■「Die With Zero」
以前にも似たような話を書いたことがあります。「Die With Zero」とはアメリカの投資家・著作家ビル・パーキンスが2020年に出した本のテーマです。人生の最後(死)にはお金を残さず使い切れ、という意味です。ところが、日本では死ぬときに最もたくさんの資産を持っているらしい。(日本銀行や総務省の「家計調査」「国民経済計算」のデータでは、多くの日本人が70代、80代またはそれ以上の年代で最も多くに金融資産を保有している、という傾向があることが分かっている) まさに、死に銭です。
私の街にはあちこちに広い土地(それも駅そばの一等地)を持つ地主さんがいらっしゃいました。その方には子孫がいなく、そして誰も信じず、所有したままお亡くなりになりました。その土地は接収されそのままになっています。有効に使われていたら、バスターミナルも広くできただろうし、新しい街づくりもできたかもしれません。残念です。
以前に書いたのは、人生を口座残高を知らされていない銀行になぞらえた話でした。それは時間も同じで、いつ残高がなくなる(死)か分からないということを考えると、人生の送り方の大切さと向かい合わざるを得ない、という主旨だったと思います。
しかし、お金に関しては上記の状況が事実なのです。なんと、日本人は愚かなんだろうか、と感じるのは簡単ですが、自分がどうなのかを考えると、意図的にお金や時間と向き合っていないと反省します。
■人生の送り方
お金も時間も自分の意志でどのようにでも使えます。それなのに、80歳になっても90歳になってもたっぷり金融資産を持っている。そして暇を持て余している。暇はあっても行動力もやりたいこともない。こんな人生は送りたくないものです。
多くの人は老後のことが心配だから貯め込んでいるのでしょう。しかし、現実にはたっぷり残したまま死んでいく。その時は子供も60歳くらいになっていて、お金が必要な年齢を越えている。相続しても使われなく、また子供は死ぬ時まで残している。なんていいう状況が続くから日本の経済は回らない。お金が循環するからGDPが上がり、皆の収入が増える。それができない理由の一つが「Die With Zero」になっていないからです。
老後どのくらいお金が必要かは計算すれば分かります。80歳位までには、それ以外のお金は使い切ってしまえばいい。だいたい、意図的に定年後に大胆に計画的に元気なうちに使えばいい。子供に残すとしても、早いうちから渡し続ければいい。場合によっては税金を払っても60歳位からどかっと渡せばいい。子供が一番必要としているタイミングで渡せばいい。
しかし、使えばいいと言われても欲しいものがない、という人も多いでしょう。だから、早いうちから意図的に使っていくことが大切なのです。どんなに遅くても70代までに意図的に使っていくべきです。
■価値観が表れる
何に使うか。そこに価値観が表れます。お薦めは体験にお金を使うことです。高齢になってまた車や不動産や高級時計などを購入してもしょうがないでしょう。体験と言っても多様です。そして、ほとんどの体験は家から出なければなりませんね。それがいい。外に出て、新しい出会いがあり、発見がある。ああ楽しかったと思える。行動がウェルビーイングを生む。
子供や友人にぱぁっとご馳走するのもいい。豪華に旅に出るのもいい。他者と経験を共有するのがいい。
もう一つお薦めがあります。それは寄付。実は日本は先進国で最も寄付額が少ない。米国がダントツで、一人当たりの寄付額は日本の30倍以上だ。
日本人はなぜ寄付をしないのだろう。今国会で論戦が繰り広げられているが、本当にお金を必要としている人にお金が行き渡らせるのは国の責任だ、という考えがベースにある。即ち私が行動することではない、と思っている。それにしても、今の議論は消費税減税にしても給付にしても国民全員を対象にしている。本当に必要な人だけに渡るようにならない施策はナンセンスだと思う。
また、寄付に対する信頼性が低いこともあるだろう。ちょっと怪しい団体(?)があるのも事実だ。だったらちゃんとした団体に寄付すればいい。さらに、宗教的にも歴史的にも日本は寄付文化が薄かったこともあるだろう。
最近ではIPS財団が寄付を求めているのは皆さんも気付いているでしょう。このように社会を変えたいという思いに賛同したら、ピンポイントで寄付するのもいい。ユニセフなどにするのもいいし、子供食堂などの支援に寄付するのもいい。
お金の使い道には個人の価値観が表れるものです。
■もう一つの「できることは全部やれ」
高齢になって、「やりたいことをやっておけばよかった」と思ってもタイムマシンでやり直せはしない。
僕たちは仕事でも同様の経験をしてはいませんか。「Do everything you can before you lose it.」(失う前に出来ることを全部やれ)だ。コンペをしていて負けた際、重要な顧客を他社の奪われた時、買収案件の条件交渉で競合に負けた時、優秀な部下に転職された時・・・ 失ったときに気付くわけです。もっと状況判断を真剣にしておけばよかった。相手の真のニーズを理解した上で条件を出しておけばよかった。部下と真剣に向き合ってキャリアプランを相談しておけばよかった・・・
人生と同じ。僕の手の内にある「時間」が分からないまま、情熱の投入のタイミングを失してしまった。皆取り返しがつかないのです。なぜあの時・・・ 後悔先に立たず。
僕自身も僕の周りでも、このようなことは枚挙に遑がなかった。反省もなくloseし続ける人もいた。(もちろん、すべての案件に全精力を投入できるわけがない。それを選択するのが正しい戦略であり、限りあるリソースで最大の成果(サステナブルな成長を実現する)をどの様に出すかを決めることは、リーダーの最大の使命でもある)
使うべき時に使う(お金や時間や脳力)、出すべき時に出す(情熱、執着心、行動力)ことは、人生を後悔させない重要なポイントだと思う。

お金も時間も小さくてもいいどんどん高頻度で使ってしまえばいい。
ちなみに、アジサイの一つ一つの花は、実はガクです。