「ウーブンシティ」と章男社長の葛藤

トヨタの「ウーブンシティ」をご存じだろうか。

豊田章男社長は今年の7月に、NTTとの資本提携を発表した。「ウーブンシティ」を実現するためにはビッグデータの活用は避けて通れない。そのためには情報通信企業のノウハウが必要不可欠だと思ったのだろう。

更に彼は止まることなしに、7月に自動運転ソフトの開発を担う子会社TRI-ADを、持ち株会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」と自動運転技術を開発する「ウーブン・コア」、ウーブン・シティなどの新しい価値創造を担う「ウーブン・アルファ」の2つの事業会社に移行させた。

そう聞いても、「そうなのね!」で終わってしまう。ここで注目せざるを得ないのは、持ち株会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」に彼は私財を投入していることだ。金額は分からないものの、彼はトヨタという企業の取締役会が承認した投資ではなく、私財を投資したということなのだ。

恐らく彼は深く葛藤したのだと思う。トヨタには37万人の社員がいる。それが章男社長のスマートシティー構想に賛同する景色を想像できますか? 2020.1にラスベガスで行われたCESで彼は「ウーブンシティ」のコンセプトを発表した。静岡県裾野市にある工場跡地にスマートシティーを作る構想だ。2000人がそこに暮らし、そこで発生する情報を活用し新しい街づくりをするのだ。

その発表に対して、社員は反応をせず全くの無関心だっという。自動車の将来はどうなるのか? モビリティーの未来はどうなるのか? 章男社長は壮絶な危機感を感じているのだろう。世界のリーディングカンパニーのトップの責任、創業家の血を引く責任、影響、社会の成熟に対して果たすべき役割、生活、移動、環境、幸せ・・・。成し遂げたいことは何なのか?

彼の葛藤を知る術はない。僕たちの目の前にある事実は、彼は私財を投じて闘いを挑んでいるということだ。社員の賛同を得られない事業にトヨタとして投資することに、限界を感じていたのかもしれない。トヨタの生存領域にスマートシティーはなかっただろう。車を作りたかった社員にスマートシティーを創るリスクを飲み込めとは言えなかったのかもしれない

トヨタのCMをご覧になると、宇宙、コロナ対策防護服、「ウーブンシティ」が全部つながっていると言っていることに気付くでしょう。でも何が言いたいかわからないですよね。恐らく社員の多くは、章男社長は何を血迷っているのかと腹の中では感じていることでしょう。

「ウーブンシティ」構想には多くの企業が協調し、モビリティーだけでなく、住宅、エネルギー、食糧、教育・・・など、多面的に新しい取り組みがされるのであろう。

私財を投じて社会変革の実験を行うチャレンジャーは、日本の化学反応の触媒になれるのだろうか。社員や株主・投資家やサプライチェーンを担うパートナーの共感を得られるのだろうか

もちろん、彼の描くスマートシティーはモビリティーと深くかかわるだろう。日本におけるスマートシティー事業は主人公が未だに現れない。少子高齢化の日本においては、都市経営、特に地方のそれは、街を生活を維持できるかどうかを決める最重要テーマだろう。極々近い将来、上下水道、電気、道路や橋などのインフラさえ維持できない限界集落が多発するでしょう。それは、「ぽつんと一軒家」のような寒村だけでなく、地方の街や都市にも広がっていくでしょう。それが分かっていながら、スマートシティーに投資をする人がいない。国も自治体も民間企業も少額投資で、まるで様子見だ。誰も政治マターだと思っていない。これからの日本を考えれば、国策以外の何物でもないのに。

その中の「ウーブンシティ」。これからどうなっていくのだろう。直感的には、このプロジェクトは、その流れに一石を投じるものにならないと感じる。誰かが注目してメディアに火をつけないと。目を離せない。

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小布施で買った「北信流」。ひやおろしのシーズンももう終わり。

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我が家の近所ではすでにサンタさんが現れた。もうそんなシーズンなのか。ひやおろしが終わればクリスマスか~