強すぎる男性性 企業カルチャー変革の視点

以前に男性性・女性性の話を書きました。今日はその続きとして、分かりやすく男性性の強い社会のことを書きたいと思います。

以前に紹介した通り、ホフステードの調査によると日本は世界で最も男性性の強い国です。これは多くの皆さんが実感していることだと思います。これはとても残念なことなのです。

女性社会研究所代表の板敷ヨシコ氏によると、男性性指数が高いと社会では次のような文化的特徴が出るとのことです。こういう視点が優先されるという意味ですね。

・達成、競争、結果 

・功績

・責任

・自己主張

・選別主義

・成功への物質的報酬

あるべき論を下地にして、一番になりたいという表れですね。

 

一方で、男性性が低いとこのような感じです。

・調性(これは難しい考え方ですが、音楽が主音だけではなく、和音で形作られているときの秩序、のようなもののようです。分かるような気がしますね)

・謙虚さ

・弱者への思いやり

・連帯

・普遍主義

・生活の質の高さ

片意地を張ったストレッチ的べき論ではなく、他者に対しても、自分の現状に対しても受容的な価値観だと想像できますね。

 

男性性の強い国の特徴は、「弱者を思いやることはなく、弱者も自分で何とかすればよい」という考えにも表れています。また、男女平等を実現する方法として、「女性が男性側に寄る(リーンイン、男性化する)必要がある文化で、男性性指数が低い国では、男性が女性側に寄ることで男女平等を目指しています」前者は日本が典型で、後者は北欧諸国がその典型です。

少し説明を要するのは、競争です。男性性指数が一番高い日本は、「目標達成や一番になるための激しい競争が繰り広げられている社会であることを示しています」 しかし、日本の場合は「西洋的な個人間の競争や自己主張的な競争ではありません」 実は日本は個人主義指数が低い国なのです。即ち集団主義なのです。これは、日本人の競争が個人の競争ではなく、集団の競争であることを示しています。集団のためには自己犠牲を厭わず、上司によって与えられた目標を達成するために「わがままを言わずに頑張る」のです。即ち、「日本企業では、従業員が最もやる気を出すのは、ライバル集団に勝つためにチームで闘っている時」なのです。これも日本の典型的な特徴だと感じますね。

 

男性性が高いと、仕事が人生と一体化したり、集団主義でもあることから、出身校や所属する企業などがアイデンティティになります」 これもあるあるですね。

ホフステード・インサイツでは「このような生き方と、長時間労働は男性性の表現の一つであり、女性が社会的立場を得るための最大の障害になっている」と指摘しています。高い男性性は結果を求めるし、目標達成のためには仲間に迷惑をかけまいと、汗と涙と根性と長時間労働を厭わないことを是としてきたのです。

また、こんなパーソル総研の指摘もあります。欧米はMBAなどのエリートコースの人だけが幹部になれる時代が長かったのですが、日本にはそのようなコース分類はほぼなく、頑張ればだれでも幹部になれる社会です。だから、先ほど書いたような男性性を表に出して頑張るしかないということが当たり前の価値観になっているのです。だから、幹部になろうとすると女性も男性側に寄せるしかない時代が長かったのです。これもなるほどと納得できますね。

これでは、女性だけではなく現代に生きる若者にそっぽを向かれるのは当然でしょう。

 

昭和、平成、令和と生きてきた僕はこう感じます。このような価値観やカルチャーは昭和の時代は当たり前だったし、誰も不思議に感じてはいなかった。しかし、現代ではその姿は一掃されていると思っている人も多いかもしれません。しかし、考えてみてください。近年でも数多く報道されてきた大企業の不祥事の底流には、目標達成圧力や失敗はあり得ないという現場の事実に向き合わない幹部の強い男性性が、絶対に一因になっているのです。

 

男性性と女性性はどちらが良いかという問題ではありません。何よりも大切な価値観はそのバランスなのです。最も大きな問題は、「強すぎる男性性」です。企業の中で相変わらずのさばっているこの問題は、女性が男性に寄せることで解決するのではなく、男性性が強い側(ほぼ男性)が変わっていくしか解決することはできません

残念なことに、パーソル総研の指摘では、出世のために努力をしてきたという意識が高い経営者ほど、ダイバーシティー信念が低いのです。これが男性性なのですから。この事実を考えても、男性が変わっていくことが何よりも大切なことが分かりますね。

 

ダイバーシティーなきイノベーションなし。分かっているようで変われない日本。日常のちょっとした言動や行動、そしてそれを培っている価値観を振り返って変わる努力を続けましょう。

カラフルな社会がいいね