ひやおろしを嗜む(たしなむ)

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ひやおろし」という名前に誘われる

私は血糖値がやや高く、5年くらい前に医師から糖質を摂るのを控える様に言われて以来、お米や麺類だけでなくビールや日本酒も控えてきた。節制のお陰で血糖値も少し下がり、時々日本酒も飲むようになった。1っか月ほど前にデパートのお酒売り場に並ぶ「ひやおろし3本セット」に目が釘付けになり思わず購入したのが写真のお酒。

 

さて、「ひやおろし」って何だか知っていますか? いやそもそも日本酒にはたくさんの種類・分類があって分かりにくいけれど、理解してますか? 「大吟醸に限るよね~」なんてステレオタイプなことを言っているじゃないでしょうねw

まずは分類の概要を整理してみましょう。お酒(日本酒)の分類を決める二大要素は「原料」と「精米歩合」だ。原料は米に決まってるでしょ、と仰るかもしれませんが少々違います。もちろん米と米麹が基本ですが、それだけで作ったのが「純米」。それ以外に規定量内の醸造アルコール(食用アルコール)が入っているのが「本醸造」。アルコール度数の調整や味の調整のために加えるのだ。どちらが美味いとかは無関係なのだ。本醸造だから安物だとかまずいということは全くないのだ。恐らくコストは安いとは思うが、必ずしもそうは言えないだろう。

そして、精米歩合。これは何となく知っているでしょう。高級なお酒で「二割三分」なんていう売りで表現したりしてるもんね。これは米の外側即ち玄米を削って糠(ぬか)をとることを精米というのだが、その度合いを指しているんだ。普通のご飯は精米歩合は約90%、即ち外側を10%削っているわけ。「二割三分」なんていうとほとんど芯しか残っていない感じだね。実は米の外側にはいろいろな栄養素が含まれていて、それらは体には良いが雑味を作ってしまうのだ。その雑味が香り成分を抑制してしまうと言われている。確かに精米歩合が少ないお酒は繊細な香りがする。もちろんその方がコストがかかるのは言うまでもない。高価なお酒の多くは精米歩合が少ない。でも、だから必ず美味しいというわけではない。

精米歩合と先ほどの原料の違い、即ち純米か本醸造かが掛け合わされる。まず、精米歩合に規定がない純米が「純米酒」。70%以下の本醸造が「本醸造酒」。60%以下または特別な製造方法の純米が「特別純米酒」、同本醸造が「特別本醸造」。特別な製造方法って何なのか?という話はメーカーの工夫があるのでしょう。酒税法によれば説明標示が義務付けられているので、読んでみるといいね。60%以下のものが「純米吟醸酒」と「吟醸酒」。そして50%以下のものが「純米大吟醸酒」と「大吟醸酒」になるわけだ。磨きが進むと繊細になるというので、大吟醸がフルーティーだなんでステレオタイプに言ったりするんだね。実はそうとは限らない。さっきも言ったが純米が美味しくて本醸造がイマイチということもない。杜氏の腕や嗜好で決まる。ご存じのように「獺祭」で有名な「旭酒造」には杜氏がいないと言われる。即ちかなり工業化が進み恐らく味もデータで管理しているんでしょうね。

さて、ここまでならかなりシンプルな話。実はここには「ひやおろし」なんて出てこないでしょ。それ以外にどのような種類があるんだろう。たとえば、日本酒は製品にするまでに「火入れ」をする。その回数とタイミングでも分類される。火入れとは低温殺菌のこと。酵素の働きを止めたりするわけだ。通常の日本酒は絞ってから火入れして貯蔵してまた火入れして出荷する。それに対して「生貯蔵酒」は絞って貯蔵してそのあとに火入れして出荷する。最初の火入れがないわけだ。またあまり聞かないが「生詰め酒」というのがあって、それは絞ったら火入れして貯蔵して火入れせずに出荷するもの。更に「生酒(本生)」(ビールみたいw)は一度も火入れせずに絞って貯蔵して出荷するんだ。日本酒は劣化が早いので「生酒」はあまり出回らない。とてもフレッシュな味となる。

さて、「原酒」というのも聞いたことがあるでしょ。これがまた別の概念なんだ。お酒って発酵させて絞った段階で一般的なアルコール度数(15度くらい)になるわけじゃない。実は水を加えて調整している。この「加水」をしないのが「原酒」。即ち20%くらいと強いんだ。オンザロックで飲んだりするようだ。僕は以前に木曾に行った際に何本か酒蔵で買ってきた。冷やしてそのまま飲んじゃったけどね。

そして「ひやおろし」だ。秋になると酒屋さんに並ぶのがこれ。僕もなんだかよく知らなかった。ポイントは先ほど書いた「火入れ」。そして季節。「ひやおろし」も火入れを行ってから貯蔵したお酒。そう「生詰め酒」なんだ。しかし、「ひやおろし」は夏を越えてなお貯蔵庫に貯蔵される。蔵の中の樽に入ったままなわけだ。熟成が進み季節が秋に変わり外の気温と貯蔵庫の温度が同じになったときに出荷すのが「ひやおろし」なんだ。そう江戸時代に「冷や」のまま「卸す」からそう呼んでいたらしいんだ。「ひやおろし」は9月ごろから出荷され、11月ごろまで。徐々に熟成が進むので、味が変わってくるんだね。一年で今の季節だけ楽しめるお酒なんだね。

いろいろな分類がある。でも、それに惑わされず味わってみることをお勧めする。しかし、地方の酒蔵でしか買えないものや、その季節にしか楽しめないものを嗜むのも楽しいよね。そろそろ旅行も再開できそう。地方に行った時には酒蔵を訪問するのも楽しいですよ。ちなみに、蔵の中で発酵が進むのだが、建物の入り口に近い樽と奥にある樽では味が違うそうだよ。恐らく僕には区別できませんけどねw