秋雨前線が天気予報のメイントピックになった今日この頃です。線状降水帯という言葉も最近よく聞きます。去年から本当に九州を中心とした西日本は本当に悲惨な災害に襲われ続けています。しばらくは予断を許さないようなのでどうかお気を付けください。
近年本当に企業の浮沈が激しいですね。時代の雄として名を馳せ株価の高騰など注目を集め、前途洋々と皆が感じていても、一気に業績が悪化する企業もありましたね。
■パイの拡大との同期
そんな企業の一例がアメリカの半導体大手NVIDIAです。もちろんシリコンバレーにあります。1993に発足した歴史の短い企業です。安価なGPUが馬鹿売れしその資金でどんどん高性能な製品を発表、さらに2016頃のディープラーニングブームの時に、彼らのアーキテクチャがディープラーニングに適していたことから、一気に成長したのは皆さんご存じの通りです。現在では自動運転などAIの分野でその技術力を生かしリーダー的存在です。
そのNVIDIAの業績がさえない。8月に発表した5~7月期の決算は、前年同期比売上が17%減、利益が50%減だった。彼らのテクノロジーが急速に競争力を失ったのであろうか? 恐らくそうではあるまい。彼らは先を行き過ぎていた。自動運転はまだ先、データセンターにAIのチップが大量に入るのなんてあと何年かかるか。目先のGPUはどんどん安価になり、汎用品は競合が増えたのでしょう。流通在庫を抱え苦労もしていたようです。
チップのような最先端テクノロジーですら、参入が多い。最近では米の輸出制限のせいで、ファーウェイがあっという間にオリジナルのチップやOSまでもを自社開発したり、遡ればグーグル、アマゾン、マイクロソフト、アップル、アリババ、テンセント、バイドゥ、フェイスブック、テスラなどのチップベンダー以外のテック企業も参入してきた。マーケットのパイの拡大と、テクノロジーの優位性維持が上手くシンクロしていないと、結局美味しいところは他社に持っていかれる。難しいのはパイの拡大のスピードの読みです。予測より速いだ遅いだの話はたくさん聞いてきたでしょう。いくら推測しようが分からないものは分からない。たまたま先行の旨味を獲得してきた企業もあれば、その逆もある。ファブレスの場合は市場が大きくなった時にはノウハウが委託先に移っていたなんていう、ケースすらある。日本の液晶などはその典型的な例のようですね。
同社がどうなるかは全く分からない。恐らく状況は改善していくでしょう。テクノロジーのリードはまだあるし、VRやCGなどはアプリケーションがどんどん先鋭化しているし、リーダーのポジションは変わらないだろう。しかし、まだマーケットが小さいかな??
■老舗の格闘
GEの業績悪化は2016頃からマスメディアにたくさん取り上げられました。調べてみると、FY15には既に売上、営業利益とも大きく落としている。以前は成功事例としてケーススタディーの常連だったのに。
2017/8 イメルトCEOに代わりフラナリーCEO誕生
2017/12 電力部門で1.2万人の削減発表
2018/10 フラナリーCEO退任、カルプCEO誕生
7~9決算で四半期として過去最大の282億ドルの最終赤字
2018/12 産業用ソフト子会社の売却、デジタル事業の分社化を発表
2019/2 バイオ医薬事業を米ダナハーに214億ドルで売却を発表
2019/8 不正会計疑惑が浮上
FY18の減損とは、15年に97億ユーロ(約1兆2500億円)で買収した仏アルストムのエネルギー事業ののれん代の減損のこと。恐らく高掴みしていたんだろう。GEともあろうものが…と感じざるを得ませんね。裏事情は分かりませんが…。
遠因にはのれんを償却しない米国会計基準によって、幻を見てしまっていたことがあると思われます。もちろん日本基準であろうが本質は変わらないわけですが、株主の圧力が強い米国においては、お化粧を施すのには都合がよいのでしょうね。
その間、同社はGEキャピタル、家電部門、水処理ビジネス、GEトランスポーテーション、インダストリアル・ソリューションビジネスなどを売却(中も含め)してきました。
8月になって保険事業で380億ドルの損失隠しがあることを会計専門家から指摘され、否定はしているものの、株価は急落している。
新CEOは更にピンチに立たされ、ともかく財務的な健全性を確保するため更なる売却等に走らざるを得ないという推測がもっぱらです。
どうしてこのようなことになってしまったのだろうか。世界で見本とされる企業、成長を続けてきた優れた経営方針や人材育成戦略、すべて尊敬の対象だった。そのポジションを維持するために、デューデリを疎かにするなど目先の繕ったバラ色の将来を描こうとしていたのだろうか。それは奢りなのか、出世争いがなせる強弁が、見たくないものは見えないという現象を生んでしまったのか、古い体質が忖度文化を生み出し、裸の大様を作ってしまったのか、なぜなのだろうか?
いずれ、この歴史は多くの大学などの研究によりケーススタディーの対象になるだろう。学ぶべきことは多いはずだ。
忘れてならないことは、大変残念な近年の歴史ではありますが、多くの日本企業にとって見習うべきことが沢山ある優れた企業であることに変わりはないということです。
■何を学ぶか
今回2社の話を取り上げましたが、このような業界や企業はたくさんあるでしょう。皆さんが所属する企業も常にそのような市場の変化やテクノロジーの変化に晒されています。同時に、それに対応する経営システム(幹部の意思決定プロセスや文化など)やCXOをヘッドとするアンテナの高さや抽象化する力によって、慧敏な対応力が決まってしまう事実に気付くべきです。
それは経営陣の問題に局所化してはなりません。事業ラインの管理者のセンスや感性、実はHQの経営企画以外(それは当たり前)の総務や人事や経営システムや財務や法務などのスタッフ幹部の市場に対する真摯な対峙姿勢が大切なのです。特に後者に気づいている企業はほとんどいないのではないかと憂慮します。
これからも見たことのない変化に晒されます。その時にどう対処するのか。少なくとも「想定外です」という言葉は聞きたくないものです。