ホワイトすぎるが上司は違う

桜もほぼ散ってしまい。少々街が寂しくなった。春は何となくウキウキする反面、実は僕はなぜか少しブルーになる。なぜだかは分からない。季節性のそういう症状もあると聞く。ま、受け流せる範囲で幸いだが・・・

 

さて、就業期間の短い若者たちを中心に日本の会社員の流動性は凄く高まった。基本的にはとても良いことだと感じるけれど、企業サイドとしては大きな問題だ。企業がサステナビリティを高め成長を続けるために最も必要なものが人材だ。人的資本と言われている。経営戦略的に言うならば、採用ー育成ーリテンションの3点セットを経営課題として真剣に向き合って対処することが重要だ。したがって今、企業のHR部門のプロフェッショナビリティが問われているのだ。

さて、そんな典型の大企業において今問題になっているのが、「ホワイト過ぎ問題」。企業は「ブラック」の誹りを免れるよう過度に気を遣う。ワークライフバランス、上司とのコミュニケーション深化のための1on1、多様な研修等々、相当手厚いそして、気を使いすぎる「ホワイト」振り。そう「過度なホワイト」なのだ。笑う人もいるかもしれないが、笑えない事実なのだ。

これがなぜ問題なのか? 過度なホワイトは言い換えれば「甘やかしすぎ」とも言える。知人の企業に聞くと残業の配慮(というよりしないように仕事をアサインし管理する)を丁寧に行うと、入社期間の短い若者たちから「もっと働きたい」と要求されるのだそうだ。そういうKYホワイト(笑)はどういう影響を及ぼすのか分かりますか?

実は「退職」なのです。「もっと貢献したい」「もっと働きたい」「成長したい」という欲求に応えるどころか、否定していると言っても良いメッセージなってしまっているのだ。

大切なのは、そんな部下の成長をどのように促進すべきか考え行動することだ。「成長のために甘やかす」なんていうことはあり得ないよね。

戦略的に考えてほしいのが1on1。その場で部下のキャリアプランを一緒に議論しましょう。まずは、「将来のありたい姿」「なりたいもの」「やりたい仕事」を明確にしましょう。それをある程度明確にできたら、ホワイトボードの左下に「今のあなた」、右上に「将来のあなた(なりたい姿)」を書き、その間を直線で結びましょう。その線が部下の成長というイメージだ。もちろん一直線に行くことは考えにくいかもしれないが・・・。5年スパンでも10年スパンでも構いません。だどっていく道が「Transition(遷移、移り変わり)」です。それが順調に右上に進んでいくために、その線に直角に合流するものを描くのです。エネルギーを注入するように。それは多様な経験かもしれませんし、学ぶべき技術なのかもしれませんし、ビジネススキルかもしれません。それが何なのかを上司はアドバイスするのです。そうなりたいなら、こういう経験をするといいね、とかこういう研修を受けなさいとか、恐らくたくさんのアドバイスができるでしょう。そして、的確な異動や研修を設計するのです。その場でオファーしてもいいかもしれません。上司と部下がホワイトボードに向かって描いたものがキャリアプランです。部下は希望を抱き、チャレンジ精神を掻き立てられることでしょう。Transitionを実現する手助けをすのが上司だ。それができれば部下は成長し、企業の中で貢献を続けるでしょう。即ちWin-Winの関係になるのです。

そんな1on1を行っていますか?

 

さて、問題がもう一つあります。なりたいものを問いかけても「分からない」「まだ決めていない」と薄い反応しかない人も多いでしょう。その時はどうしますか? 話を終えてしまいますか? まずは考えろ!なんて突き放しますか?

どれも最低ですね。今決めなくてもいいからイメージしてみようなどとファシリテーションしてください。例えば、こんなのもあるよねとか、そんなのもあるよねとか、想像できるものを出し合うのです。思い切り発散させてアイデアやイメージでいいからホワイトボードにたくさん書き出すのだ。そうなると、その多くは「それはないな~」というものでしょう。それを除いていくと、もしかするとそれらが候補になるかもしれないといういくつかに絞られるでしょう。それで十分です。そうなればイメージはそれらに集中し、それらを候補にしてどういう仕事なのか調べてみようとか、学んでみようとか、場合によっては上司がこういう仕事だよと教えてあげてもいいわけです。そんなことをするだけで、上司と部下はイメージを共有して上司はサポーターになれるわけだ。そんな入り口を設計したらいかがですか。そんなプロセスを数回経ればだんだんイメージは固まるし、ではこういう経験をしてみようなどとオファーもできるでしょう。そんなプロセスを経た部下と、ほったらかされた部下とではどれほど上司や会社に対するロイヤリティーが違ってくるのかは容易に想像できるでしょう。

 

さて、一方でもう一つ大きな別問題があります。それは新人に対してはホワイト過ぎる反面、上司である階層の人達が「ロールモデルにならない問題」です。今日本の企業では「管理職になりたくない」若者が増えています。その理由が「あんな上司のようになりたくない」。上司が仕事漬けでワークライフバランスなんて微塵も感じられないとか、結局は汗と根性で出世していくしかないのかとか、更に上位上司からのプレッシャーが強くてしんどそうとか、顧客から怒られ続ける姿を見て自分には無理と感じる、などなど。即ち、上司が「なりたくない人材像の典型」になってしまっているわけです。

あなたが管理職ならば、部下たちから見てなりたい人材像即ちロールモデルだと自信をもって言い切れますか? 多くの人達はNoと答えるでしょう。まずは、それをどのように変えられるのか考えてみてください。あなたが若かったころのあなたの上司はどうでしたか? きっと今のあなたと同じようだったのではありませんか? しかし、あなたは退職せずに今のポジションに昇格した。それは正に根性と体力で勝ち取ったのかもしれませんが、同様のことを部下が感じたら昔のあなたと違って、石の上にも三年なんて思わず、多くの人は退職してしまうでしょう。採用ー育成ーリテンションの道はそんなあなたによって壊されていきます。あなたは仕事ぶりを変えなければなりません価値観を変えなければなりません。やるべきこととやらなくてよいことを峻別しなければなりません。権限委譲を進めなければなりません。仕事の優先順位と必要なリソースと配分を考え直さなければなりません今までのやり方は忘れるのです。固定観念は捨ててください。大胆な変革を進めてください。

f:id:taka-seed:20220409164707j:plain

新旧の混ざり合った東京佃島
会社も同じ。新旧は水と油じゃない。不思議な化学反応が起きる。
それがD&I。楽しいよ。