グループシンクを避けましょう

すっかり春めいた天気が続きますね。私は今朝もスロージョギングをしてきました。すごく気持ちいいですよ。太陽のもとで体を動かすことが、心身にポジティブな影響をもたらすのは明らかです。さて、すっきりした気持ちで書きますね。

 

グループシンク」という言葉を知っていますか? 日本語では「集団浅慮(せんりょ)」です。実は最近知った言葉なのですが、たくさんそんなシーンを見た記憶がよみがえる、いわゆる「あるある」なので、皆さんへの問題提起の意味も含めて今回書きますね。

グループシンクとは、グループで何かの同意形成をしようとする場合、様々な意見を吟味したり議論したり、本来すべき判断や評価を適切にすることなく、愚かな決定をしてしまうことです。日本には、「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がありますが、そうとは言えない、という事実を指すと言ってもいいでしょう。

想像してみてください。議論を長時間している余裕がない場合などに起きやすいことが容易に想像できますね。例えば、強いリーダーシップを発揮する「うるさ方」「長老」「支配者」に異論を唱えることを避けるケース。こんなことを言うと怒られそうですが、オリパラ組織委員会の森元会長などが当てはまりそうですね。リーダーが言い出したら黙るしかない。そんな空気が蔓延している部署はありませんか? 

また、以前から何度も書いていますが、いわゆる閉鎖的な「ムラ社会」などは完全にそうですね。オッサンが牛耳っている場合が圧倒的に多いでしょうが、異論などはさもうなら、その社会に存在できないリスクにさらされますね。同調エネルギーが蔓延しているわけですね。平和に暮らすためには黙っているのが良いという感じでしょうか。

こんなケースもあります。メンバーの中に見るからに専門家がいて、その人の意見なら間違いないと思い込み、思考することをやめてしまうケース。場合によっては意見を言うことすら失礼だと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。これもあるあるですね。

また、上司が何を求めているかを想像することが、最も大事な価値観だと思い込んでいる集団(忖度集団)もそうですよね。上司がどれほどポンボケな結論を考えていようが、考えることを止めてしまった部下たちは、何のリスクも感じすらしませんね。そんな集団は早晩地獄に落ちますよね。これは実に多いパターンではないでしょうかね。

また、自分たちは常勝集団だと勘違いして(たまたま戦う相手が弱かっただけ・・・)、自分たちの戦略を過大に評価してしまう「うぬぼれ(自画自賛集団」も、すぐに崖から落ちること間違いなしですよね。

このような集団が往々にして陥ってしまう罠が、自己都合です。出したい結論は既に匂っている(匂わせてある)ので、それに都合の悪い事実やデータは取り上げません。意図的に隠す場合もあるでしょうし、見えなくなっちゃうこともありますね。これも凄くありがちですよ。

どうでしょう。もっともっといろいろなパターンがありそうですが、それはここらにしましょう。あなたの組織が、こんな「あるある」がはびこっているなら完全に瀕死の重傷です。時々はそんなこともあるかな~だったら、何とか軽症のうちにその流れをストップさせましょう。重症患者の場合は荒治療が必要ですね。トップを変えましょう。

軽症のうちに、次のような手を打ちましょう。

自分が絶対的なリーダーなら(と部下から思われがちだったら)、オーラは常に消す。会議でも黙る。どんな意見が出ようが笑顔を絶やさない。

ファシリテーターにインクルーシブな人を登用する。どんな意見も決して否定せず、むしろ大歓迎の嵐を演じる。意見の戦いは前向きな「討論」と表現して称賛すること。

参加者全員に公平に意見を言う機会を与える

会議は正解を導き出すことと同じくらい、プロセスを大切にすること。プロセスが充実していることで、参加者は希望を感じることができる。

人事ローテーションは積極的に行う。優秀層を積極的に異動させる。キャリア採用でその部署や会社の文化に染まっていない人を積極的に採用する。その人には絶対に染まらないよう動機付けし、その人の異論を大歓迎する。もちろん社内の他部門からの異動も大歓迎。

そんなことがすぐにできなければ、会議メンバーの中の適任者に、意図的に反対意見を言う役を演じてもらう。もちろん本心でなくてもよい。

あえて、本来のメンバーでなく他部署のメンバーに臨時で入ってもらって、オブザーバーとして多様な意見を言ってもらう手もありますね。

そもそも会議メンバーとして参加している義務とは何かを最初に宣言し、それができない人は参加させない。これは少なくともトップが染まっていないことが前提ですね。

いま、D&Iが叫ばれている理由がこんなところにもあるのです。多様な人材が集い、経験や価値観を活かした活動が制限もなく行える職場、それを摩擦なく包み込める文化が必要不可欠なのです。

グループシンク。絶対に避けましょう。「集団浅慮」って、なんて情けない言葉でしょうかね。

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“皆で渡れば怖くない”ってか! バカもの~w

 

“Insight”と“Foresight”

激しい変化の中で、チャンスを見つけ出した瞬間に鷲掴みする。そんなことがいつもできたらいいね。しかし、見たことのないものが目の前に現れたとき、正しい判断が瞬時にできるかどうか。例えば、アライアンス(提携やM&Aなど)の候補は突然現れる。名前さえ聞いたことのないスタートアップの門を躊躇なくノックする。そんなことすら考えたことすらない。事業売却のチャンスは今かもしれない、なんて想像すらしたことがない。そう、ほとんどの企業は、そのようなチャンスやめぐり合わせをどれだけ失ってきたことか。逆も言える。初心(うぶ)過ぎて、もしくは何も考えていないために、どれだけハズレを掴まされたり、激安で買い叩かれてきたことか。

実はそんなチャンスは日常的に訪れる。そんなチャンスをものにできるかどうか。経営者や企業幹部に必要な能力は、「目」だ。すなわち、「洞察力」と「先見性」、“Insight”と“Foresight”だ。言い換えれば「広く見て、深く見て、先を見る能力」だ。それらが何よりも必要になる。それに加えて、チャンスを逃さないビビッドさスピード。それらは感性ともいえるしセンスともいえる。できない人は頑張ったってできない。チャンスは目の前を通り過ぎていくばかりだ。気が付いた時にはあとの祭り。

自分に問いかけ続けよう。「今私は広く見て、深く見て、先を見ているのだろうか?」と。

 

もうひとつ恐ろしいものが「バイアス(固定観念」だ。典型的なのが、「できないと思い込むバイアス」。例えば、LSIチップはIntelと決めてかかる。今やそんなのは完全にバイアス。Appleだって、AmazonだってHuaweiだって皆自社で作っている(実際はファブレスだろうが)。論理的に足元の自社の能力を考えると、踏み出せない、決められない。それは強い思いがあるかないかの問題。経営者や企業幹部が示す強い使命感情熱。それらに社員が共感するかが最も重要だ。

だからこそ、トップが示す「洞察力」と「先見性」が何よりも大切だ。「将来、きっとこうなる。だからこうしよう。必ず実現できる」そのストーリーを描く能力、すなわちセンスメイキング能力が問われる。

できないと思うバイアスを乗り越えて行動する。チャンスは今。今ここで行動するかどうか決意できる人が真のリーダーだ。誤解しないでほしい。掴まず手放すことが正解なことも多い。GoかNo goか。決めるのはあなただ。

チャンスは目の前をたくさん通り過ぎる。多くの経営者は通り過ぎたことすら気付かない。同時に、恐ろしいことに、破壊的イノベーター(ディスラプターは気付かないうちにあなたの隣に座っているのだ。

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いつ誰が襲ってくるのか。ホラーストーリーを書ける能力が問われる。

 

先生の傲慢 と 川柳

先日、与党の国会議員が会食そして銀座のクラブを訪れたこと(一人だったとか飲んでいないとか言い訳を言っていましたが)に批判が集まりましたね。結局役職を辞任する(その後結局は議員辞職や離党)という幕引きとなりました。国民の見本たるべき人たちの体たらくさにはがっかりさせられますね。私たちが選んだ代表です。

テレビで心理学者の中野信子さんが、アナウンサーの質問に答えていました。「地位の高い人は、『私は許される』と思う」のだそうです。例えば「高級車に乗っている人の違反が多い」とか。やりたい放題のトップはたくさんいる。自分のために法律を変えるとか、嘘をつくとか、頬被りするとか、見下した態度をとるとか・・・ 最低ですね。

人間は弱い。地位の高い人になりたい。地位の高い人だと思われたい。その気持ちがあるから、自分が地位が高いと思うと、自分は皆の目指すべき人だと勘違いして、傲慢になる。その人の中身ではない、地位がそうさせる・・・ これが恐ろしくゆがんだ人間を作る

よく昔から言いますよね。「先生」と言われる人にろくな人はいないと。これはこれで凄い偏見ですが、言い得ている気もしないではない。ごく一部の人がそういうバイアスを作ってしまったのでしょうね。代議士、教師、医師、弁護士などなど。皆から(本心かどうかは別にして)「先生、先生」とおだてられ、勘違いしていく。先生とおだてる側も弱みがある場合が多いのでしょうね。助けてもらいたいのですね。発注して、「責任を持って納品してくださいね」という成果責任という契約関係を持たない職種ですよね、皆。そう、委任なのです。「息子をよろしくお願いします」「病気を治してください」「裁判で勝つように弁護してください」「補助金を付けてください」・・・成功責任のない仕事。裁判で負けようが、希望する学校に合格しまいが、「頑張ったんですがね」と言えば済まされちゃうわけです。 頼む側は本気でやってほしいとお願いすることしかできない。中には、お金で本気を引き出そうとする輩も出てきちゃうわけです。

傲慢。僕としては最も避けたい人間性。だって、そういう人が一番嫌いだもの。自分は絶対にそうなりたくない。いつまでも謙虚さを忘れないで生きていたいものです。

 

先日発表された「サラリーマン川柳」優秀100選にこれがあった。

会社では 偉そうなのねと 妻が言う

この「偉そうなのね」というのは強烈にネガティブなトーンだと思いますよね。そうなんです。そんな人であってほしくないんですね。

頭に、組織委員会の森会長の顔が浮かんだ。

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 子供たちの初心な価値観に恥じない行動をしたいものです。

ワクチンと尊敬する冒険者

ワクチンによっては、例えば南アで発見された変異種には効かない、などと一部で報道されている。これが真実かどうかはさておき、変異種はこれからも多数出てくるのは確実で、中には本当にワクチンが効果を出さないことも多数出てくるだろう。そんなことを考えていたら、以前知り合った冒険者のことを思い出した。その話に入る前に、ワクチンの話から。

 

■変異種への対応①

世界の研究者はCOVID-19にどう闘いを挑み続けるのだろうか。僕はもちろんその分野の研究者でもないし知見もない。しかし、少し勝手な想像を巡らせてみよう。

これからもどんどん変異種が出てくるとする。その一部は既存のワクチンが効かない。そう仮定すると、その対応策は2つあるのではないか。

その一つは、その都度短期間で新しいワクチンを開発・製造するという考え。ご存じの通り、創薬は実際リリースされる前に長い時間を要する。研究室の中で論理的に効果がある薬などが開発されたとして、それをすぐに量産できるわけではない。動物実験を行い、効果と安全性を立証し、そして人間で同様の実験をする。それにも3段階ある。もちろん、慎重にそして必要なデータを蓄積し安全性や効果を証明しなければならない。そして承認申請を行う。日本の場合は厚労省に対して行う。通常その審査だけでも1~2年要すると言われる。必要なそのプロセスをよく聞く「治験」(国の承認を得るための臨床試験のこと)という。このように、薬などがリリースされるまでに5年以上はかかると言われる。開発期間はAIなどを使って短縮化が進むが、「治験」は慎重に行われなければならないので、時間はどうしてもかかる。今回のワクチンの開発は、国を挙げて超短期間に「治験」を進めリリースにこぎつけた。また、承認は国単位で行われるため、日本では各社のワクチンはまだ承認されていない。今までもいろいろな薬で「治験」が適正に行われていないせいで、リリース後に効果が乏しいとか、一部の人に強い副反応が出るなどということが、あったと記憶する。今回は各国で大量の「治験」を一気に行ったわけだが、一部では65歳以上に接種を勧めないなどいうワクチンもあるが、それは65歳以上の「治験」データがない(あるいは少ない)ということを示しているだけだ。(治験を急ぐためにターゲットを狭めたのかもしれない?)

というように、次から次へと新しいワクチンを開発することは、今までのやり方ではできそうもない。もしイノベーションを起こせるなら、「治験」のプロセスをAIなどのテクノロジーによって革命的に短縮できないか、というぶっ飛んだ案があるのではないか。ふふ、私の創造の話ね。もちろん、ワクチンの開発自体も、今回世界で初めて実用化されたメッセンジャーRNAのようなイノベーションが、更に起きることも期待できないものか。いずれもテック企業の技術力が必要不可欠だと想像する。

 

■変異種への対応②

もう一つが、万能ワクチンができないかだ。そんな夢のようなことができるわけがない、と思ってしまったらお終いだ。人類のイノベーションはそんな夢を実現してきたではないか。

 

■尊敬すべき冒険者

私はある研究者のチャレンジ話をご本人から聴き、すごく感動したことがある。それは、山口大学の岡学長だ。もともと同大学の医学部教授であり、癌の免疫治療のオーソリティーだ。

昔、ペプチドによる癌の免疫理治療の研究成果を、アメリカの学会でプレゼンした時の話。研究者のプレゼンがスケジュールに従って続く。彼のプレゼンが始まると、それまで満席だった部屋がガラガラになった。そう、彼の研究は誰の興味も引かなかった。実現できるわけのない夢の話だと、笑われていたのだ。彼はその悔しさをばねに、研究をつづけ、ワクチン開発の道を切り開いた。当時私が勤めていた会社と共同研究を進め、ついに新会社を起こしたのが2016年のことだった。現在でもその会社は「治験」を続けている。その記者会見の模様が下記の記事。

私たちは、そのようなフロンティアを応援することしかできない。少なくともそのようなぶっ飛んだチャレンジを、否定することなく見守っていたいものだ。

多大なコストや時間をかけることや、実現できそうもない荒唐無稽と思われる(それも勝手なフィルタリングだが)ことに、向き合い続ける人を受け入れないという愚かな考え・価値観を持たないようにしたいと思う。

人類を救えるのは、科学の力だと痛感する。

 

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「不可能を可能にする挑戦は勇気ある冒険者によって成し遂げられる。今回の創薬事業への参入は、まさに当社にとって新しい挑戦になる」と記事にあるが、実は私が話したのはちょっと違う。「勇気あるチャレンジャーが不可能だと誰もが思う挑戦を成し遂げる」と言って、岡学長を尊敬を込めて紹介したのだ。上記の話を聞いていたんでね。

 

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冒険者はゴールまでにどのような困難があるかなんて、考えていない。

 

共感が連鎖する、そして創造を生む

共感経営」(野中郁次郎勝見明 共著)を読んだ。そこにこうある。

「人は共感すると、なぜ利他行動を取るのか。進化の過程で、利他主義が生まれる集団は、より多くの成果を上げることができるので繁栄し、利他主義の希薄な集団は淘汰されていく。これが進化の法則であるとすれば、経営における共感の重要性も説得力を持つのではないでしょうか」

社員同士が共感でつながっている企業は繁栄し、そうでない企業は淘汰されてもおかしくないのだ。助け合い補い合い、刺激しあい、成長していく集団が企業という生命体なのではないか。

そう、チームという価値観が大切なのだと知らされる。「外から相手を分析するのではなく、相手と向き合い相手の立場にたって、相手の文脈の中に入り込んで共感すると、視点が『外から見る』から『内から見る』に切り替わり、それまで気づかなかったものごとの本質を直視できるようになる。」

我々はどうしたらいいのか。行動によって得られる経験はすべて知の源泉だ。コーチングの原則は行動を変えること。結果が行動に現れるのではなく、行動がスタートという価値観。行動を変えることによって正のスパイラルが始まるのだ。そして、新しい自分が創られていく。まずは行動なのだ。目の前の毎日を変えるのだ。 

社内にコラボレーションが生まれるように、プロアクティブ行動しよう。何かを待つのではなく、自分できっかけを作ろう。決して、決してリアクティブになってはいけません。難しいことじゃない。

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どの道を進もうが、最初は一歩から

 

脳が作り出す幸せ~毎日を充実して過ごす大切さ

東北大の滝教授の話に勇気づけられる。

同氏はこう言う。「脳の神経細胞は加齢により減っていく(困ったものだがヒシヒシと感じる(涙))。しかし、細胞同士を結ぶネットワークを増やすことはできる(お、いいじゃないか)。このネットワークが大切なのだ」 カッコ内は僕の心の声w。


即ち、大人の脳は成長できると言うのだ。記憶を司る海馬の隣に偏桃体があるのだそうだ。その偏桃体が好き嫌いを判断する。「好きだとか楽しいと感じると、海馬が長期記憶として保存する」また「偏桃体がポジティブな判断をすると、やる気や幸福感をもたらすドーパミンが分泌されて、『報酬回路』と言われる神経回路を巡り、脳が活性化して意欲や集中力が高まる」のだそうだ。なんだか、可能性を感じるでしょ。

 

更に「こうしようとか、こうなろうという主体的マインドセット積極的に行動していくことで、脳のポテンシャルが最大限に引き出される」のだ。

 

こうしよう、こうなろう、ということ考えることをコーチングではとても重視する。それを「Doing」とか「Being(またはBecoming)」という。「何をしたいのか」とか、「どうありたい」のかと真剣に向き合うことがとても大切なのだ。そして「それに向かって意図的に生きていく」ことが人生を充実したものに変えるポイントだ。さて、同氏はそいうしてプロアクティブに行動することが、脳のポテンシャルを最大限に使うことになると言っているわけだ。

 

私は先日「充実はプロセスに宿る」と書いたでしょ。日々充実感を味わうことができれば、海馬がメモリー機能を発揮しその良き記憶を残してくれる。更にポジティブに考えれば脳が活性化されて集中力が高まるのだ。やる気に溢れ幸福感に満たされる。だから、日常のプロセスにに隠れがちな充実を味わうチャンスを逃してはならない。あなたの脳が幸せを感じ記憶してくれるチャンスを逃す手はないその積み重ねが人生を作るのですよ。

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「好きとか楽しい」が人生を充実させる。そうなるように脳ができている。

 

オードリー・タン氏の包摂

昨年話題になった人の一人が、台湾のIT大臣のオードリー・タン氏だ。同氏のインタビュー記事などに触れると大変インスパイアされる。IQ180の天才で、30代で入閣と聞けば、さぞ切れ味鋭い強いリーダー像を思い描いた人たちは、一様に優しさに驚くという。それは、生い立ちによるものなのかもしれない。同氏がトランスジェンダーであることは周知の事実であるが、天才ゆえに子供のころから虐められていたとか、先天性の心疾患を持っていて、発作を予防するために普段から感情をコントロールすることを余儀なくされて育ってきたなど。そして、20歳の時に自分がトランスジェンダーだと悟り、性転換手術を受けたも、その性格形成に影響しているのかもしれない。

インタビューした人が感じるのは同氏のインクルージョン包摂、即ち包み込む力だ。「誰も置いていかない」というリーダーシップ。「ついてこられる人だけついてこい」というような男性性の高い強いリーダー像の対局だ。デジタル化もインクルーシブだ。とかくお年寄りに優しくないデジタル。それは開発サイドの問題だと寄り添う姿勢を崩さない。

同氏は毎週決まった曜日に、ある公共施設(社会イノベーションラボ)に足を運び、お年寄りや子供たちも含めた市民と話をしているとのことだ。そこで得た市民の困りごとを解決したいのだ。ハンズオンなくしてインクルージョンは成り立たないと痛感する。

皆さんリーダーはすべての部下や関係者に対して、「我々の存在価値は・・・なのではないか」「誰も置いていきはしない」「一緒に歩んでくれないか」と宣言できているのだろうか。それは一人一人を誰も第三者にせずチームの一員として認め、期待し、自律を促し、自覚を促し、皆の心をつなげ、毎日のすべての行動に充実感を感じ、人生を豊かなものにすることにつながるのではないか。それは、最も居心地の良い空間ではないだろうか。