ロシアから学ぶ

アンドレア・ケンドール=テイラー(新アメリカ安全保障センター上級研究員)が言っている。

ウクライナはこの夏に北部で反転攻勢を成し遂げましたが、彼らのフェイントとも言える戦略が奏功したのは事実とはいえ、なぜロシアは衛星を持っているのにもかかわらず、的確な行動ができなかったのか。ウクライナ軍の動向を読むのに十分な情報を獲得できていなかったのか。ウクライナ国防省の高官はロシアの偵察能力が想像以上にお粗末だと判断しているようです。どうやら、いままで西側の人々は、ロシア軍を過大評価してきたのかもしれません。どうもロシアは諜報活動や偵察活動ができていないだけでなく、チャンスを上手く利用できないと思っているようです。

その背景には軍の指揮統制や文化が大いに関係しているという。ウクライナ軍は現場の兵士に大きな裁量を与えているそうです。軍の階層の間に信頼関係があり、指揮命令系統の下層の兵士にも現場で判断を下す権限を与えているというのです。ロシア軍はその逆で柔軟性がないという。部下を信じていないので仕事を任せることができないのです。

それは、プーチン独裁的な行動を見れば想像がつきますよね。軍人でもないのに軍の劣勢に怒り、自分で指示をする。そして、成果を出せない人を次々に代えてきたのですから(11/6にも軍トップを解任したらしい)。それは伝染病のように現場に広がっていることでしょう。そして、最近の動員により、素人軍人が戦線に送り込まれ、ますます上官は苛立ち結果を出せずに敗走せざるを得ない、という連鎖が生まれるのではないでしょうか。

プーチンの独裁は今回の戦争から始まったわけではなく、ずっとそうだったわけです。今回苛立ちから深みにはまっているだけです。同氏はこう言います。「独裁体制では、優れた(事実という意味だと思う)情報がトップまで上がってきません。忠誠がすべてのベースにあるシステムでは、ボスに事実を伝えてもキャリアの得になならないからです。」 そうです、「プーチンは長い独裁体制の中で積み重なった『弱さ』を考慮に入れそこなった」のでしょう。

 

前にも書きました。企業も同じです。VUCAの時代には独裁的な指示命令すステムでは生き残っていけません。幹部は、人材を育成するとともに、場数を踏ませて、権限を委譲していく道しかないのです。近年日本においても、業績至上主義のトップダウンの企業が機能不全に陥り、検査不正や、判断ミス、非合法な経理判断などが行われてきました。それは以前に書いたGEですら同様でした。耳障りの良い情報にしか興味を示さない幹部はどの会社にもいます。部下たちの行動は歪み、清廉さは失われ、リスクマネジメントなど吹っ飛びます。ホラーストーリーを考える人は疎まれるのですから。

あなたの企業、部門は大丈夫ですか?

遠足中のたくさんの小学生たちに会った。小集団に分かれ気ままに登っていた。
先生も生徒を信じて任せているんだね。
右上にぼんやり見えるのが富士山 @高尾山頂