神岡教授「デジタル変革とそのリーダー CDO」


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秋らしくなりました。写真は近所のテニスコート。早朝は誰もいなかった。


旧知の一橋大学の神岡教授から最近上梓された「デジタル変革とそのリーダー CDO」を送っていただいた。さっそく読んでいる。

企業から見た価値創造は、単純化すると「連続的価値創造」と「非連続的価値創造」がある。後者は、従来のビジネスや価値創造の延長線上になく、非連続であると同時に方向性も異なる。即ち、今までの経験やビジネスで学んだことが通用しない。今の競争力を前提としていない。「自分たちが持っていない能力や競争力に基づくこと」即ち、「将来の競争力を重視した価値創造」を指す。彼は面白い表現をしている。英語で言うと"Radical"や"Breakthrough"だというのだ。分かり易いね。

先生の言う、「連続」「非連続」は以前にHBRに連載されていた濱口さんの連載「イノベーションの作法」の中に登場する「SIFT」と「JUMP」の違いに似ている考え方だ。

更に言うと、クリステンセン教授の言う「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」とも近い。

現代のビジネスマンはこれらのセンスを持たなければ、変化の激しい荒波を上手く泳いでいけない。溺れて死ぬだけだ。自分たちが進む方向の可能性や競争優位性、更にリスク(前者で居続けるリスク)を洞察・判断できるセンスを持たなければならないし、後者を実現するために会社の体質、文化、組織などをどのように変革させていくべきかに、不断のチャレンジをしていかなければならないのだ。正に「Radical」を恐れる守旧的バイアスまみれの文化を壊さなければならないのだ。

しかし、同時に理解しなければならないことは、全社が一気に後者にシフトしてしまうと、恐らく会社は死滅してしまうだろうということ。以前にお会いしたGEの元CEOイメルト氏もそのようなことを言っていた。神岡さんも「企業にとっては連続的価値創造で収入を最大化したり、投資を回収したり、経営を安定化することも重要だ。逆に非連続的価値創造だけだと成長は先細りになっていつか衰退するので、結局、従来型企業には連続的と非連続的の両方のタイプの価値創造を行う能力が求められるのだ。」と書いている。いわゆる「両利きの経営」とか「二階建てのイノベーション」と言われていることだ。正に先生の仰る「Ambidexterity(両手利き)」。

これだけ、先人達がいろいろ指摘するDX。それでも変われない企業。否、変わるか変わらないかは意志だけの問題だ。

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上岡さんに頂いた彼の最新著作