「どう在りたいか」は現時点の経営資源に拘束されては描くことはできません。必要なリソースは後で獲得すればいいし、その手段を考えるのは次のステップのはずです。

とはいえ、人間はあらゆるものに縛られています。縛られないように自分を制御しなければなりません。そんな時には、「上空1万メートルから地上を見る」とか、より戦略的な視点で考えるために「ハイレベル」な「視座」で考えているかを自分に問いかけたりもします。更に、具体的過ぎると見落とすリスクが高まるので、「上空1万メートル」と同様に「抽象度を上げる」ように自分を導きます。

上空から見下ろす感覚とはこんな感じでしょうか。例えば、マーケット全体を俯瞰し全体の変化や動きを感じます。その中で目に留まったところに徐々にフォーカスを合わせて細かいところまで見る感じでしょうか。見てみて特にピックアップする必要を感じなければ、再び視点を上空に戻し、また気になった別のところにフォーカスを当てるのです。そうやって「抽象、具体を繰り返す」感じでしょうか。

「視座」と言えば、以前にも書いたように「広く見る」「深く見る」「先を見る」を自分に要求します。それができていないと気付けば「出直しだ」とばかりに考え直すよう自分を鼓舞します。

挑戦に「確実」という言葉は相応しくありません。「リスクテイクなき成長なし」も自分に言い聞かす言葉の一つです。「無謀」と思えるくらい「大胆」な戦略がいい。制限やリスクが見つかれば後から修正すればいい。最初から小さく考えたら、たとえそれが実現できても面白くない。だから「Think bigger」です。

 

ビジョンは大胆でいい。「Big mouse」と思われる位でいい。しかし、大ぼら吹きではいけません。実現できないビジョンを繰り返すほど愚かな経営者はいません。目指すべき戦略はタスクに落とせなければ実現できません。「中期経営計画」を立てて終わりではないのです。実はそんな人も多いように感じますが・・・ タスクに落とすプロセスで、実現のために獲得すべきリソースがあまりに大きく、実現不可能に思える時もあるでしょう。その時、プラン自体がナンセンスだと思うのか、リソース獲得のためにありとあらゆる手段にチャレンジすることに東奔西走するのか、大きな分かれ目です。実現不可能なプランは無意味ですが、ビジネスのプロであれば手段をひねり出す創造力の多寡で勝負すべきでしょう。それがプロとしての実力です。

 

少し論点を変えましょう。「Think bigger」「Big mouse」「男性性」の象徴かもしれません。それは場合のよってはフォロワーの心をざわつかせるでしょう。注意しなければならないのは、「リーダーは一発屋ではいけない」ということです。いつでも考え直せるし、手段は変えればいいのです。そして、大成功か大失敗かの勝負をするために長く真っ暗なトンネルを走り続けるのではなく、小さな成功を感じ続けるように毎日を送るのです。フォロワーも含めて「Hope」を感じ続ける日々を歩むのです。

 

ビジネスは一種のゲームです。しかし、ディスプレイに向かって行うゲームと違うのは、生活がかかっているし、チームの想いがこもっていることです。しかし「だからこそ、慎重に時間をかけて・・・」では成功はできないでしょう。常に競争他社がいてスピードが勝負ですし、知財やビジネスモデルを守る戦略の選択が勝負です。条件が全部そろってから意思決定をしていては間に合わないケースばかりです。どこかでリスクを承知で見切り発車せざるを得ません。しかし、真っ暗闇で全力疾走するわけではありません。分かっていること、曖昧なこと、リスクの洞察など、すべて(見たいもの見たくないものすべて)を目の前に揃えてリーダーが判断するのです。「今だ!」とダッシュする場合もあるでしょうし、「この点だけは洞察結果を待って判断する」かもしれません。「Stay」かもしれませんし「止め」かもしれません。リーダーは自らの責任で勇気を振り絞って堂々と判断するしかないのです。これはゲームと同じです。重さが違うだけです。それを楽しむことができるのが真のリーダーでしょう。ヒリヒリする経験もあるかもしれません。ヒリヒリに負けてはなりません。所詮ビジネスです。だめならまた挑戦すればいい。部下たちにもそう話しましょう。「真剣にはやるさ、でも深刻になる必要はない」というのも私はよく使っていました(^^♪

行き止まりだったらもどればいいさ