今の業績は3年前に仕込んだもの

スタートアップのエネルギーや行動力は大企業では実現できないのであろうか。「Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings」にはそのヒントが書かれている。それを実現することは簡単ではない。しかし、その精神は十分理解できるはずだし、リーダーは普段の行動や言動にそれを活かせるはずだ。

例えば、「アマゾンの基本理念として、『デイワン(はじまりの日)』がある。アマゾンは常に創業したばかりであり、決して『デイツー(二日目)』になってはならないのだ。なぜなら二日目には組織は立ち止まり、時代に乗り遅れ、やがて会社が傾いていくからだ。」どうすればいいのか。もちろん答えはいろいろあろう。ベゾス氏の思いがここにあるのではないだろうか。それは「デイワンに留まるためにはどうしたいいのか。その答えは、お客様にこだわること、既存のプロセスを疑うこと、外部のトレンドを取り入れること、そして素早く意思決定を行うことだ。」私はクライアント(企業の幹部)とよくこんな話をする。「あなたは顧客とどれくらいの頻度で会っていますか?」と。リーダー、幹部は自分の仕事をマネジメントだと思っている。それも既存の価値観に縛られた手法でマイクロマネジメントに明け暮れる人もいる。顧客価値を自分の目で確認もせずにビジネスを語れるわけがない。そんなリーダーの下では会社はあっという間に価値を失い、気付いた時には基礎体力がなくなるほど衰退していよう。自分の姿を鏡に写してみよう。既存のプロセスはどれだけ不必要なぜい肉で覆われているのか。それにも気付かないリーダーは失格だ。

 

更に、意思決定のスピードについてはこう言っている。これには少々驚いた。想像以上に手堅い価値観を示しているからだ。意思決定には2種類あるという。「一つは一旦決めたら後戻りができない意思決定だ。このような決定はゆっくりと慎重に下さなければならない。」アマゾンからゆっくりと慎重になどという言葉が出てくるとは思わなかったのだ。

ここからが納得。「だが、ほとんどの決定はそのような必要はないたいていの決定は後戻りできるのものだ。あらかじめ『後戻りできるかできないか』と問うことで、組織としての意思決定のスピードを底上げできる。」ほ~。たいていは後戻りできると。これこそベゾスたるゆえんだ。僕はその価値観がリーダーの強さだと思う。即ち、いつでも止められるし、ピボットもできるという、慧敏性を自分のものにしているということなのだ。一度決めたことをだらだら続ける(私はこれを一貫性という名の迷路だと思っている)などということはしないという自信だ。そのダイナミズムこそアマゾンを典型とするITリーダー企業の特徴ではないだろうか。(同社では、「one-way door:引き返せない一方通行」か「tow-way door:戻ってこられるドアがある」と表現するらしい)

そう、彼らは失敗を厭わないと言い換えてもいい。「失敗は発明と切っても切り離せない」と。その当たり前ができないのが日本のリーダーだと感じざるを得ない。

短期志向と思いがちなアメリカのCEO。実はいつも3年先を考えている。言い換えれば、今の業績は3年前に決めて仕込んできたものなのだ。中期計画は立てたら終わりの日本企業とは大分違うね(涙)

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計画は立てても放っておけばすぐ枯れる。後戻りできるチャレンジは即断即決で!