ヤルタ2.0と企業の未来

■ヤルタ会議

皆さん「ヤルタ会議」をご存じだろうか。私は歴史通ではないが、多少の知識はある。「歴史」で学んだしね。あらためて少し整理をするとこんな感じです。

第二次世界大戦末期(1945.2.4~2.11)に当時ソ連領のクリミア半島のヤルタで開かれたアメリカ、イギリス、ソ連による首脳会議のこと。参加者は、フランクリン・ルーズベルトウィンストン・チャーチルヨシフ・スターリン。歴史に名を残す超大物だ。

会議の目的は、第二次世界大戦後の世界秩序の再設計です。要するに、戦後処理と領土分割、そして国連創設です。その中で、ドイツを連合国で分割占領すること、ポーランドや東欧諸国の扱い、そしてソ連の対日参戦などが決まったのです。

この会議によって、戦後ヨーロッパやアジアの地政学的秩序が決まってしまったのですね。たった3人で。

その後大きな影響を与えた一つが、民主主義陣営がスターリンに妥協したために、東欧や諸国が共産化したことだ。具体的には、ポーランドチェコルーマニアブルガリアを事実上ソ連の影響下、衛星国化することを容認してしまったのだ。米英は戦後世界で民主主義、自由主義の普及するという志を持っていたが、ソ連との妥協で共産主義が拡大し、独裁・弾圧・人権侵害が広がったのだ。裏目に出たわけだ。洞察力が欠如していたと言われてもしょうがない。これが、後の「鉄のカーテン」「冷戦」の始まりとなり西側と東側の対立構造を生んだといわれる。後の朝鮮戦争ベトナム戦争・中東の対立構造などなど多くの紛争の原因を作ったのも、ヤルタ会議での米英の妥協が原因だったと言えるだろう。

日本にとっては、ソ連が対日参戦と引き換えに、南樺太、千島列島などの日本の領土の割譲を認める密約があったことが後に知られた。ソ連が参戦したのは、1945.8.8で、日ソ中立条約を破棄し宣戦布告したのだ。ソ連はほぼ棚ぼたで日本の領土の一部を奪ったのだ。ソ連は、日本の降伏は(原爆ではなく)ソ連の参戦のお陰だと主張してきた。今も続くソ連(ロシア)の都合の良い解釈。自国の利益の為なら強引なロジックをあたかも当然のように言い続けるのだ。ずっとそう。

結局ヤルタ会議の問題は、「大国による密約と妥協」で自国中心の秩序や勢力圏分割を進め、そこに住む人々や小国の自立、意志、民主主義の理想や人権などを軽視したことにあるだろう。

その後の世界の混乱は、ここから始まったと言ってもいいのではないか。

 

■ヤルタ2.0

結局3国だけの論理で決めたことで、将来の見通し、どんな世界を作るべきかのビジョン、平和の本質などが欠如していたと思う。自国優先、合理性優先(さっさと決めたかったのだろう)、何より地政学的洞察力が欠如していたのだろうと思う。

そして、民族自決は尊重されず、火種はずっと残りその後の紛争や分断につながっていった。

そして、今やその後出来上がった国連では常任理事国が戦争を自ら仕掛ける始末で、全く機能していない有様になってしまった。

その挙句、トランプ氏とプーチン氏が勝手にウクライナの未来を決めてしまう可能性すら出てきた今、またまた大国による密約で勝手な世界秩序を決めてしまうリスクすら出てくる状況すらあり得、「ヤルタ2.0」と言われる状況になってしまった。

もちろん、その可能性を潰すためにヨーロッパ各国がトランプ氏にお世辞を言いながらつなぎとめている。そこはヨーロッパは結束しているように見える。

プーチン氏は完全に舐め切っている。彼が引くことはない。未来は明るくないと感じる。ウクライナの悲しい結末は見たくない。

 

企業のヤルタ

このような大国が間違ったビジョンで誤った行動を取ってしまうようなことは企業でも起こり得ると思っている。例えば、CEOが子飼いの経営企画メンバーとだけで、他の誰にも相談せず構造改革プランを作るとか、買収プランを決めるとか、グループ再編を決めるとか、合併を決めるとかの大きな変革(?)を実施するなどたくさんの事例があるだろう。

CEOや取り巻きが事業実態を理解していない、顧客とのコミュニケーションがない、事業ポートフォリオの将来に関しての議論が全くされていないなどの状況で、ヤルタ会議のような決断がされてしまうリスクは常にある。

CEOは自分が一番分かっていると勘違いしているケースも多い。タウンホールミーティングで如才ないやり取りがあっただけで誤解するCEOもいるだろう。部下がイエスマンばかりの場合も危険だ。取締役会が機能していない場合ももちろん危険極まりない。玉座に座ることは勘違いの媚薬を飲むことと同じだ。危ない橋を渡って業績の帳尻を合わせた事例など枚挙に遑がなかってではないか。

組織に必要なのは、オープンなこと、最小限の上意下達、ステークホルダーとの密なコミュニケーション、マーケットをとことん知ること、世界を見ること、支配型ヒエラルキーを絶対に避けること、DE&Iを推進することなどだ。この本質的カルチャー問題に向き合わなければ企業の未来はないと思ってほしい。

ヤルタ会議が絶対に悪なのかという問いもあるだろう。実はそんなことはないのだ。現場の意見を聞けば絶対に反対されることはたくさんある。保守的な人に相談しても変革は実現できない。痛みを伴う変革もある。全員をハッピーにできないケースがほとんどだろう。情報が洩れて買収が失敗するケースもある。よく考えるべきだ。

経営者の力量と覚悟が何よりも優先される。だからこそ、信頼に足りる経営陣を選ばなければならないし、公正なガバナンス体制を確立しなければならない。

皆がよそ見をしている間にリーダーが暴走するかもしれない。
リーダーは常に正しいとは限らない。皆さんの組織はオープンですか?
(3歳のガールフレンドと共に)