新年度スタートから100日が経とうとしています。組織変革は進んでいますか?

新年度の幕が開き最初の四半期が過ぎようとしています。ミッションが変わるなどして、組織の問題を理解し変革に向き合っているリーダーも多いと思います。そこで、今回は組織に何らかのメスを入れようとしている方々に、ヒントになることを少し書きたいと思います。残念ながらMECE(漏れなくダブりなく)には書けません。思いつくまま僕なりのポイントを書きますね。

 

一つ目が個人主義の撲滅」です。多くの企業がジョブ型に移行しつつある中で、デメリットが出ないように苦労しているリーダーも多いと思います。その論点は、個人主義的な業務遂行になりかねないというリスクです。ジョブディスクリプション(職務記述書)により、個人の目標や責任を明確にするわけですが、それは必ずしも仕事が個人で完結することを示していいるわけではありません(仕事の種類によっては個人完結はあり得ますが)。ほとんどの仕事はチームで行われ、そこに個人完結文脈のジョブディスクリプションを持ち込むと、チームの協創を阻害する可能性が高いのです。チームとは1+1+1≧3になることです。一人一人の能力やノウハウが補完関係にあり、補い合うことによってより大きな成果を出すことです。だから多様性が何よりも大切なわけです。金太郎飴では1+1+1≦3になるわけですから。そのためには、チーム員の信頼関係と利他心が何より重要です。そしてその関係を作り上げるために日常的なコミュニケーションと自己開示が必要不可欠です。コミュニケーションなきコラボレーションなしなのです。この精神をチーム員と共有することにリーダーは腐心すべきです。例えば、チームの中に相互にエールを送れる関係を作り出すのはリーダーの器とも言えます。

 

二つ目が「過度なGRIT(やり抜く力)を止める」です。決めたことは何が何でもやり遂げろ。できるまでやり続けろ。という類のメッセージや命令は行き過ぎると多様な問題を生みます。もちろん、簡単に諦めたり無根拠に目標を下方修正することを推奨してはなりません。しかし、過度な目標必達は、見つめるべきマーケットの変化や、プロジェクトのリスク変動に蓋をすることに繋がりかねません。近年多発している名門企業の検査不良などはこの問題に端を発していると考えられます。変化を察知しリスクを洞察し、実現可能なプランに変え続けることが、新しいリーダーの使命だと思います。リーダーは常に事実に向き合わなければなりません。いわゆる三現主義(現場、現物、現実)の必要性がここにあります。しかし、リーダーがいちいち指示や命令を出すマイクロマネジメントをすべきだと言っているわけではありません。権限委譲とハンズオンのバランスを考えてください。企業変革のスタートは、組織カルチャーの理解です。リーダーは対話によって組織カルチャーを理解するよう、まず努力をしてください。新しいリーダーは期初などに強いメッセージを出しがちですね。組織カルチャーを理解しないまま、目標必達などの尻を叩くようなメッセージを安易に出さないことです。メッセージの文脈を注意して発信すべきです。

 

三つめが「一見相反する『前例主義』の撲滅と『歴史に学べ』を両立させる」です。新しいリーダーの多くは、「前はどうやっていたのか?」を確認し、その前例を踏襲しようとします。考えたうえで、それがベストの選択だと判断するのならまだしも、「特に問題ないなら今までのままでいいか」と判断してしまうのは、明らかに思考停止です。本当に問題がないのか? あるいは、大きな問題にはなっていないものの、もっとより良い方法があるかもしれない。考えてみるか。と深堀を試行してみるのが、リーダーの使命です。前例主義的判断を連発してしまうリーダーは、保守的な部下・フォロワーや、守旧派をのさばらせるだけです。彼らは我が意を得たりと組織内を自分の意のままに操ろうとします。自分の都合の良い情報だけリーダーに報告し、そうでない情報は上げないようにするでしょう。リーダーの変革志向の行動は、組織内のそういった暗黙の力関係をいったんクリアにする効果があります。惰性的な行動は絶対に避けてください。

しかし、何でも壊せば良いわけではありません。全てを捨てることが変革だと誤解してはなりません。組織の力は積み重ねられた「知」にあります。しかし、多くの組織はその何よりも大切な「知」が形式知化されていないために、活用されることがありません。例えば、あるプロジェクトが失敗したとして、その原因を分析し、二度と同じような失敗が起きないように学習することは大変重要なアプローチですが、多くの組織ではそれが継承されていません。「知」は形式知化されて初めて資産です。また先人の経験や教えを伝え続ける努力をし続けなければ、無いものと同じです。リーダーは「歴史に学ぶ」ことをカルチャーとして定着させなければなりません。リーダーは一見相反する「前例主義」の撲滅と「歴史に学べ」を両立させなければならないのです。

 

四つ目は「指示待ちの会議の文化を変える」です。リーダーの重要なミッションは成果の最大化とサステナビリティ―の確保だと思います。即ち、成果がいかに立派でも一過性では意味がないのです。継続的に成果を出し続けられる組織を作ることが、最も大切なテーマだと言っていいでしょう。例えば、リーダーのアイデアと実行力により競争力のあるサブスクビジネスを立ち上げられたとして、それで一見事業のサステナビリティ―が確保できたと判断するのは間違っています。なぜならば、いつ破壊的なイノベーターが現れるか分からないし、顧客は必ずサチるわけですから、常にアップデートし続けなければならないし、サービスメニューを拡大するとか、必要なノウハウや、顧客ベースを獲得するためにM&Aを実行するという策に出る等、常に変革(SiftやJump)を続けなければなりません。最初のリーダーシップを発揮したリーダーひとりではどうにもならないのです。だから多様な人材が必要不可欠ですし、それらの人材がオーナーシップを持って行動しなければならないのです。会議のカルチャーを想像してみると分かりやすいと思います。指示は上司が出すもの、部下はそれを確実にやり遂げることで成果を出すのが使命というカルチャーが染みついていると、会議などの場はすべてリーダーが話し続け、あらゆる判断や指示命令を独占します。部下たちはそれにまったく疑問も感じず、マッチョなリーダーを尊敬の目で見続け、そんなリーダーの部下で良かったと感じるでしょう。一見素晴らしいチームのように感じるかもしれませんが、それでは指示待ち人間しか育ちませんね。変化の激しい時代を生き抜くためには、自分で考え自分で行動する自律人材(以前に何度か書きましたね)が何よりも必要なわけなのに、それでは組織のサステナビリティ―は萎む一方です。会議は指示の場にしてはなりません。議論の場にするのです。参加する全員が考え、発言し、助け合い、それが発見を生み、戦略の精度を上げ、全員がオーナーシップを感じるのです。では、リーダーは何をするのか? そうです、ファシリテーター」徹するのです。自由闊達な発話の場を作り上げるのです。自分たちの意見で方向が決まり、自らが責任を持つ。それが組織の姿なのです。もちろん、決断と責任はリーダーが全面的に持たなければなりません。また、こういうところにも表れます。以前にも書きましたが、「名ばかりのブレスト」です。落としどころを探すような、予定調和の議論はブレストではありませんよね。強いリーダーがいるブレストは、ほぼこれでしょう。やらない方がましです。時間の無駄です。これも前に書きましたね。

 

たった4点ですが、これらを鑑としてご自分のリーダーシップ振返ってください。現代では「リーダー」とは「変革リーダー」のことだと理解してください。常に組織やステークホルダーと向き合い続けてください。全然辛いことではありません。すごく楽しいことですよ。

凛と立ち北極星を指し示す