「持続的企業価値を創造する人的資本経営」と伊藤先生

3/26夜「持続的企業価値を創造する人的資本経営」というオンラインセミナーを

聴講していました。これは経産省が主導して、一橋大学伊藤邦夫先生を座長として

まとめられた通称「人材版伊藤レポート」をトリガーとしたセミナーです。素晴らしい

プログラムでした。

その中で紹介された、下記のレポートは必ずお読みになったほうがいいと思います。HRに関わる方のみならず、ビジネスリーダー全員に向き合ってもらいたい内容です。

20200930_1.pdf (meti.go.jp)

20200930_3.pdf (meti.go.jp)

 

以前から書いているように、HRは経営戦略以外の何物でもありません。変化の激しい時代をうまく泳いでいくためには、企業自らが変わり続けるしかなく、それを支えられるのは変革人材だけです。リーダーがHRを戦略としてとらえ、採用、育成、リテンションをおざなりで終わらせないよう、組織全体で取り扱っていかなければなりません。そのためにはこのレポートのような価値観を腹落ちさせておくことが最低限のベースラインです。

 

セミナーでは多方面の方から貴重な指摘も出ています。少しだけ抜粋。参考になりますよ。

オックスフォード大学客員教授 ロバート・エクルス 氏や、コネクレーンズ社外取締役 (シーメンス 前 CHRO) ヤニナ・クーゲル 氏からは、                            

・企業の投資は無形資産にされるべきで、そのほとんどを人的資産の投資にすべき。

取締役会の重大テーマの一つが人的投資。

・取締役会でパーパスステートメントを策定すべし。

CHROと投資家の対話が必要不可欠。投資家は人事戦略の実効性を確認したいのだ。

経営企画部と人事部の密なコミュニケーションがなければだめ。

事業戦略は人材戦略と共に策定されなけれ実現できるわけはない。必要なスキルは何で、それを持つ人材が社内にいるのか、獲得できるのかがすべてYes でなければ戦略はないのと同じ

・タレントマネジメントを緻密に行い、成し遂げたいこととのGapを明確にしなければ   ならない。

 

株式会社三菱ケミカルホールディングス 取締役会長 小林 喜光 氏からは、

・CEOを外からリクルートする(ベルギーから)など、大胆な人事戦略を推進する。

その戦略策定は若手に委ねた。これまでの人事部ではできない。頭の中は管理するこ  とだけ。

リスクテイクしなければ新しいことはできないのに、それでは無理。既にCXOの多くは外部登用。

・事業ポートフォリオを大胆に変えてきた。必要な人材もどんどん変わる

 

株式会社丸井グループ 代表取締役社長代表執行役員CEO 青井 浩 氏からは、

・丸井は創業者の孫が現在のCEO。変わって10数年。昔の丸井とはまるで変った。部長会議は暗いスーツのオッサンだけだった。居眠りをしている奴もいる。これではだめだと、全社員の中で参加したい人は誰でも参加できるようにした。若手、女性もたくさん参加し、会議は活性化し、様変わり。企業文化はそう簡単には変わらない。10年かかる。

・人的投資をどんどん増やし、IT人材は全員内部登用。9割が文系。アジャイルにどんどんDX。若手の好きなようにやらせてきた。現在史上最高の一株当たりの利益になった。人的投資は企業文化改革だ。

 

花王株式会社 取締役会長 澤田 道隆 氏からは、

・人を育てるのではない。人が育つのを支援する。可能性を見出し、気付き、気付かせ

持てる力を発揮させる。人的資本と考える。管理ではない、潜在力支援。人材ではなく人財。

・経営戦略を考えるときは、グランドデザインの時に人材戦略を入れること。

中期経営戦略は若手中心。思い切った人材登用、若手、女性、社外。

今までのやり方を全否定しないと変革は起きない。延長線上でなく抜本的に考え直すことが必須。既に引かれた路線を少しずつ手当てしていくのでは無理。

・昔は経営会議で一人が反対すると止めていた。今は、一人がやりたいと言えばやらせる。

 

花王澤田会長(2021.1.1社長から会長に)は、実は今から16年前、一橋シニアエクゼクティブプログラムという学びの場で私と同クラスでした。研究者で知的だ温和な方だったという印象。腹には強い信念を持つ変革者なのですね。

ちなみに座長の伊藤先生は私が45歳くらいの時に社内選抜研修の先生でした。懐かしい。私よりだいぶ先輩のはずですが髪を染めているせいか、すごく若く見えるw

 

企業を変革させるのは並大抵の努力では成し遂げられない。経営陣の強い危機感と本質を見つめる力、リーダーの変革マインド、そして何より職場の心理的安全性が必要不可欠だと思います。

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私が好きな「モッコウバラ」も咲き始めた。もうすぐ無数の花が咲くのだろう。その姿は若い人たちが競うように光っているようだ。

 

デジタル市場とビジネスモデルジェネレーション

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桜は日本人の心の象徴。しかし、その美しさも永遠ではない。近くの桜並木は多くの古木が根元から切られてしまった。新陳代謝は常に付きまとう。

優勢種でもあっという間に死滅してしまう変化の激しい時代。気付いた時にはディスラプターが隣に座っていたりする。時代は変わった。今までの価値観、プロセス、手法、やり方の多くは通用しない。その典型がデジタル化。

デジタル化の進展により、産業構造や市場はダイナミックに変わる。イノベーションはX-Tech抜きには論じられない。テック企業ではもちろんのこと、テック企業以外でも、自分では無関係だと思っている人も含めて、テック抜きにして将来の事業成長は描けないと言っても、過言ではないでしょう。

以下の3つは読んでおくと良いですよ。感覚を磨いてください。

デジタル市場とは?経産省資料からひも解く、CPS社会への道筋 連載:第4次産業革命のビジネス実務論|ビジネス+IT (sbbit.jp)

「デジタル市場に関するディスカッションペーパー」

20200108002-1.pdf (meti.go.jp)

「DXレポート2」

デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました (METI/経済産業省)

 

そして、デザインシンキング。ビジネスリーダーは以下の本を参考にしてほしい。

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書 | アレックス・オスターワルダー, イヴ・ピニュール, 小山 龍介 |本 | 通販 | Amazon

バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る | アレックス・オスターワルダー, イヴ・ピニュール, グレッグ・バーナーダ, アラン・スミス, 関 美和 |本 | 通販 | Amazon

疎外とチームとモチベーション

誰しもこんな経験をしたことがあるのではなかろうか。特にこのコロナ禍において、多くなっているのでしょうね。

社会から疎外されていると感じるとやる気を失う。どうせだれも私のことなど気にしない。あらゆる意欲を失ったりするだろう。一方で、誰も私に興味を持っていないと思うと、規則を無視したり、飲食や喫煙など自己破滅的な行動に走るかもしれない。「自棄(やけ)になる」感覚。

モチベーションが湧かない時に、飲食や一時の娯楽に溺れてしまう人も多い。しかし、このように自分を甘やかしてしまったり、一時的な快楽に逃げると、状況はさらに悪化すると言われている。そんな反動を僕も経験したことがある。かえって落ち込んだのです。

そんな時に、人の心がつながっていることがいかに重要なことなのかがよく分かる。仕事においては、チームの存在が最も大切なのですね。チームのことを気にかけ、皆のために我慢したり応援したり、一人一人のプライベートに興味を持ち、価値観を披露し合い、将来を語り合い、週末に何があったかを話す。今日の進捗を喜び、一人一人の明日に期待する。

そういうチームを作りましょう。誰が作ってくれるわけでもありません。一人一人のちょっとしたインクルーシブな気持ちと行動があれば、きっとできる。まずは行動です。決して待ってはいけません。

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空の青さと光の暖かさが共存する季節

 

3.11に思う

3.11 東日本大震災から10年がたつ。都会の高層ビルのオフィスにいた僕は、前日に痛めたギックリ腰のせいで階段が下りられなく、止まったエレベーターのせいで、乾パンを食べておとなしく夜を明かした。それからの毎日のことはよく覚えている。

福島原発事故に関していろいろ語られてきたけれど、先日の報道によれば、最近になって判明した事実も多く、あの水素爆発やメルトダウンは避けられたかもしれない。原発のような人命にかかわる重要インフラでるにも係わらず、長期間使用継続する設備の構造やリスクに関して正しく理解している人の知識や体制や精神や文化や訓練が、サステナブルに維持強化されていなかった状況だったと理解した。

2/28 福島第一原発3号機の使用済み核燃料566本を取り出し完了したと報道された。もちろん私たちにとってそれは一筋の光であることは間違いない。しかし、それも予定より4年4か月遅れ。更に、メルトダウンした核燃料の処分は未だ全く目途すら立っていない。とてつもなく長い道のりを進まなければならない。

最近分かったことのひとつは、非常用復水器の訓練をしていなかったということ。北米では毎年それを非常時に備えて動かす訓練をしている。しかし日本ではしていなかった。それが冷却ができているのか否かの判断ミスにつながった可能性がある。

なぜ非常事態を想定しやるべき訓練をしなかったのであろうか。そんな非常事態が起こるわけがないという決めつけ。津波の高さもそう。研究者の予想は既存の防波堤をゆうに超える高さの津波が起こりえるというものだったが、防波堤は強化されることはなかった。

日本人が苦手なこと。それは最悪の事態を想定して対策・訓練をすること。ホラーストーリーは語られない。見たくないものは見ない。

今までも何度も語られてきた「無謬性(むびゅうせい)の原則」。「ある政策・計画を成功させる責任を負った当事者・その組織は、その政策が失敗した時のことを考えたり議論したりしてはならない」即ち、絶対安全なものを作ると決めたのだから、万が一のことを前提とした議論をしてはならない。安全なんだからその必要はない。そんな議論をしたら安全ではないということを認めたことになる。という考え方なわけだ。ホラーストーリーが語られるわけがないのだ。企業においても同じ。シナリオプランニングがほとんど意味をなさないのも、都合の悪い事実に正直に向き合わない一種の官僚主義に染まっているのだ。日本人の最も悪いところ。かなり致命的にどうしようもない。

 

気が付きませんか? COVID19もそうでしょう。最悪の事態を想定した手を全く打てていない。すべて後手後手。政府も自治体も医師会も皆そう。ワクチンが効かない、感染力が強い変異種が拡がり、感染者が1日1万人になる可能性はあり得る。1千人を超えたあたりで感染病棟は満床、重症者は選別治療になり、入院待ちの人が家庭に溢れる。もちろんそんな準備は全くできていない。大丈夫だと言いたい人たち、経済優先を叫ぶ人たち、ホラーストーリーの議論を妨げてはなりません。官僚に期待はできない、医師会関係者にもできない、だったら誰に期待すればいいのだろうか。学者がもっと声を上げてほしいものです。西浦教授が去年かなりバッシングされたけれど、結局は彼の見立ては正しかった。あのような見たくない未来を共有すべき時ではないだろうか。

3.11を反省のトリガーにしなければならないと思うのですよ。

 

それができないのであれば、明らかに失政ですよね。

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ももの花は個性がある。主張を感じる。

 

クリエイティビティ

今日は創造力、即ちクリエイティビティの話をしたい。

世界経済フォーラムが2020年に発行したレポートの中に「第4次産業革命で活躍するために必要な10のスキル」がある。そこで「クリエイティビティ」が3位になっている。ちなみに、1位は「複雑な問題解決力」、以下2位「批判的思考」4位「マネジメント能力」5位「他者との調整力」6位「感情的知性」7位「決断力」8位「サービス設計力」9位「交渉力」10位「認識の柔軟性」となっている。変化の激しい時代で何が必要かを端的に表わしているように感じる。

クリエイティブな発想のために重要なことは、ものごとの本質を見ることだ。人の行動に向き合い、欲求の原点に行きつくと言ってもいいかもしれない。事業開発のシーンだけでなく、経営の現場でも、マーケティングのプロセスでも、R&Dの日常でも、あらゆるビジネスの中に「デザインシンキング」の考え方が必要不可欠になっているのもその現れ。デザインシンキングはもはや創造的に問題を解決するための当たり前の考え方なのだ。

クリエイティブでいることとD&Iは深く結びついている。人間はチームがなければ孤独で、チームに多様な考えが存在し皆がインクルーシブでないと、イノベーションは起きない。心が通ったオープンなコミュニケーションがなければ、チーム内でアイデア化学反応が起きない。個人個人の人生観や仕事観、宗教観、経験、センス、スタイル、美意識・・・あらゆるものが違うから視野が広がる。一人の力で、「広く見る、深く見る、先を見る」のはなかなか難しい。一人の力で世界を観察することはできない。排他的な価値観では実現できないのがクリエイティビティなのだ。いかに、知識も知性も教養も持ち合わせていようが、一人では創り出すことはできないと思う。

デザインシンキングを理解していないリーダーは、存在できなくなるだろう。今までの延長線上に未来は見えないのだ。そして、クリエイティビティの欠如は、チームにとって致命的だ。開放性に富んだチームをつくり、混ざりあう混沌を楽しみ、化学反応を称賛し、不確実性の高い状況の前で、ブレーキをかけることなく自由なチャレンジを楽しむ。そんなリーダーでなければ、将来は創り出せない。

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春が来た

 

グループシンクを避けましょう

すっかり春めいた天気が続きますね。私は今朝もスロージョギングをしてきました。すごく気持ちいいですよ。太陽のもとで体を動かすことが、心身にポジティブな影響をもたらすのは明らかです。さて、すっきりした気持ちで書きますね。

 

グループシンク」という言葉を知っていますか? 日本語では「集団浅慮(せんりょ)」です。実は最近知った言葉なのですが、たくさんそんなシーンを見た記憶がよみがえる、いわゆる「あるある」なので、皆さんへの問題提起の意味も含めて今回書きますね。

グループシンクとは、グループで何かの同意形成をしようとする場合、様々な意見を吟味したり議論したり、本来すべき判断や評価を適切にすることなく、愚かな決定をしてしまうことです。日本には、「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がありますが、そうとは言えない、という事実を指すと言ってもいいでしょう。

想像してみてください。議論を長時間している余裕がない場合などに起きやすいことが容易に想像できますね。例えば、強いリーダーシップを発揮する「うるさ方」「長老」「支配者」に異論を唱えることを避けるケース。こんなことを言うと怒られそうですが、オリパラ組織委員会の森元会長などが当てはまりそうですね。リーダーが言い出したら黙るしかない。そんな空気が蔓延している部署はありませんか? 

また、以前から何度も書いていますが、いわゆる閉鎖的な「ムラ社会」などは完全にそうですね。オッサンが牛耳っている場合が圧倒的に多いでしょうが、異論などはさもうなら、その社会に存在できないリスクにさらされますね。同調エネルギーが蔓延しているわけですね。平和に暮らすためには黙っているのが良いという感じでしょうか。

こんなケースもあります。メンバーの中に見るからに専門家がいて、その人の意見なら間違いないと思い込み、思考することをやめてしまうケース。場合によっては意見を言うことすら失礼だと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。これもあるあるですね。

また、上司が何を求めているかを想像することが、最も大事な価値観だと思い込んでいる集団(忖度集団)もそうですよね。上司がどれほどポンボケな結論を考えていようが、考えることを止めてしまった部下たちは、何のリスクも感じすらしませんね。そんな集団は早晩地獄に落ちますよね。これは実に多いパターンではないでしょうかね。

また、自分たちは常勝集団だと勘違いして(たまたま戦う相手が弱かっただけ・・・)、自分たちの戦略を過大に評価してしまう「うぬぼれ(自画自賛集団」も、すぐに崖から落ちること間違いなしですよね。

このような集団が往々にして陥ってしまう罠が、自己都合です。出したい結論は既に匂っている(匂わせてある)ので、それに都合の悪い事実やデータは取り上げません。意図的に隠す場合もあるでしょうし、見えなくなっちゃうこともありますね。これも凄くありがちですよ。

どうでしょう。もっともっといろいろなパターンがありそうですが、それはここらにしましょう。あなたの組織が、こんな「あるある」がはびこっているなら完全に瀕死の重傷です。時々はそんなこともあるかな~だったら、何とか軽症のうちにその流れをストップさせましょう。重症患者の場合は荒治療が必要ですね。トップを変えましょう。

軽症のうちに、次のような手を打ちましょう。

自分が絶対的なリーダーなら(と部下から思われがちだったら)、オーラは常に消す。会議でも黙る。どんな意見が出ようが笑顔を絶やさない。

ファシリテーターにインクルーシブな人を登用する。どんな意見も決して否定せず、むしろ大歓迎の嵐を演じる。意見の戦いは前向きな「討論」と表現して称賛すること。

参加者全員に公平に意見を言う機会を与える

会議は正解を導き出すことと同じくらい、プロセスを大切にすること。プロセスが充実していることで、参加者は希望を感じることができる。

人事ローテーションは積極的に行う。優秀層を積極的に異動させる。キャリア採用でその部署や会社の文化に染まっていない人を積極的に採用する。その人には絶対に染まらないよう動機付けし、その人の異論を大歓迎する。もちろん社内の他部門からの異動も大歓迎。

そんなことがすぐにできなければ、会議メンバーの中の適任者に、意図的に反対意見を言う役を演じてもらう。もちろん本心でなくてもよい。

あえて、本来のメンバーでなく他部署のメンバーに臨時で入ってもらって、オブザーバーとして多様な意見を言ってもらう手もありますね。

そもそも会議メンバーとして参加している義務とは何かを最初に宣言し、それができない人は参加させない。これは少なくともトップが染まっていないことが前提ですね。

いま、D&Iが叫ばれている理由がこんなところにもあるのです。多様な人材が集い、経験や価値観を活かした活動が制限もなく行える職場、それを摩擦なく包み込める文化が必要不可欠なのです。

グループシンク。絶対に避けましょう。「集団浅慮」って、なんて情けない言葉でしょうかね。

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“皆で渡れば怖くない”ってか! バカもの~w

 

“Insight”と“Foresight”

激しい変化の中で、チャンスを見つけ出した瞬間に鷲掴みする。そんなことがいつもできたらいいね。しかし、見たことのないものが目の前に現れたとき、正しい判断が瞬時にできるかどうか。例えば、アライアンス(提携やM&Aなど)の候補は突然現れる。名前さえ聞いたことのないスタートアップの門を躊躇なくノックする。そんなことすら考えたことすらない。事業売却のチャンスは今かもしれない、なんて想像すらしたことがない。そう、ほとんどの企業は、そのようなチャンスやめぐり合わせをどれだけ失ってきたことか。逆も言える。初心(うぶ)過ぎて、もしくは何も考えていないために、どれだけハズレを掴まされたり、激安で買い叩かれてきたことか。

実はそんなチャンスは日常的に訪れる。そんなチャンスをものにできるかどうか。経営者や企業幹部に必要な能力は、「目」だ。すなわち、「洞察力」と「先見性」、“Insight”と“Foresight”だ。言い換えれば「広く見て、深く見て、先を見る能力」だ。それらが何よりも必要になる。それに加えて、チャンスを逃さないビビッドさスピード。それらは感性ともいえるしセンスともいえる。できない人は頑張ったってできない。チャンスは目の前を通り過ぎていくばかりだ。気が付いた時にはあとの祭り。

自分に問いかけ続けよう。「今私は広く見て、深く見て、先を見ているのだろうか?」と。

 

もうひとつ恐ろしいものが「バイアス(固定観念」だ。典型的なのが、「できないと思い込むバイアス」。例えば、LSIチップはIntelと決めてかかる。今やそんなのは完全にバイアス。Appleだって、AmazonだってHuaweiだって皆自社で作っている(実際はファブレスだろうが)。論理的に足元の自社の能力を考えると、踏み出せない、決められない。それは強い思いがあるかないかの問題。経営者や企業幹部が示す強い使命感情熱。それらに社員が共感するかが最も重要だ。

だからこそ、トップが示す「洞察力」と「先見性」が何よりも大切だ。「将来、きっとこうなる。だからこうしよう。必ず実現できる」そのストーリーを描く能力、すなわちセンスメイキング能力が問われる。

できないと思うバイアスを乗り越えて行動する。チャンスは今。今ここで行動するかどうか決意できる人が真のリーダーだ。誤解しないでほしい。掴まず手放すことが正解なことも多い。GoかNo goか。決めるのはあなただ。

チャンスは目の前をたくさん通り過ぎる。多くの経営者は通り過ぎたことすら気付かない。同時に、恐ろしいことに、破壊的イノベーター(ディスラプターは気付かないうちにあなたの隣に座っているのだ。

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いつ誰が襲ってくるのか。ホラーストーリーを書ける能力が問われる。