書き換えられようとしている未来に向かって

加藤大臣の責任逃れ

加藤厚労大臣の「我々からすると誤解だ」発言が世間を騒がせましたね。相談センターや保健所がなかなかPCR検査をしてくれず、病院も含めてたらい回し状態になったなんていう話が、あれほど世の中を騒がせた原因が、37.5度4日連続などのクライテリアだったにも係わらずです。保健所に勤めている方々も呆れ返ったことでしょう。

以前にも書きましたが、人の上に立つ人(現場に指示を出すスタッフも同じ)は指示を出すことが責任で、あとは現場に任せた。それが上手くいかなかったら現場の責任だと逃げるようでは話になりませんね。上手くいけば自分のおかげ、上手くいなかければ部下のせい。最低の上司のパターンと同じです。そもそも目的は何なのか? それが分かっているのだろうか? 責任とは最終的に結果を出すこと。言い訳は一切できません。現場がどうなっているのかをハンズオンで把握する、上手くいくように適時指示を変える、必要な資源を手当てする、上手くいくまでやり続ける、現場を鼓舞するなどという行動力がトップには必要です。

本件は全くそうなっていませんね。この混乱の責任の多くは加藤厚労大臣にありますね。また、官僚とは法律を作る人と言われます。そう自覚している官僚も多いはずです。それに従いオペレーションをやるのは、関連団体か地方自治体。官僚の多くは法律は作ったら仕事は終わり、という感覚で仕事をしているのでしょうね。それが本来の分担かもしれません。しかし、カオスの中でその考えをベースにして一気に解決できるとは思えません。カオスから抜け出すためには強いリーダーシップが必要です。そのリーダーシップは誰の手にあるべきなのか? そう考えれば、加藤大臣が第三者的なコメントを吐く責任逃れを、誰もが許せないと思うのは当然です。

これだけ、現場の混乱がメディアに取り上げられ(それがかなり誇大化されているかもしれませんが)ているわけですから、知らないとは言えませんし、優秀な官僚が支えているはずですから、情報はいくらでも足元にあったはずです。都合の良い話には耳を貸し、そうでない情報には蓋をしていたのでしょうか。事実は分かりませんが、トップは意志さえあればすべて掌握できたはずです。責任逃れは甚だしく、常識的に考えれば解任は免れません。

 

■企業幹部の登用とHR

企業においても同様です。自分の権限と責任を矮小化し、さらに失敗した時に他人のせいにする(今回は誤解と言っていますが同じです)などという最低の幹部は、速やかに去ってほしいと思います。皆さんがそう感じていないとするなら、周りにあまりにもそんな人ばかりで鈍感になっているのかもしれませんよ。要注意です。そもそもそのような性根の持ち主を登用してしまう、評価眼のない上司やHRは大反省すべきです。上司がいかに登用したいと具申してきても、コーポレートの人事が過去の行動や評価を客観的に分析し、上司のまがった評価を正す意志を持ち行動すべきです。多くの企業においてHRの権限が弱すぎます。HRはもはや経営そのものと言っても良いと思います。企業は人で成り立っているのですから。企業の成長はHRが決めていると言っても過言ではないのです。どのような人材を採用し、育て、リテンションし、どのような人材ポートフォリオを将来の成長に向けて構築していくかで、企業の天井は決まってしまうようなものです。経営陣はどのように優れた戦略的HR部隊を擁するべきなのかをよく考え、リクルートも含め考えるべきです。もちろん言うまでもなく、人事の傲慢や暴走は絶対に許せません。経営陣との信頼関係は必要不可欠ですし、誰におもねることもない独立マインドも必要ですね。戦略的で清廉なHRは、企業にとってなくてはならない存在だと思うのです。

 

■コロナ禍の終息 

一方でコロナ禍がいつごろ終息するのかの見通しがないのが、僕たちを不安にさせます。人口の7割が抗体を持つまでは終息しないというのが、恐らく正しい科学的見立てなのでしょう。それに関して、慶応大学環境情報学部教授でありヤフーのCSOでもあるデータサイエンティストの安宅和人さんが、ブログでこう書いています。

https://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2020/04/04/190643

「ご存じの方もいらっしゃると思うが、コロナを含む感染症のための病床数は4/4現在、日本全体で4,000あまりだ。一度入院したら2週間はいなければならないとすると、年間52週で26回転、4,180 x 26 = 108,680 = 約11万人の治療が可能ということになる。入院が必要な重症化率が世界平均同様に5%だとするとこの国が現在対応できる感染者数は年間で11x100/5= 11x20 =220万人に過ぎない。これでは「もしキャパを溢れさせないとするならば」50年以上(57年+)の時間がないと今の人口(12,600万人)全員に免疫ができることはない。50%を目指すとしても29年だ。普通の経済的な感覚ではほぼ無限に続くことになる。

仮にこれが1万までCOVID対応可能な病床が増えても同じ計算で、免疫を持つ人を50%にしようとすると約12年かかる。3万まで増やしても約4年だ。つまり、向こう数ヶ月で沈静化するという可能性は中国のような完全シャットダウンを行って封じ込めない限り考えられない。この状況は他の主要国もそう変わらない。したがって"手なり"で考える限り、来年オリンピックが当初期待していた形でできる可能性は低い。

実際にはいま世界で知られているだけで100以上のワクチン候補の開発プロジェクトが進んでおり、6月にも動物治験に入るもの、9月にも人間での治験に入るものなどがあり、早ければ年始にはなにか生まれてくるだろう。ワクチンは当然のことながら社会の免疫獲得を劇的に加速する。とは言え、これが10億単位で量産され、世界中の人が打ち終えるのには少くとも数年はかかるだろう。経済的な主要国の50%までをターゲットにしても、現実的な楽観シナリオでも1-2年はかかるというのが普通の見立てではないだろうか。」

日本だけを見ても、今の病床数が増えなければ、抗体が50%の人にできるまでに29年かかるという。ベット数に拘束される方程式。医療崩壊をさせずに自然に抗体が浸透していくことは不可能なのです。どんどん感染しても病床とドクターの数に余裕があるから大丈夫という状況になるなら問題はないとも言えますが、今までの状況を見てもそのようになるとは誰も考えてはいまい。感染を抑制することなしに放置すれば、間違いなく医療は崩壊し、多くの人が亡くなっていく。さらに言えば、日本だけ見てもそのような状況であり、新興国ははるかに状況は厳しい。ロックダウンにより感染を食い止めた武漢では、また感染者が出たという報道の通り、移動が再開すれば必ず 第2波、第3波が来ます。

言うまでもなく、解はワクチンです。それが世界中で普及し人口の大半が抗体を持つまでは、去年までの当たり前の暮しには戻れないのです。感染爆発にならないように、それまでは耐え続けるしかありません。1年か3年か10年か…? 今時点では誰も分かりません。更に言うと、いつまた未知のウィルスが登場するかは分からないのです。温暖化によってそうなる可能性は高まっているとも言われます。僕たちは最悪の事態に備えなくてはなりません。世のリーダーは人々にそう伝えなくてはなりません。パリ協定を無視するような人がリーダーを語ってはならないのです。

そう考えると、僕たちは価値観を変えるしかありません。昔に戻るのではなく、新しい世界とはどうなるのかを想像し、それに合わせていくのです。それができる人が、新しい幸せを獲得し、できない人は懐古的な世界に閉じこもって、不平不満を言って生きるのです。最悪は利己的な価値観に飲み込まれ、自分さえ良ければよいと、閉じこもって生きることになるのでしょう。人間はコミュニティーの中でしか生きられません。新しいコミュニティーの中で、社会とどう繋がって生きれば良いのかを問い直しましょう

残念ながら多くの産業セクターは生き残るのが厳しくなります。新しい人生観やライフスタイルに合った産業が伸び、そうでない産業は衰退するでしょう。しかし、チャンスは必ずあります。

未来は書き換えられようとしています。そのような状況でも、新しい未来を考えている人はたくさんいます。きっと明るい未来はあります。

もともと人類史上最も変化の激しいと言われる現代、今までの延長線上に未来などなかったのです。それが、更にコロナ禍によって更に新しい文脈に書き換えられようとしているのです。新しい未来には、恐らく今まで経験したことのない困難が待ち伏せしているでしょう。しかし、どんなことがあろうとも、未来を創り出せるのは僕たちしかいないのです。科学者を中心とする人々の英知と、人類全員の愛と利他心さえあれば闘えるのです。

 

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愛さえあれば