リーダーのパラドックス

リーダーは常に可能性に賭けなければならない。と言っても無謀な戦いに挑むということではない。例えば、両立できないと思いがちなパラドックス(逆説)トレードオフだと考えずに(それがバイアス)、視座を上げて別の手を考えることだ。

前にも触れたHBRの「リーダーシップの教科書2」にパラドックスの例が載っている。いくつか紹介すると「短期目標と長期目標の両立」 僕は観点をちょっとひねると「売上か利益か」というのもパラドックスの一つだと考える。「イノベーションか効率性や有効性の改善か」も組織が二者択一と考えがちなパラドックスかもしれない。

 

パラドックスに縛られるリーダーが陥る罠の典型が、「リソース(時間、資金、人材など)は限られているというスタンスを取る」こと。これは一般的に考えて現実的な理解だと映る。これを真実と捉えると、リソースを決められるのは上位幹部だけだ、という考えに縛られる。即ち自分の手では解決しない(できない)と決めてしまうわけだ。同書はこう言う。「リソースに制約があるという前提を立てた場合、必然的に行きつくのはゼロサム思考だ。(中略)これは異なるアジェンダに取り組むマネージャー間の対立を煽る原因になる」私自身も昔は有限の罠に何度も陥った。しかし、その都度誰かに助けられた。即ち自分が見ている世界とは別の世界から調達できたのだ。

このポイントは、一つはコラボレーションにある。即ち日常の自分のチーム以外人たちとの信頼関係が物を言うということ。助け助けられ、価値観や課題を共有している人が離れた地にどれくらいいるかだ。そう考えると、リソースは限られているわけではなく、増殖可能だと考えられる。決してゼロサムではない。また、ビジネスのデザインを変えることでリソースを膨大に増殖させることもできるかもしれない。今から20年以上前のアメリカのIT企業のインド進出を思い出せば分かるでしょう。ビジネスの構造を変えて、リソースを今までと違う使い方をすることによって、ビジネス規模を一気に拡大したのだ。

 

思考が縛られているリーダーがとても多い。それはキャリアや経験のせい? 視野はどうやったら広げられるのか。日々どのような努力をすればいいのか。もちろん正解は存在しないが、言えることは、外を見ること、いろいろな人と付き合うこと、本を読むことなど、即ち多様性を身につけることだ。それが何度も書いたように「広く見る、深く見る、先を見る」力を養うことに繋がっていく。出口さんの言う「本を読め、旅をしろ、人と会え」と同じことだ。

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何歳になろうが新しい出会いによって人生はドラマチックに変わっていく