抽象化の大切さ

すっかり秋が街に降りてきた感じです。そりゃそうですよね。もう10月ですから。芸術の秋、行楽の秋、食欲の秋・・・皆さんはどのように秋を味わいますか?

 

さて、今日は抽象化の話です。皆さんとお話をしていると、働き方改革が進んだとはいえ、多くの会社員は相変わらずお忙しい。在宅の仕事が主流になり、マネジメントのやり方に悩んでいる方も多い。顧客の市場環境も変化が激しく、多くの企業が試行錯誤の連続。足元のプロジェクトは日常的に課題を抱え、トップラインの伸長とコストダウンの狭間で、日々てんてこ舞い、自転車操業状態に見える。

私はクラアントとのコーチングの初回で、事業課題をお聞きします。そして、それがなかなか解決しないとするならば、その原因を訊ねます。どなたもそうですが、その真因に到達できていない方が多いと感じます。多くが、表面的な手段に頼り解決しようとしています。綻びを縫い付けるだけ。取りあえずは直っても、また別なところが綻んでくる。その繰り返し。結局本質に行きついていないので、同様の問題が繰り返される。とてもよくある話ですね。

プロジェクトメンバーは疲弊し、自らも「こんなに頑張っているのに・・・」と感じつつも綻びを縫い続ける。そのような状況で、更に大きな問題が発生したら、現場は明らかにカオスに陥ります。

もちろん、正解などないのですが、問題解決のアプローチを変える必要を強く感じます。Aという問題が発生⇒その事象を解決する。Bという問題が発生⇒その問題を解決する。そして、C、D・・・と続いていく。さて、そのような1:1の問題解決は早晩経営資源の枯渇と問題の延焼と、メンバーの疲弊、マネジメントの崩壊につながっていく

ちょっとオーバーき聞こえてしまうかもしれませんが、多くの人は心当たりがあるのではないでしょうか。

 

私は、コーチングする際、よく「抽象化してみてください」とお願いします。残念ながらそれができない方が多くいらっしゃいます。「抽象化」とはどのようなことなのでしょうか。

「抽象化」の対語は「具体化」ですよね。「もっと具体的に!」と言われれば、どんどんそこにフォーカスを当てて、細かく細かく特徴を描写するという感じですよね。即ち、より限定的なポイントに限って見ていくわけです。「抽象化」はその逆なわけです。より俯瞰的に見る、横断的に見る、共通点を探す、概念的に見るというような感じです。そうすると、先ほどの、ABCDの個々の問題にフォーカスするだけではなく、そこに横たわる共通的・本質的な問題に気付くことができるわけです。

例えば、「チェックが甘かった」だから「ダブルチェックに変える」というAを解決する具体的アプローチではなく、ABCDの本質は「コミュニケーション不足」「自分のタスクだけやればよいというチームワーク欠如」だと分かるかもしれません。そうなると、「チームビルディングのやり直し」「ミーティングルール改定やITを使った共有のやり方の改革」などが的確なアプローチなのかもしれません。そこまで、本質にたどり着いたら次に行うのが、実は「具体化」ですね。「具体的にどうする?」ということです。それもすべてを重厚長大に考える必要はないかもしれません。ちょっとしたアイデアひとつで解決するかもしれません。手段に大きな経営資源を必要としない変革であるなら、AMAZON「2Waydoor」の考えに則って、ともかく「やってみよう!」と新しいアイデアを実践すればいい。「Try and Error」「Test and Learn」という感じですね。皆が共感してくれれば良いのです。

「抽象的に」問題の本質を掘ってみると、多くの場合はきっと仕組み、プロセス、カルチャー、信頼関係、コミュニケーション、当事者意識・執着心、責任感などのベーススキルなどに行きつくと思います。

また、このような「具体化」⇒「抽象化」⇒「具体化」というようにシフトする経験を味わうことは、人材育成に役立ちます。問題解決、いえ、正しい抽象化による問題解決のプロセスは人材育成のケーススタディーとしてもっとも有効だと言えるのではないでしょうか。

光と陰。
陰の中に物事の本質が潜んでいるのかもしれない。
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