言葉の影響力

少々前の話です。私がCMOだった頃、エモい」という言葉が巷で言われ始めました。恐らく、最初はマーケティングを進める上での価値観として「Emotional」という意味で使われ始めたのではないかと、私は思っています(事実は闇の中)。

確かに「Emotional」であることはとても大きな価値です。B2BであろうがB2Cであろうが、消費者、意思決定者の心情に刺さるメッセージが求められるのです。そこにはロジックや経験では設計できない情感があるはずですよね。

それが、いつの間にか「エモい」として闊歩するようになったのです。使い方も今私が言ったことをはるかに超越して、私には説明できない世界に昇華されていますね(笑)

言葉ってすごく影響力がある。言葉の流行で本質的な意味を思い出させてくれる社会的な影響力を感じることもあります。

必ずしも新しい言葉にビビッドではない私が最近キーワードだねと感じた、古くて新しい言葉が「ポリコレ」です。多くの人が既に使っているのかもしれません。私は知らなかった。しかし、社会価値として非常に重要な言葉であり、その言葉が拡がることにより、社会がよくなる可能性を感じる言葉だと思いました。「パリコレ」じゃないですよ。古いね(笑)

 

「ポリコレ」とは、ポリティカル・コレクトネス」のことで、性別や人種、職業、信条などなどにおいて偏見や差別を生まないような表現を用いることです。政治的な中立性と言ってもいいかもしれませんが、よく分かりませんよね。実は「ポリコレ」という言葉を知っているかどうかは別として、その流れは皆さんよく分かっているはずです。

例えば、「スチュワーデス」という言葉は「フライトアテンダント」、「看護婦」が「看護師」、「伝染病」が「感染症」、「痴呆症」が「認知症」、「インディアン」を「ネイティブアメリカン」などは皆「ポリコレ」により変わったものなのです。

私の親の世代は、疑問も持たずに偏見的な言葉を使っていたように思います。このような表現の適正化は恐らくほんの3、40年の変化ではないでしょうか。

今では、当たり前の価値観として正しく言葉を選ぶ行動が自然になってきました。いえいえ、もしかしたら足元では「おっと・・・」と感じることがあるのかもしれません。

一種「エモい」と通じる軽いノリの「ポリコレ」。その重さは全然違いますよね。でも、いいんです。それを若者たちが正しく使ってくれれば、社会はもっと良くなるはずです。

「それエモいね」というように「それ、『ポリコレ』じゃネ」なんて若者が話す社会は嫌いじゃない。

これちょっとエモいでしょ(笑)
東京都現代美術館MOT)