小林さんのハラペーニョ



今回の記事は社内ブログ( 2019/02/03)を改変して転載しています。

 

■軽井沢

数年前の夏、毎年行われているNECがスポンサーの“NEC軽井沢ゴルフトーナメント”のプロアマ大会で、私はある経済界の大物と一緒にラウンドした。組み合わせは事務局で決めるのだけれど(女子プロは前夜祭の抽選で決める)、そのときは事務局から「ちょっと対応が難しい方がいらっしゃるんですが、その方と回ってくれませんか」と頼まれた。清水さんなら怒らせることなく上手くやってくれるでしょうと彼の顔に書いてあった。「いいよ!」と私。そのお相手とは、経済同友会代表幹事の小林喜光さん(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)だった。

小林さんの話を直接聞いたことはあり、辛口だとは分かっていたものの、面と向かって話すのは初めて。事務局のコメントが多少引っかかったまま丸一日ラウンドそして表彰パーティーとご一緒した。謙虚で優しく私にまで気を遣ってくださる笑顔がチャーミングな方だった。私の不躾な質問にもフランクに答えてくださり、私はその一言一言の裏に彼の強い意志を感じたのでした。彼はその時点で、三菱ケミカルには時間的に1割程度しか充てておらず、残りはすべて同友会などの経済界に投入しているとのこと。それは彼に強い危機感があるからなのだった。このままでは日本は死ぬという危機感。

 

■敗北

その彼のインタビューが1/30の朝日新聞に載った。最近彼は「日本が2度目の敗北に直面していると危機感」を持っているという。「平成の30年間、日本は敗北の時代だった」と。

例えば、30年間で世界の企業の時価総額はガラッと変わった。日本企業がトップ10の8割方を占めていたが今や1社もいない。更に上位はネット系が占め、モノづくりの企業はほとんどいない。「企業の盛衰が反映するGDPでも伸び悩む日本に対し、米中は倍々ゲームで伸ばしていったのです」

「テクノロジーはさらに悲惨です。かつて『ジャパン・アズ・ナンバーワン』などといい気になっているうちに、半導体太陽電池、光ディスク、リチウムイオン電池など、最初は日本が手がけて高いシェアをとったものもいつの間にか中国や台湾、韓国などに席巻されている。もはや日本を引っ張る技術がない状態です」更に彼は通信の世界でも5Gでは後塵を拝し、自動運転や遠隔医療の時代にこの有様ではこれを「敗北と言わず、何を敗北と言うんでしょうか」と剛直球を投げ込んだ。

 

■事実を直視する

日本人にはなぜかすぐ追いつけると無根拠なのんきさが強い。なぜか? それは事実を事実と受け止めないからだと仰る。本当に同感だ。恐らくどの会社でもある。当社にも存在しているのではないだろうか。外の技術や営業力など競争力を相対的に低く見て、自社のそれを高く見る傾向。無根拠だ。都合の良いように見ているだけ。これは致命的な問題なのを分かっていない。上司が聞きたい報告を捏造しているようにね。最悪だ。社内の報告書もその傾向が強いね。耳障りが良い内容そして表現。なぜ自虐的な反省が全然出てこないのか? そんなに素晴らしいのだったらもっと儲かってるはずでしょ。最低だ。

アベノミクスに対しても辛口だ。「『財政出動、金融の異次元緩和を進めるから、それで成長せえ』と言われました。しかし本来は時間を稼ぐため、あるいは円高を克服するために取られた手段で、それ自体が成長の戦略だったわけではないのです。この6年間の時間稼ぎのうちに、なにか独創的な技術や産業を生み出すことが目的だったのに顕著な結果が出ていない。ここに本質的な問題があります」

内閣府の2018年6月の調査でも74.7%の国民が今に満足していると答えています…心地よいゆでガエル状態なんでしょう。日本全体は挫折状態にあるのに、挫折と感じない。この辺でいいや、と思っているうちに世界は激変して米中などの後塵を拝しているのに、自覚もできない

皆で楽しく生きていきましょうという空気が取り巻いて敗北を自覚しない

「経済、技術を通した地経学的な見地が死活的に重要です。現在は歴史的な革命期にあると皆が認識すべきです。5GもAIもサイバーセキュリティーも、日本は本当に遅れてしまい、基幹的な技術を欧米や中国から手に入れなければ産業、社会が立ちゆかなくなる。外国政府や企業を無視しては国家全体が成り立たなくなる。リーディングインダストリー(成長を引っ張る産業)を自国の技術で育てることができず、他国の2次下請け、3次下請けとして食いつなぐ国になってしまう」

日本はどうなっていくのだろうか。以前にも書きましたが2017年ギャラップ社が世界的に行った従業員エンゲージメント調査によると、日本では熱意あふれる社員はわずか6%139カ国中132位やる気のない社員は70%に及んだ。同時に上記のように“今に満足している”?って。やる気はないけど満足しているってこと? どう解釈すれば良いのだろうか????

トランプ氏の内向き政治に辟易する一方で、日本人がどれだけ内向きなのか世界の競争環境を知ろうともせず、自社の技術や能力が世界の中で戦えるレベルにあるのかどうかすら、分かっていない。それが問題とも思わない。なぜなら、外を知らないから、内部でやった振りだけしていれば自己満足に浸れて、いっぱしの給与ももらえるから。自分達が劣っていると正直に言っても、古い価値観に縛られている仲良しクラブの心地よさで茹だった独善的かつ決定的に視野の狭いオッサンに一喝されるから? それじゃあ日本はダメになるよ。

 

■リーダー達よ

外を見よう。事実を事実としてとらえ自虐的とも言える反省をしよう。どれだけ劣っているのか、どれだけ井の中の蛙でいたのか。じゃあどうすれば良いのか? 

闘え!!

変革していこうとする意志をめらめら出すのだ。今までの既定価値観を捨てよう。縦割りのテリトリーを捨てよう。上司の顔を思い浮かべるな!

 

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唐辛子

可愛いけど辛いというのが良いねw  これ、唐辛子ですよ。