勇気ある反対表明

「勇気ある反対表明」について書きたいと思います。

 

あなたは上司やトップが決めたことに反対できますか? 企業や事業部には“経営システム”があります。例えば、承認ルールや意思決定ルールなどもそうです。企業であれば、取締役会がその典型ですし、事業部や部では同様に○○会議や△△審査会議などがそれに当たります。意思決定は往々にして失敗します。それはそうです。判断に絶対はありませんし、判断材料がそろわなくても決めなければならない時は訪れます。それに、リスクがあるからと、すべての案件を却下すれば成長などあり得ません。もし、ある案件で判断が間違っていて失敗、例えば大きな損失を被ったとき、トップは批判に晒されます。「あなたは独断で決めたのですか?」と問われ、「反対なら反対と言える場はあったが、誰の反対もなかった」と言うでしょう。そうなると、意思決定の場にいたメンバーの責任も問われますよね。しかし、その時あなたは、Aというリスクが顕在化する可能性が高く、やめるべきだと言えたでしょうか。やめるべきだ、もしくはもっとこういう観点で考察すべきだ、もしくはこうなったらどうするかのプランBを用意すべきだ、などと言えますか? 

それが直観にも似たリスクの匂いがするだけの理由で、やめるべきだという主張をして通じますか? だったら君ならどうすると問われた時に、確固たる意見を言えないので反対意見を言いうことを躊躇したり、トップの強い意思を汲み取り言えなかったりしませんか? しかし、トップだって間違いますし、盲目的になります(これも前に書きましたよね)。特に業績がイマイチでマーケットや上位職から批判されているなどという環境下では、一発逆転ホームランを打ちたくなるものです。「どうだ!」と言いたくなるのも分かりますね。しかし、それがどれだけ危険なことか。意思決定のプロセスの中で、怪しい状況変化のアラートを感じても、それに目をつぶり突っ走るリスクがあるのは、以前に話しましたね。(「THINK AGAIN」に関して書いた時も同様の話をした記憶があります。)そのようなトップの迷走や大企業の泥沼を書いたのが「GE帝国盛衰史」です。あの名門GE、名経営者で名を馳せたジャック・ウェルチの時代から迷走が始まっていたとは、全く知らなかった。

 

企業や組織のトップがやってはいけないことは、

傲慢、強すぎるリーダーシップ、不透明な意思決定、YESマンの登用、事実の隠ぺい、過度な業績至上主義、業績に偏った評価・プレッシャー、間違ったコストダウン(削ってはならないコストがある)、グレーな会計処理、リスクの先送り、その場しのぎで何とかできたことに満足することなどなど。この本には企業人にとっての間違ったリーダーシップがちりばめられている。それが事実(だと思われる)だからこそ反面教師になる。管理職の皆さんに、是非読んでいただきたい名著です。サラリーマン人生を変える史書といってもいいと思います。

 

一方、明朗快活で、コミュニケーション能力にたけ、部下とフランクに話し、頼りがいがある・・・というような雰囲気だけに信頼感情を寄せて、経営資質の欠如に気付かないと、ステークホルダーの多くは騙されてしまいます。もちろん、トップ自身はは騙しているつもりではなく、自分の資質が足りないことに気付いていないのです。いわゆる典型的な「裸の王様」なのです。

近年の企業のスキャンダルを聞いただけでも、両方とも相当数存在していると思いますね。同時にこれは企業カルチャーが育てたモンスターなのではないかともよぎります。

 

「勇気ある反対表明」が飛び交う職場が最も健全なのです。YESマンの部下で染まった多様性のない組織は必ず大きな失敗をします。それは間違いありません。傲慢なトップも実は頭ではそれは分かっていますし、自分はそうではないと思っているに違いないのです。信じられないかもしれませんが、間違いありません。指摘しても「そうかな~」と本気で信じられない反応をしますよ。だからこそ、遠慮なく言いたいことを言うべきなのです。トップに対して「多様な意見は必要ですよね。それを求めてますよね。耳が痛い話こそ大切だと思っていますよね。裸の王様になりたくないでよね。だから遠慮なく言いますよ」と言えばよいのです。絶対にトップは「もちろんだ。遠慮なく言ってくれ。私はそういう部下を望んでいる」と必ず言いますから(*^^)v 

万が一そう言わなかったら、それはかなり重篤な状況ですね。あなたは諦めてその組織から出るべきです。変えようと足掻いたらあなたが傷つく可能性が高いですから。

 

あなたが組織のトップや管理職だったら、部下が辛口の意見をどんどん言ってくるのに閉口していたとしても、良い組織をもって幸せだと思うべきです。少々面倒臭いですけどね(笑)

つづきはまた書きますね。

上司はいつも正しいとは限りません。傘をさしていたら、
清々しい青空も、降り出しそうな怪しい雲も見えません。
 和傘を借りて日傘代わりに歩いた。@浜離宮恩賜庭園