心理的安全性はコロナ禍の最重要テーマ

いつもブログを読んでいただいている方々、明けましておめでとうございます。今年も感じていることを書いていこうと思います。皆様のちょっとした学びになれば幸いです。実は私の学びを解き放っているだけなんですが・・・

 

心理的安全性とは

さて、残念なことに新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。緊急事態宣言が発出される状況になってしまいました。在宅勤務の比率が高まり、顧客とのコンタクトも減るでしょう。益々職場のコミュニケーションが減り、一人一人の孤立が深まるリスクもあります。

この状況で重要なのが、職場の「心理的安全性」です。「心理的安全性」とは、職場で何を言ってもどのような指摘を指摘をしても、批判されたり怒られたり変な目で見られたりする心配のない状態を言います。「出る杭は打たれる」の心配のない状態と言ってもいいですね。ということは、冗談を言い合えたり、雑談がしやすかったり、職場がワイガヤ状態を楽しんでいる感じとも言えますね。

人々が集わなくなったコロナ禍においては、更に「心理的安全性」が遠のいてしまったと感じられるのではないでしょうか。だからこそ今最も注意しなければならないことの一つが「心理的安全性」の確保なのです。

そもそも「心理的安全性」はハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した「Psychological safety」の和訳で「チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、罰を与えるようなことをしないという確信を持っている状態であり、チームは対人リスクをとるのに必要な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」と定義されています。上司や同僚の反応を気にしたりビビったりすることがない職場なわけです。

 

心理的安全性のメリット

心理的安全性」のことが近年よく聞かれるようになったのは、Google社が実施した「プロジェクト・アリストテレス」が注目されたからです。耳にしたことがある方も多いでしょう。これは同社の一種の労働改革プロジェクトで、その結果として「心理的安全性がチームの生産性にを高める重要な要素である」と結論付けたのです。

不確実性がますます高まる現代において、企業が成長し続けるためには様々な要素が必要です。マーケットで実際何が起こっているのかにビビッドであること。それには幹部やリーダーを含めたハンズオンが必要不可欠なことに加え、職場の風通しのよさが必要不可欠です。また、多様な意見が飛び交い、互いの価値観を理解することで化学反応が起きイノベーションが生まれます。即ち互いを認め合うオープンなダイバーシティ空間が必要です。そして、スピードも重要ですね。例えば、問題を隠すことなく上司に伝えることに躊躇がない職場の空気も大切です。更に、上司や同僚に「それ間違ってますよ」と遠慮なく言える関係も重要ですね。即ち、これらを支えるのが「心理的安全性」なのです。

これは、上司が口でいかに言おうがそれだけで定着するわけではありません。例えば、上司が予算を達成しない部下に対して激しく叱責するようなことが頻発するような職場では、上司に具申もできないでしょう。そうです、毎日の積み重ねなく「心理的安全性」は実現できません。

 

心理的安全性」のメリットを少しまとめてみましょう。

チャレンジする組織文化やイノベーションの促進

社員が失敗を恐れず発言したり行動したりしやすいので、躊躇せずにチャレンジしやすくチームに試行錯誤が誘発されやすい。また、不要な遠慮がないのでバイアスを壊しやすく自由に発想できるので、イノベーションが起きやすい。

組織リスクの低減

失敗や問題が発生した時に叱責を恐れて隠ぺいするマインドセットにならないので、重大な問題が放置されるリスクを回避できます。

意思決定の精度が上がる

上司に具申しやすいし、上記の通り問題を上げやすいため、上司を裸の王様にさせません。従って意思決定の正確性が高まります。

職場の多様性が高まる

多様な価値観が認められる職場には、多様な人々が集い溌溂と働きます。イノベーションにも不可欠な要素です。部下を一色に染めようとする上司がいますが、それは完全に間違っています。自分の都合だけです。自分の居心地が良いからそうしているのです。多様性がなければ企業は自然死への道を進みます。絶対に忘れないでください。

エンゲージメントの向上

居心地が良い、仕事がしやすいなどの特長があり、チームに共感が生まれますので、社員にはやりがいが生まれ、能力や得意技を活かせパフォーマンスが上がります。そのためにその会社で長く働きたくなり、人材の流出抑制にもなります。

精神的クリアさの向上

雑談や相談が躊躇なく行えることによって、プライべーとなことも含めて親身になって相談に乗ってくれる上司や同僚がたくさん現れます。一人で悶々と悩むことが減ってくるでしょう。

そうです。良いことずくめなのです。

 

■職場づくり

それでは、どうやってそのような職場を作ればよいのでしょうか。

1on1のルール化

普段からよく話しているから大丈夫と上司は思いますね。それはほとんどの場合勘違いですw。部下は本当に心から言いたいことを言えていますか? 上司にはお決まりのバイアスがあります。それは、「僕はハードルが低い」という誤解。笑っちゃうでしょ。これは私が長年組織の中で働いてきた実感です。ぼぼ全員このバイアスに冒されていると思ってください。だから、ちゃんとしたルールを作り、定期的に1on1をしなければならないのですよ。もちろん、その場でも注意しなければならないことはたくさんあります。例えば、普段と同様の指示の場ではなく、話を聞く場であることを忘れないこと。即ち上司は話すのではなく聞くのだということ。そして、決して否定をしないこと。などです。できない人がほとんどではないでしょうか。

オンラインの使い方

特にコロナ禍における孤立の予防のためには、日常をいかに取り戻すかが大きなテーマです。だらだら一人でPCに向かって時間も忘れ仕事をしてしまう。運動不足。目や肩や背中がひどく疲れる。家族への負担が気がかり。など。在宅勤務が続くとメンタルに支障をきたす社員が増えてきます。今まで通勤してオフィスでチームで顔を合わせて仕事をしていた時とは全く違う環境に、ストレスを感じます。もちろん、満員電車の通勤時間が無くなり効率が良いなどのメリットはあったとしても、ネガティブな要素は付きまといます。そこで大切なのは、サイクルを取り戻すこと。よく言われていますが、起床時刻を一定にする。チームの習慣を作る。例えば、オンラインで朝礼をしたり、終礼をするのも良いとされています。更に、職場では簡単に行えた雑談をする場を作ることです。オンラインでランチ会をしたり、3時のお茶をしたりするのです。オンライン飲み会も良いとされています。上司が定期的にオンラインを開けておき、誰でも自由に入ってよいことにする手もありますね。昔は「報連相」などと言われていましたが、雑談もしない上司に相談はしないものですね。今は「雑相」と言われ、雑談と相談の区別などせずフランクに話す習慣を作ることが大切だと言われています。

また、会議の設定にも注意をしましょう。在宅が増えると、逆にオンラインの会議が爆発的に増えて忙しいという人もいますね。これは皮肉な事実です。コミュニケーションが疎になることを恐れる気持ちはよく分かります。しかし、参加するものの意見を言うわけでもなく、当事者意識もなく、場合によってはマイクもカメラもオフにしたままという参加者がいる会議がありますね。そういう人はほぼ間違いなく当事者意識がありません。多くの場合は他の仕事をしていますねw そのような会議の多くは必要のない人も参加させているのでしょう。そして、内容は連絡事項がほとんど。そんなオンライン会議は止めてしまいましょう。連絡事項はSNSやメール、もしくは動画のアップで十分です。会議は減らし意味のあるものだけにしましょう。ただし、参加者は事前に準備を怠らず、参加する以上必ず意見を表明しましょう。もちろん、カメラもマイクもオンのままが当たり前ですぞ。

機会の公平性

心理的安全性」を担保するためにはベーシックなルールがあると思います。それは、チーム員全員が第三者にならないこと、即ち全員が当事者意識を持つことです。私は関係ないというオーラを決して出さないことです。風通しが良い職場になろうとしているときにネガティブな態度を示さないことです。これは他のメンバーをシラケさすからです。同時に、上司はあらゆる意味で全員に公平に発言や参加の機会を与えることです。新人であろうが、シニアであろうが公平にです。参加者は伸び伸びとメンバーの一員である存在価値を示すのです。

充実を味わう

コーチ業をしている中で、よくクライアントに質問します。「どのようなときに充実を感じますか?」と。多くの人は、「何かを完遂した時」と言いますね。それでは、例えば、大きなプロジェクトを担当しているなら、「2年経たないと感じないのですか?」と聞き直すと困った顔をして「う~ん、そうです」と渋々答えます。本当にそうならこんなに寂しいことはありませんよね。結論から言うと、「充実はプロセスに宿るのです」日々の行動に充実感を感じられるように振舞うことを強く提案します。例えば、会議が終わったときに、「今日の会議は良かったね。問題がクリアになってスッキリした!」と発言してはいかがですか? その一言で、参加者全員が充実した会議だったと感じ、笑顔が浮かんでくるでしょう。プロジェクトが完遂しなくとも、日々の小さな進捗や革新にこそ充実感が宿っているのです。それなのに、誰もそれに触れようともしない。そんな寂しいことはありません。有意義な議論、ひらめいたアイデアでブレイクスルーした時、顧客の「ありがとう」の一言、同僚のアドバイスで希望を感じた時、思い切って発言した自分の意見に皆が賛同してくれた時、オンライン飲み会での皆の笑顔・・・充実はあらゆるプロセスに存在するのです。「心理的安全性」が存在する職場には清々しいプロセスに満ち溢れているのです。そのプロセスに隠れている充実を味わうチャンスを逃してはなりません。

 

■ぬるい職場との誤解

心理的安全性」の高い職場を、上司が厳しくないぬるま湯的な職場、危機感の足りない職場だと思うかもしれませんが、それは全く違います。まず考えなければならないのは職場の「基準」です。目指すべき基準と思ってください。職場の基準が低いときに、心理的安全性が高かったらどうでしょう。自由に振舞え上司の過剰コントロールもない。しかし、目指すべき基準が低いのです。これではぬるま湯に入っているのと同じです。

基準が高い職場を想像してください。心理的安全性が低いと、チーム員が互いに助け合ったり、アイデアを出し合ったりしないままハードなノルマに苦しめられ、不安度が高くこき使われている感情になりますね。

基準が高くても心理的安全性が高ければどうでしょう。フランクな意見を戦わせ、チームで学習が進み、上司が箸の上げ下ろしを管理するわけでもなく、的確なコーチングのもとに自由に難題に向かってチャレンジするパフォーマンスの高いチームが出来上がります。

基準が高いというのはどういうものでしょうか。別にいたずらに高い予算を掲げるというようなことではありません。我々が存在する現在のビジネス環境は、何度も言うように不確実性の高い状況変化の激しい世界です。目標達成は突然困難になったりします。適時戦略を変え、即行動し、時にはプランBやCを発動し、ある時は妥協し目標を変えます。その時に単に諦めるのではなく、次善の最高を目指すのが基準が高い、即ちハイスタンダードなチームなのです。実現可能なハイスタンダードを常に目指す、心理的安全性の高い集団が目指すべきチームです。

チームが目標を達成できない時に、上司が怒りに任せて叱責することは、チームに良い影響を与えません。現実を直視し、公正に分析し、次善の高い目標を再設定し、その実現に向かってタスクに分解し即行動する、そのプロセスをファシリテートし必要な指示を出し、ハンズオンで現場に向き合う。それがハイスタンダードなチームのリーダーでしょう。幹部は現場のリーダーに権限と責任を委譲しますが、うまくいかなくて叱責しないと言っても、放置することとは全く違います。公正に評価します。ハイスタンダードなチームは自由度が高いのと同時に責任も重たいのです。ぬるいのとは真逆なのです。

当たり前ですよね。プロなんですから

 

心理的安全性をつくる行動

石井僚介氏は4つの因子(行動)をこう書いている。

1.助け合い「困ったときはお互い様」

2.話しやすさ「何を言っても許される」

3.受け入れ「とりあえずやってみよう」

4.新奇歓迎「異能どんどん来い」

いいとこついてますね。更にこんなことに注意すると良いと言っています。

・発言を歓迎する。つまり、発言の内容を評価するのではなく、まず発言したことについて感謝する。これはなかなかできることではありませんね。

・リーダーが間違ったときは間違いを素直に認め、そこからの学びを共有する。これができる人も少ないですね。

・助けが必要かどうか、困っていることはないか、聞いて回る。

・相談されたら手を差し伸べる。私はその前に相談される関係を築くことが大切だと思う。

・挑戦を歓迎し、挑戦したことに対してまずは褒める。

・失敗した時もチームとして何が学びになるかを振り返る。

これらも簡単なようでできていない人が多いですよね。意識すればできますよ。

 

 

私たちの働き方は変わらざるを得ません。しかし、プロとしての矜持は絶対に失ってはなりません。どのようなときもハイスタンダードを維持し、チームの力を結集させていかなる難題も乗り越えるのです。

そのベースラインが心理的安全性です。そこにはセクショナリズムはありません。ムラ社会のバイアスもありません。利他心に溢れ、共感で結ばれたチーム員は日々充実を感じ、仕事を楽しみます。

新しい一年はどのような年になるのであろうか? コロナ禍は? オリンピックは? デジタル庁の政策は? 企業の業績と投資は? 新しいビジネスチャンスは? 事業の新陳代謝は? 皆さんの健闘をお祈りします。

f:id:taka-seed:20210105162747j:plain

必ず春は来る