安定の不安定 考えたくない将来 でも向き合わなければならない

ロシアによる一方的なウクライナ侵攻の長期化は、欧米各国の協調に影響を与えかねない状況になってきた。専制政治の暴挙に対する民主主義の対抗という価値観は共有しているものの、足並みが徐々にばらついてきたように感じる。NATOEUの求心力は鉄壁だろうか。そんな心配が頭をよぎる。同時に、インフレ、景気悪化、コロナ禍ストレスなどにより、各国の現政権に対する不満、スキャンダル、右傾化などがじわじわと進んでいる。

英、仏、米などの政権はとても不安定になってきた。(ドイツは昨年政権が変わった)客観的に見ると、統一教会スキャンダルなどがあろうが、日本が政治的に一番安定しているのかもしれない。自民党に代われる政党が全くないことが一番の理由だが・・・

世界はどうなっていくのだろうか。ペロシ米下院議長の訪台に対する中国の過激な反応を皆さんはどう感じるだろうか。任期間近の老人の卒業旅行ともいえる訪台。ロシアも中国も民心を束ねることに必死だ。綻びを繕う毎日。プロパガンダにメディアの統制。言論の自由は即体制の崩壊につながる。自由にさせないことがサステナビリティ―の確保なのだ。ペロシ氏の訪台は、実は習主席にとっては反米をたき付ける好材料だったのではないか。緊急演習も日米をターゲットにした当然の対抗手段。悪いのは日米なのだというすりこみ。残念ながらそれは成功しているように感じる。

米政権も、本音は訪台を止めてほしかった。こうなることは見えていた。米中の軍のパイプは閉ざされ、中国を益々孤立させることになってしまった。

関係は改善などできない。そうっとしておくことが最善の選択のはずなのに、パイプすら失いかねない。現状維持すらできない行動は、愚かに感じる。人権問題など放っておけないという価値観はよく分かる。しかし、力尽くで相手をねじ伏せることはできますか? できないことに挑戦せざるを得ない道を進んでいるだけだと感じざるを得ない。

東アジアも東ヨーロッパも地政学的リスクは増すばかりだ。

どちらかが折れるという解はない以上、対話で互いの立場を理解し、戦略的な互恵関係、言い換えれば共存共栄しか選択はないと感じる。

民主主義が世界に浸透するなど夢だと考えるしかないのではないか。

 

ナシーム・ニコラス・タレブ氏は「COURRIER JAPAN」でこう言う。「ウクライナ人が望んだのは、『良性』の国際秩序の一部になることです。『良性』とは、自己修正できるので、ちゃんと機能するという意味です。」そう、民主主義とは自分で修正できる。そのプロセスは凄く面倒だが、できるシステムなのだ。それに対してロシアや中国の専制政治体制にはそれがない。

「西側のモデルには、『反脆弱性と呼ぶ特質が備わっています。『反脆弱性』とはストレスやショックや激しい変動に見舞われると、かえって力が強くなるシステムの特質のことです。ロシアにはこの『反脆弱性』がないのです。」

国民が学んで、白血球がウィルスを滅亡させるような機能があるのではないか。専制国家は、内にこもって自ら厚い壁を作りウィルスという現実に向き合わない。脆弱なまま孤立し反骨精神だけ育んでいく。そんな感じなのではないだろうか。

 

考えれば考えるほど、混沌としてくる。僕たちが住む東アジアの平和は明らかに揺らいでいる。現状維持というある意味後ろ向きな解決が最善の解である現実を前にして、それすら夢になりつつある。

とはいえ、防衛費を大胆に増額するのか等の、現実解に国民は向き合わないければならない。いざとなったら誰も助けてくれないかもしれないのだ。一人一人が万が一を想像すべきだ。中国の戦闘機が自衛隊の戦闘機を攻撃したら? 演習のミサイルが沖縄県の島に着弾したら? 中国が台湾上陸を図ったら? 米国の航空母艦が中国に攻撃されたら? 中国の潜水艦が東京湾に入ってきたら? どさくさ紛れに北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したら?・・・ 全部あり得ますよ。日本はどうするべきなのか? 考えたことはありますか? 中国は絶対に自制すると言い切れる人はいないと思う。それはもはや能天気な夢ではないか。政府はもしそうなったらどうするかを考えれば考えるほど・・・  

さあ、どう向き合いますか? 自分は「関係ない」と言うのですか?

こんな日本を将来に残したい