組織の成長の話をしよう

2024年は悲しい出来事が多い年だった。世界の不確実性が一気に上がってしまった。現時点では収束する方向にない。2025年はどんな年になってしまうのだろうか。悲観的な気持ちが心の中で渦巻くけれど、せめてその不安を外に巻き散らかさないようにしようと思う。

 

今回は組織の話をしよう。企業で勤め実績を残せば、組織を任されるポジションにアサインされる。小さな組織で、かつミッションが明確で、市場の変化が少なければ、あなたのリーダーシップいかんで業績を伸ばすことは、それほど難しくないだろう。しかし、そうでない場合は様々な問題にぶつかり、成果はすぐ伸び止まるか下降していく。

組織がある程度大きくなり、事業ドメインや商品やミッションが複雑になり、マーケットの変化が激しかったり、競合との競争が激しかったりすればするほど、組織のマネジメントは難しくなる。そうなると、あなた一人のリーダーシップではその荒波を越えることは難しい。

大切なことは、組織自体の力をいかに発揮していくかだ。あなたが、ある事業を任されたとする。あなたの配下に、例えば商品ごとのサブリーダーが存在したり、事業を支えるスタッフが存在するとする。それらの人々の集団そのものが機能するかどうかが課題となる。即ち、あなたとサブリーダーたちが、どのように自分が作った境界を越えてコラボレーションできるチームに変貌させることができるかの問題になる。

あなたとサブリーダーたちのチームの能力と関係性が今後を決める。それはいわば経営チームだ。あなたはその経営チームを理想のチームに成長させなければならない。それができれば、各サブリーダーは将来リーダーとなり同様のチームを創り出すこともできるだろう。

リーダーであるあなたは何をすべきなのだろうか。それを考える前に、一つのトレンドを仮説として説明したい。それは近年の企業がおかれた環境だ。日本企業のエンゲージメントは他国に比しかなり低い(ギャラップ社のエンゲージメント調査で2023年も145カ国中最下位だった。これで4年連続)。更に、近年のトレンドとして、心理的安全性、DE&I(特に多様性を尊重される)、自律、コロナ禍などを経てコミュニケーションが空疎になっていること、業績圧力は相変わらず強いことなどがあげられる。これは何を誘引しているかといえば、それらが組織の遠心力となり、一人ひとりがバラバラになる傾向が強くなっていると言えるのだ。即ち、自分らしく個性や価値観を尊重して生きることが是とされるカルチャーに変わった。このトレンドが組織運営に与える影響が大きいと考えている。

リーダーはそのトレンドが作る組織課題を乗り越え、いくつかの行動を取らなければならないだろう。その一つが、組織の方向性を定めることだ。方向性とは、パーパス、ビジョン、戦略などだ。リーダーは経営チームとそれらを定め、合意し、責任を共有し、その実現にコミットしなければならない。言葉で言うのは簡単だが、それに苦労するリーダーは多い。経営チームが腹の底から共感し当事者意識をもって最善を尽くすことは簡単ではない。先ほどの遠心力が邪魔をするからだ。

リーダーはその遠心力を越える求心力を経営チームに与えなければならない。それは対話であり、傾聴であり、自己開示であり、愛情などインクルーシブな行動にかかっていると思う。リーダーはこれらに心血を注ぎ、信頼関係を築かなればならない。それが難しければ、外部からコーチを招きチームに対する集団セッションを行うなどの手段も有効になるだろう。

このアプローチは、チームに横たわるカルチャーを創り直すプロセスとも言え、実は最も大切だが難しいものだと理解する必要がある。手を抜いてはならない重要なプロセスだ。同時に、そのプロセスは永遠に続くと理解しなければならない。

即ち、例えば定例的に行われるチームの会議の目的が曖昧だったり、準備を怠ったり、発言しなかったり、当事者意識のない舐めた態度で臨んだりすることがあっては、求心力は一日で壊れてしまう

すなわち、二つ目のポイントは規律だ。組織に一定の緊張感を持たすことは、遠心力を放置しないために必要不可欠だ。一人ひとりが責任と当事者意識をもって行動するためには、チーム員各位が握るべき規律がある。経営チームは社員全員の模範となるためにどのような行動を取らなければならないかを、是非話し合ってほしいと思う。チームのCredo(価値観、信念、行動指針)を決めて書き下しておくのもいいだろう。

 

チームは、各人の困りごとを共有し助け合い、問題を乗り越え、意図的な楽観(問題は解決できるはず)を創り出さなければならない。経営チームに信頼関係ができ、一枚岩で、充実した時間を共有できている姿は、組織全員に伝搬する。安心感と自信が蘇る組織に壁がなくなり、コラボレーションが始まり、イノベーションが起き、成長が加速化し、全員のモチベーションが上がる

遠心力と求心力がバランスすると、組織は自律しつつ化学変化が強力になる。一人ひとりが触媒の役目をするからだ。

組織の成長はそのリーダーの行動力にかかっている。

一人ひとりがいかに素晴らしくても、
組織として最高のパフォーマンスを出せるとは限らない。