変わることが絶対条件 アトキンソン氏の警鐘

f:id:taka-seed:20200407145052j:plain

私の好きなモッコウバラも少しづつ始めました。地味で小さな花ですが、たくさん咲くとなんだかいたいけな感じがして…あいらしいく感じるのです。

 

「日本人の勝算」(デービッド・アトキンソン)を読みました。「積読」の一つでしたw。

彼は「変われない日本」を痛烈に批判しています。「計算機を叩けば(データを見ればという意味)、明らかに日本経済のあり方を変えないと国が亡びることが分かるのに、それに本格的に取り組んでいる人は少ないように感じます。また、諸外国に比べてより改革が必要なのに、先進国として日本は最も改革しにくい国だと思います。

誰かが『日本人の変わらない力は異常』と言っていましたが、全く同感です。

私はこれまで、金融業界、文化財業界、観光業界で、どんなに小さいことでも反対の声ばかりが上がり、なかなか改革が進まないことを痛感してきました。

これだけの危機に直面しても、自ら変わろうとしないのは、普通の人間の感覚では理解できません。異常以外の何物でもありません。

なぜ、こんなにも頑なに変わろうとしないのか。変わる必要がないと思っている人たちは、こんな理屈を述べ立てます。

日本は世界第3位の経済大国である。

戦後、日本経済は大きく成長してきた。

日本は技術大国である。

日本は特殊な国である。

よって、日本のやり方は正しいし、変える必要はない

私が『変える必要がある』と指摘すると、次のような反論が返ってきます。

日本はお金だけじゃない、もっと大切なものがあるんだ。

前例がない。

海外との比較は価値観の押し付けだ。

今までのやり方は日本の文化だ。

見えない価値がある。

データ、データと言っても、データはいらない。

更に、本音を言う人は『俺はこれ以上頑張るつもりはないよ』と言います。

このような偏屈とも言える意見を持つ人が少なくないのは、日本人の平均年齢が上がっていることに原因があるという人もいます。40歳を過ぎると人間はなかなか変わろうとしませんし、新しい考え方を受け入れなくなる傾向があります。日本は国民の平均年齢が40歳に近いので、社会全体が変化をしづらくなってきているということだそうです。

いずれにせよ、重要なのはこの頑なに変わらない日本という国を、どう動かすか、動かせるかです。」

全て同感です。皆さんが所属する企業はどうでしょうか。上記の変わりたくない人たちのコメントと同じような言葉を、何度も聞いたことがあることでしょうね。特に歴史の長い大企業ではまるでコピーしたかのような感覚ではないでしょうか。

10年も20年も前から計画だけは変革志向で、あたかも現状に未来はないから変わるんだ的メッセージに溢れていたりします。しかし、何年たっても、成長戦略や中期経営計画で述べられていることは、ほぼ同じ。即ち何も変わっていないのです。言っているだけ。本気で変わろうとする人は、経営幹部もミドルも現場も誰もいないのです。いや、それは言い過ぎですね。いるかもしれませんが、結局なぜだか変われないのです。

議論はいつも表面的。腹の底から危機感を感じている人はぼぼゼロ。変われない自分たちを自虐的に厳しくダメ出ししてきた人もほぼゼロ。やったふりして厚化粧して自己満足に浸り、悪いのは上司だと人のせいにしている。

アトキンソン氏の言っているようにオッサンのムラ社会の閉鎖性は、最悪ですが、年齢が高いから保守的なわけではないと感じます。若い人も入社数年のフレッシュなときを過ぎると、どんどんフレッシュさを失い、現状是認型に変わってきます。青臭い議論を闘わせることもなく、すぐに諦めます。「もう知らない」と。そして、去っていくか、会社に寄りかかる寄生植物人生かを選択しますね。最低です。オッサンの価値観は年齢性別等に関係ありません。

前にも書きましたが、縦割りの価値観にがんじがらめなことも最悪です。隣のセクションはもとより、他社や業界全体などに興味がないのです。更に、自社の状況ですら興味を失っているのです。それでは、変わろうとするエネルギーが出るわけがありません。

頑として動かない、表情すらない石のようです。

変化を拒否する人や寄生植物には去っていただくしかないと強く思います。企業も国も競争社会の中で生き残り、成長し続けなければ死ぬのと同じなのです。

 

日本人の給与水準はもはや先進国では凄く低く、物価も同様です。産業構造は昔のままで、従業員が30人未満の中小企業の比率は30%です。250人以上の企業はアメリカで50%なのに対して、日本では13%。生産性、女性活躍、輸出比率、研究開発、人材育成などいろいろな面で、従業員の多さ(≒企業の大きさ)と深い関係があるそうです。即ち、中小企業の方が、生産性は低く、女性は活躍せず、人材育成はしない… 最低賃金は凄く低く、同一労働同一賃金ですらやっと今月法律が施行されたばかりですね。昔からほぼ何も変わっていません。

 

日本は課題先進国。って言ったって褒めているわけではありません。もうすぐ先には、生産年齢(15~65歳)人口1人当たり、1人の高齢者を支えるだけの社会保障費の支払い能力が必要になるのです。現状は2人に1人くらいですから、今の倍です。もっともっと収入を上げて税金や医療費を払うようにしなければなりません。税率など率を上げなくても、収入を上げればよいのです。同一労働同一賃金を定着させ、最低賃金を上げ、女性の就業率を上げ、定年を上げていくなどを速やかに実行する必要があります。現役世代も、儲けられる人はどんどん儲けてください。兼業・副業など可能な限り頑張ればよろしい。企業は人件費を抑制するのではなくて、生産性を上げるとともに、安売りを止めて価値に見合った価格で売るようにすればいい。

ビッグマック指数」って聞いたことがあるでしょう。公平に世界の物価を比べる指標です。それを見ても日本は物価が安すぎる。不動産は高いし、電気料金も高いはずなのに、日本のビッグマックはタイやアルゼンチンなどより安い。中国とほぼ同じ。為替を加味しても、6割くらい高くなければアメリカと同価格とは言えないのです。もっとインフレにならなければ、世界においてい行かれます。多くの国の人々は日本で働くメリットがないのです。給与が安すぎ、かつ世界で通用しない日本語を話さなければならないのですから。遊びに行く対象の国というだけです。アベノミクスも日銀の政策も残念ながら、効果は出ていないとしか言いようがありません。もっと胆な政策チェンジと企業の変革が必要です。

 

物価が安いのに輸出が伸びない。競争力がない。伸びているのはインバウンドだけ(それもコロナ禍でガタガタ)。なぜ競争力がないのかよく考えてみましょう。物価が安いのに製品価格は安くなく、魅力的でもない。生産性の低さとマーケティングの下手さが大きいでしょうね。できることはたくさんありますよ。変革なくして(改善ではありませんよ)競争に勝利するなんてあり得ません。

向き合うべきは、顧客であり世界です。決して上司ではありません

 

先ほど書いた中小企業の生産性の低さについて、少し書き加えましょう。

北米では以前から、“Young and small always win”と言われてきました。これは、いわゆるレガシー企業即ち“Old and big”を揶揄する言葉です。ここで考えなければならないのは、一様に前者が素晴らしく後者がどうしようもない、ということでは全くないということです。ちなみに日本の多くの中小企業は”Old and small”ですが…

すべての人格には(企業も)“Being”“Doing”があります。前者はある姿、ありたい姿、あるべき姿などを示し性質や性格などをがそれにあたります。後者はやりたいこと、やるべきことなどを示し行動がそれにあたります。

例えば、“Young and small”“Being”は青臭くて自由で刺激的などですね。“Doing”は素早い意思決定や試行錯誤などですね。

それに対し、“Old and big”の“Being”安定的、確実で信頼感があるなど。“Doing”は巨額な資金を動かし、確実な統制をとるなどでしょう。私のイメージですが…

“Young and small”と“Old and big”には各々長所と短所があります。お互い一見真似しにくい特徴と言ってもいいでしょう。それを明確にしましょう。皆さん議論してみてください。双方とも長所を伸ばし、短所を殺せばいいのです。そして他方の長所を実現できるにはどうしたらいいのかを考えるのです。それが変革です。例えば、大企業の良さを残しながら、スタートアップの素晴らしさを取り入れるにはどうしたらいいか?という具合です。できなくはないですよ。できるわけがないと思っているとしたら、それは完全に「認知バイアス」に犯されていますね。相手のことをうらやましいと考えているだけでは何も始まりませんよ。考えてみてください。相手はあなたのことをある点でうらやましいと思っているんですよ。

 

こういう議論を楽しむところからが、変革のスタートです。楽しいですよw