リスキリングは定着するのか 迷宮から逃れる

「リスキリング」が進みませんね。正に笛吹けど踊らず状態ですね。元々日本は学び直しがOECD最低なのはご存じの通り。考えてみると、それは人材の流動性が低いことも原因の一つだと思います。求められ転職したはずなのに評価されない。昇格は長年働いたプロパーを優先する。プロパーの貢献に報いたい現れでしょう。これってムラ社会を作り上げた価値観そのものではないのか。望まれて転職したのに貧乏くじを引く。そんな時代が長く続きました。もうそんな時代じゃないでしょ。その通りです。でも足元では、変われない企業・職場が多いのが事実です。多くの人が気付いているはずですよね。
 
倒産は「キャッシュショート」で起きるものなのですが、これからは「人財ショート」でも起きますよ。優秀な人材を獲得できない。育てても皆転職していってしまう。しまいに育てることができる人もいなくなる。キャッシュを生み出す人材を獲得するためには、給与を思い切って戦略的に上げざるを得ない。しかし、上げたところで、企業のブランドは既に劣後し、誰も魅力的だとは思わない。幸い転職してきた人材も、社内にロールモデルがいないことに気付き去っていく。そんな負のサイクルに陥ります。皆さんだって想像できるでしょう。そういう時代が来たのです。そうなる前に手を打たないと、ダメです。一旦そのサイクルに入ると抜け出すのは容易ではありません。
採用・育成・リテンションはすべてセットで戦略的に近代的に変えていかなければなりません。高い給与で高い能力とモチベーションを求める。魅力的な人事体系・育成ビジョン・制度。何より、育てる志や文化が強烈に強いことなどが極めて重要です。そして、人を公平公正に評価して報いる。パフォーマンスで評価するのです。長く働いたとか、我慢してくれたとか、まして可愛いとかで評価してはなりません。それを感じたら、キャリア採用した人は皆辞めます。必要だから採用したのだから、所要のパフォーマンスを発揮したら、公正に評価しなければなりません。
 
そうして日本の社会も徐々に変わっていきます。必要なスキルを持った人が、必要とされる場に移っていく社会に。流動性が高まれば、マーケットで必要とされるスキルを習得すれば、相対的に厚遇で処遇される当たり前の経済原則が定着するはずです。そんな当たり前の社会にできるかどうかが、想像以上に日本の今後の経済に大きな影響を与えると感じます。そもそも外国人が日本で働きたいと思う国に変わらなければならないのです。
 
話は変わって学生諸君。社会が必要としているスキルや価値観を想像したことがあるだろうか。大学の先生もそんなことを話していないのかもしれません。もちろん、大学で学べることは高が知れています。昔4年で学んだことを今は6年で学んでいると僕に言った教授もいました。某一流大学の教授です。何を学ぶべきかは、学生時代だけではなくて、就職してからも継続的に考えなければならないテーマです。常に広い視野でPESTにビビッドでいて、感じ、調べ、聴き、想像し、試し続けるのです。
 
企業は、今転職が当たり前の時代にあることの意味をちゃんと考えなければなりません。先程のように、公平公正に評価すること以外にも、向き合うべき課題はあります。流動性が高くても、育成には今まで以上に力を入れるべきです。お金をかけ育てても辞めてしまうから手を抜くのでなく、より戦略的に、本人の意志を尊重し、キャリヤプランを共有し、成長のトランジションを設計するのです。それが、社会への貢献、自己実現につながることだと分かれば、更に、その成長のプロセスを実感できれば、転職は減るでしょう。
自己実現のプロセスに乗っているのかいないのか。部下と話し合ったことはありますか? 目指している自己実現とは何なのかを聴いたことはありますか? そこから始めましょう。聴けたら真剣に相談に乗りましょう。
 
リスキリングは、「ジャンプ」だけではありませんよ。「拡げる」「深堀る」もありますよね。ずっと続けることに意味があるのです。そしてそのための時間は意志さえあれば作れるはずです。

久しぶりにこんな時間にホームに立った土曜夕方の渋谷駅。
驚くことに、同じホーム(上り)に上りと下り電車が来るではないか。
僕は見間違いだと思った。
最初は下りホームだけを見て、「あれ、来るはずの急行がない!」と
迷宮に迷い込んだ感じに陥った。
よくよく観察すれば進むべき道に(1番線ではなく2番線)気付いた。
人生も同じじゃないかと思う。