消える?産業セクターを目の前にして考える

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朝のウォーキングは在宅勤務のリズムを作る。


■変化に順応するために

先日変わり続ける話を書きました。考えてみれば、過去にそんな話を何度も何度も書いてきました。言い換えれば、変われない会社や人々を見るにつけ、強烈な危機感を嫌というほど募らせてきたということです。

企業も国家も永遠ではありません。それは歴史が物語っていますね。必ず栄枯盛衰があり、多くの場合は強いものに飲み込まれたり、存在価値自体が喪失してしまうなど、50年もすれば、昔そんなものがあったような気がするくらい忘れ去られたりしてしまいます。

それは言うまでもなく、企業や国家を取り巻く環境が時々刻々と変化し続けるからです。変化に気付かないほどゆっくり変わっていく場合も、鈍感な企業は気が付いた時は既に取り返しのつかないといったケースもありますし、あまりの速い変化に分かっていはいても意思決定がついていけずに、結局衰退してしまうケースもあります。双方とも結局は環境変化に順応できなかったことは変わりはありません。

企業の自己変革能力は自らが持つ価値観や文化に依存します。また、組織構造に影響されます。企業には成長に合わせて適切なサイズがあります。経営しやすい大きさと言ってもいいかもしれません。大企業の変遷の例でいえば、旧松下電器グループの再編や、最近では日立製作所グループの再編などはその典型です。近年の親子上場への批判もあり、日立はグループ経営の在り方をダイナミックに変えています。シナジーが乏しい子会社を連結外にどんどんしています(株を売却している)。また、先ほど書いたように、経営しやすい大きさを意識して、カンパニー制度にしたり、分社化(さらに上場する場合も)したり、事業部を分割したり統合したり、多くの企業が悩み苦しみ変わり続けてきました。

言えることは、企業の規模が大きくなればなるほど、従来の延長線上では回らなくなるということです。ガバナンスの仕方、権限移譲の仕方、コラボレーションの仕方などに工夫を凝らさなければなりません。さらに言えば、組織が分かれれば必ずができます。組織のエゴが出ます。結局シナジーはどんどん失せ、イノベーションは起きず、心はぎすぎすして偏見にまみれてきます。スタートアップから見れば、大企業は能力も人材も資金も知財も垂涎の的であるのにもかかわらず、それを活かせないのです。最悪です。この前書いた記事のポイントがそこにあります。縦割りの文化を壊すことができなければ、大きなことのメリットは出しにくいことは間違いありません。

縦割りを壊すためには、経営陣の風通しを良くし、利他心をベースにした全体最適志向のマネジメント体制を作ること。予算マネジメント、業績評価、人事評価、戦略的人事異動などの経営システムが縦割りを誘引しないものへと変えていかなければなりません。そして、常に見つめるのは社外、すなわち顧客や他社、マーケット、グローバルに向けることです。ムラ社会を構成している人々を矯正するか、出て行ってもらうかしなければならないのです。日立の川村さんが正にそうしたひとりでしょう。グループ企業の各社長の足の引っ張り合いを壊すために大胆な改革をしたわけです。

外を見るという意味では、企業におけるマーケティング組織の使命も大きいと感じます。外の動向にビビッドなアンテナの役割を果たすべきです。目を外に向けさせる役目です。経営陣はマーケティング組織、そのトップであるCMOとの信頼関係が非常に重要です。経営陣のその感覚は、社内全体に好影響を与えるでしょう。

 

■コロナ禍の企業

今回のコロナ禍の対応は企業においても重要な学びになっていると感じます。WHOも中国も米国も日本も最悪の事態を予想せず、大変楽観的な見方をしたせいで、対応が後手後手になり感染拡大を起こしてしまいました。中国やヨーロッパ各国、米国はその後一気にハンドルを切り、ロックダウンや入国禁止など、厳しい対応に切り替えました。トランプ大統領はいまだに楽観的なコメントを吐いていますけれどね。日本は経済の影響を気にするあまり、国と自治体の間で何の業種を自粛対象にするかなどでもめていますが、権限と責任があいまいなことがその原因であるとともに、見通しがいまだに楽観的過ぎることが目に余ります。企業サイドもそうです。もちろん医療関係者や流通関係者さらにインフラを支える人たちなどを除けば、可能な限り在宅勤務にシフトすべきです。発注者は強い立場をいいことに、リスクを受注者に負わせてはなりません。社員の命を第一に考えない経営者は経営者失格です。国民もそうです。未だに3密を避けるための自粛をせずに、厚顔無恥を装っている人たちの無神経さを、どうやったら正すことができるのか想像できません。このような危機的な災いは、必ず最悪の事態を想定して手を打つべきです。それがリスクマネジメントの王道だと思います。意思決定を先延ばししたり、手ぬるい妥協をしたりしてはなりません。やり過ぎくらいが丁度よいのです。

今回のコロナ禍で、産業構造は一気に変わりえると十分分かったでしょう。いや、まだ分かりませんか?。相変わらず「見たくないものは見えない」のですか?。例えば、シェアオフィス大手のWeWorkは去年から上場に向けたプロセスに入っていました。ソフトバンクが莫大な資金を投入し、リターンを得ようとしていました。しかし、創業者アダム・ニューマンの放漫経営や、実は利益が出ていなかった財務状況など露呈し、新しいCEOを送り込み、立て直しを進めている最中でした。そこにコロナ禍。もちろん、今は誰もシェアオフィスなんて使いません。多くは閉鎖、更に不動産オーナーへの支払いも滞っているようです。更に資金を投入し80%の株式を保有するオーナーになる予定でしたが、買取は宙に浮いています。これは何を示しているのか。もちろんファンドとしてのありようが、美味しいとこどりのアプローチのリスクが高まり、戦略を大きく変えざるを得ないところまで追いつめられている、ということを示しています。それだけではなく、ある日突然特定の産業セクターが消失してしまうということが、正に目の前で今起ころうとしているということです。

また、スタートアップの多くが豊富な資金の行き先になり、増資増資と得た資金で、人を雇い、開発を加速化し、マーケティングコストを投入しイケイケだった状況だったわけです。それが一気に変わるかもしれません。コロナ禍により、多くの分野が事業化の見通しが立たなくなり、増資は期待できず、オフィス縮小、人員削減、マーケティング活動にブレーキ…となってきます。

スタートアップへの投資は何もファンドだけではありません。多くの企業が投資に積極でした。これからどうするのか、よくよく考えスピーディーなアクションをとるべきです。何も一律にブレーキを踏むだけが解ではないかもしれません。今まで冷たくされてきたスタートアップから、助けを求められるかもしれません。安価に買収できるチャンスなのかもしれません。企業は高い上空からマーケットを見下ろし、何がピンチで何がチャンスなのかを見極めなければなりません。よく見て、調べて、知って、判断して、行動するまでです。今の状況は「Chaotic(カオス)」ですか? つまり因果関係がなく状況は時々刻々変わり続けるのでしょうか? それとも「Complicated」ですか? つまり状況は込み入っているけれど因果関係が必ずあり、正解はあるという状況でしょうか? 前者であれば、リーダーはこの状況から早く抜け出すことだけを考えなければなりません。火消し最優先です。後者であれば、分析は可能なはずです。分からなければ専門家を探し、教えを乞うのです。

 

■定時を作る

在宅勤務≒テレワークが進むと、生活のリズムが狂います。通勤地獄から解放され睡眠時間が延びるメリットはあるものの、昼休みもなくだらだらと長時間座りっぱなしで仕事をしたり、一人で仕事に不適格な環境で籠ったり、孤独感を抱えたり、ストレスを溜めたり、腰痛や首や肩の痛みに苦しめられたり、夫婦関係がひび割れたり…いろいろな問題が出てきますね。

リズムを作り孤独を溜めないためにお勧めなのが、「定時」を作ることです。朝のウォーキングもそうですが、私の勧めはzoomなどのツールを使い、朝決まった時間に関係者がネット上に集うのです。内容は朝礼+何か?をそれぞれ工夫すればいいと思います。それから、普段のオフィスで行われる雑談が無くなった代りに、例えば3時にzoomCAFEを30分だけというように決めて開催するのです。また、テレワーク中に1on1を毎週行う手もありますね。更に、毎日夕方仕事終わりに「パルスサーベイ」を行い、チームで共有する手もあります。孤独やストレスを感知しチームで助け合うためです。zoom飲み会は定着しつつありますね。上記はオフィシャルに堂々と楽しくやるのです。それが大切です。

イデアを出し合い、乗り越えていきましょう。