女性性は個性

D&I

女性役員が3割いる会社の利益率が、そうでない企業より15%も多いという事実がある。株価が高いというデータもある。業績が良ければ株価も高くて当然だ。企業における「D&I」の価値は誰もが認めるようになった。一色に染まったムラ社会よりも絶対にイノベイティブだし、インクルーシブな文化は社員の心の安寧につながり、風通しも良い。そう、皆が分かっているはずだ、少なくとも建前は。一方で、管理職でも「D&I」って何ですか?という人もいる。これも残念な事実。更に、言葉は知っていても、価値観や行動や言動はそれとは程遠い人が多いのではないだろうか。最近では某区議会議員の偏見にまみれた言動が、世間をにぎわせた。本人は何で批判されているのか理解できていないようだった。それが現実。

 

女性性と男性性

この言葉は最近、私の友人が代表取締役を務める「ホフステード・インサイツ・ジャパン株式会社」のブログで知った。男性性/女性性をこう説明している。

男性性の特徴

  • 業績主義社会が理想で「強い者」「秀でた者」が支持される
  • 欠点の修正を求める社会
  • 働くために生きる。仕事は人生にとって重要な要素
  • 女の子は泣いてもいいが、男の子は泣いてはならない女性性の特徴
  • 女性性の特徴
    • 福祉社会が理想で、貧しい人、弱い人を助ける
    • 寛容な社会
    • 生きるために働く
    • 男の子も女の子も泣いてもいいが、喧嘩してはいけない
    • そして、なんと日本は世界の中で最も男性性の強い国とされているのだ。

 

マッチョである必要はない

女性管理職の一般的特徴は、臆することのないメッセージ性の高いリーダーシップが弱い。積極果敢に攻める姿勢が弱く見えることなどだろう。これは360度評価をすると明らかな特徴として現れるのではないだろうか。少なくとも私の経験ではそうだ。

しかし、その反面、暖かく部下の話をよく聞くとか、落ち込んでいる人に対して的確に手を差し伸べるセンスがあるというような、インクルーシブな特徴があろう。

強いリーダーシップを称賛する傾向の強い日本。いわゆる、「俺についてこい!」的なマッチョなイメージ。「男はこうあらねばならない」的昭和以前の価値観。その刷り込みが今でも堂々と存在する事実。正直、私にも全くないとは言えない。

目を背けない勇気、先送りしない決意、偏見やバイアスなく意見を公平に聞く懐、冷静な分析・判断、ビビッドな感性、尽きることのない向上心、良識的かつ清廉な価値観などがあれば、いわゆる男性性の低い人(女性だけでなく男性も)が管理職やリーダーや経営幹部に向かない、ということは全くない。残念ながら部下にもバイアスがある。女性管理職に対する一種の偏見が存在する場合もある。上司はこうあってほしいと。

しかし、もうそんな時代じゃない。特に女性の社会進出が著しく女性社員の比率も高くなった現代では、女性社員の多くは、男性性むき出しの上司を望まないだろう。そして、男性性が低くても、上記があれば必ず信頼関係は築けるはずだし、現に社会には大活躍している女性管理職・幹部はたくさんいる。その多くにマッチョなイメージは全くないではないか。中には男勝りな迫力のある方もいらっしゃいますがw それは稀有な例🙄。そう、個性です。

 

個性を大切に

男性性が極端とも言えるくらい高い日本は、ちょっと住みにくい。男はこうあるべきだとか、女はこうあるべきだという因習ともいえる価値観にがんじがらめだった時代は長い。昭和までの時代かな。それで苦しんだ人は男女を問わずたくさんいた。特にアバンギャルドな都会と違い、保守的な地方の方が色濃いだろうな。

男性は論理的で女性は感情的、男は度胸で女は愛嬌、、、なんていう類は今では性差より個人差の方が大きいと、分かっているはずでしょ。

今でも日本ではなんとなく、男はこうでなくちゃ、女はこうでなくちゃ的な刷り込みは存在する。子供にそう言ってしまう親も多い。だから、例えばリーダーシップ教育における強いメッセージ性などは、男性は素直に受け入れるが、女性の一部は「そんなの無理」と感じるだろう。リーダーはこうあらねばならない的なことは私も言いがちだ。部下自身もリーダーはこうあってほしいなんて言ったりもする。もちろん性差を意識した話ではなく、人の上に立つ人は男女を問わずこうあってほしいという意味。しかし、それは男性性の強い日本ならではの価値観だと理解する。

しかし、リーダー像なんていろいろあっていい。皆個性的であっていい。必要不可欠なのは、プロフェッショナリズム染み出る影響力だと思う。

女性経営幹部の方々と話すといつも感じる。皆さん非常に優秀。表現は上品だが切れ味が鋭い(ただし大きな太刀ではなくペティナイフという感じ)。俯瞰的に見ることができるし、そのためにファシリテーションがうまい。偏った見方をしない、実に公正公平。常に優しさが漂ってる。言い換えるとインクルーシブ。私は足元にも及ばない。私は尊敬の気持ちに溢れ、実に幸せを感じる。もちろん、そんな人は男性にもたくさんいらっしゃる。

 

Glass ceiling

30%クラブに入会する企業も増えた。私のクライアント企業も○○年には女性幹部を△△%にすると社長が決めた。「クオーター制」、いいではないか。男性性優先のバイアスが色濃い日本においては、そのガラスの天井を壊すためにはそれくらいの変革が必要不可欠だと思うのだ。

アメリカでは、副大統領になるカマラ・ハリスさんが、「ガラスの天井にひびを入れた」と称されていますね。彼女の母親(インド出身)がまた素晴らしい。「あなたが先駆者でもあなたが最後になってはならない」と娘の背中を押していたのだ。

ガラスは必ず崩れ落ちる。落ちた欠片が放つ光は正に「カラフル」だろう。「D&I」は複雑に光を反射し、混ざり、色を変え、何度も反射し、見たこともない色を創り出し、人々を、社会を豊かなものにしてくれるはずだ。

ジェンダーギャップ指数が121位の日本。すぐに改善するとは思えない。皆の価値観が変わるには時間がかかる。一人一人が変わる努力をしないとね。

 

PS. アメリカでは、CDIO(最高ダイバーシティインクルージョン担当責任者)を置く企業が多い。Appleもその一社であるが、先日そのポストにIntelで同じポストにあったバーバラ・ワイ氏(53歳女性)を副社長として指名したと報道があった。

AppleのWeb“Inclusion & Diversity”によると、2018年時点でのAppleの従業員全体の33%が女性(30歳以下では38%)(男性比率が高いIT企業としては凄く高いと思う)で、米国での従業員全体の50%が非白人だそうだ。正にD&I。(同社ではI&Dだね)

PS. 11/27に日経新聞主催で「ジェンダーギャップ会議」が行われ、東京センチュリーの原真帆子専務がパネルに登場し、こう話していた。女性管理職研修で悩める彼女らに、俺についてこい的な縦の強いリーダーシップは必要ないんだよ、皆の意見をよく聞くような横のリーダーシップが大切なんだ、と話すと、それでいいんですねと彼女たちが安心すると。そう女性管理職も、リーダーはマッチョでなければならないというバイアスを持ってるんですね。それが当たり前だった歴史しかないのだから無理もありませんね。

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カラフルは、バランスであり安寧でもある。